私が好きな建物「アーモスト館」は、京都御所の北、同志社大学の一角にあります。
大学と親交の深い米国のアーモスト大学の関係者らが、同志社大学に貢献しようとゲストハウスを計画。1962年8月20日、吉村順三先生の設計で竣工したものです
美しい京都の街が、コンクリートの建物によって次第に近代化されていくなか、京都の建物が持つ人間的な尺度やデリケートな美しさを近代の建築のなかに再生していこうと、日本的で単純な美しさで設計されています。
先日、機会があって30数年ぶりに訪問しました。
広い庭を中心に新旧両館の雰囲気が統一され、「アーモスト館」は、いわば構内のオアシスです。完成から48年。内部間仕切りと設備系で多少の変更があるものの、竣工時のまま丁寧に使用され、メンテナンスも行き届き、赤レンガづくりの本館とともに風格を増していました。
訪問した日、この建物を管理されておられるNさんにお話しを伺うことができました。
Nさんのご主人のご両親は、アーモスト館建築の折に、ケリー館長さんから是非にと熱望されて25年間の長きにわたり管理されることになったそうです。このご縁を大切に思い、Nさんも引き続いて管理されておられ、もう23年になるとか。
そこで私は、どうしてこんなに大切に使い続けられるのか、どうしてそんなに建物のことをくわしくご存知なのかと不思議に思ってお聞きしてみると、
「この建物にいると、吉村先生が教えてくださり、育ててくださっているような気がします。」とNさん。
又、「在校中は気が付かずに、卒業した後で“こんなに良い建築環境で過ごしていたのか”と気づいて感謝したり、自分の人生の感じ方が育てられたという学生さんも大勢います。
建物は無口ですが、存在だけで何かを教えてくれるのですね。
年数を重ねた今、色々な見方があってなかにはこの建物が物置のように映る人もいるようです。
建物にも運命があって、環境によっては生きられることも壊されることもあるのです。今この時期を乗り切れば、もっともっと大切にされて、生き続けられるのではないかと思います。
今日こうして湯本さんとお話しができたことで、私も”また頑張ろう”と元気が沸いてきました」
とおっしゃられましたが、私のほうこそ素晴らしいお話を伺って元気をいただきました。
