帰国後の話。正確には元駐妻の「うつ」だな。

 

日本に戻った私は、手に入れたZUMBAのイントラの資格を持ってまずは地元のカルチャーセンターで細々と教えていた。子供たちも生活に慣れたころ、それは帰国して1年経った頃、フィットネスクラブでのデビューを夢見てオーディションを受けていた。

 

箸にも棒にもかからず、と言う結果だった。ところが実際のレッスンはエアロもどきのZUMBAがことのほか多く繰り広げられていた。合点がいかない。

 

当時の日本でのZUMBAに対するぞんざいな扱いにがっかりし、ならエアロも習得し、クラブに入り込んで本当のZUMBAをという想いが湧き、エアロの養成に通い始めた。

 

その養成は妖精みたいな先生が切り盛りしていた。えらくべっぴん。

 

基本の動き、姿勢、筋肉の動きなどをその妖精から習い、エアロ8割ズンバ2割なレッスンに憤っていたけれど、自分はそんなイントラたちよりももっと何にも知らなかったと、しばし恥じた。

 

そこから受けるオーディションには面白いように合格する。自分のクラスが増える。本当に楽しいひと時やった。

 

ところが、それに反比例するように子供たちの成績はどんどん落ちて行った。

 

帰国子女。慣れたころが非常に危ない。日本語をしゃべれるイコール授業を理解している、ではなかった。娘が涙ながらに言う、先生の説明の日本語がわからない.....。 帰国して1年以上が経つ。 今頃か......。

 

それは指定された長さの直線をひくという問題。テストの彼女の直線は指定された長さより全て数ミリ短くひかれていた。ぞっとした。何がどうなって、こんな回答になるんや。

 

「ひく」という単語は娘にとって帰国してすぐ算数で、しかも初めて知った日本語。それは彼女の頭の中でマイナスという意味でインプットされた。線を引くは「ドロー」という単語が彼女の頭ににはあるので、「ひく」という単語にいくつも意味があるとは考えていなかった。

 

娘が大泣きしながら言う。なんで、何センチをマイナスして線をかくかかいてないのに、みんなわかるのーー、と。

 

なるほど、だから、全部の線が数ミリ短いのか。

 

娘よ、ひくはマイナスではなく、ドローの意味や。

 

前途多難な日々と向き合わざる負えなくなった。この子女回路は思っていたよりも重症で、教える側も時間もパワーも吸い取られた。

 

その頃から再びおかしくなり始める。いろんなビッグネームの渋谷やら新宿やらのクラブからクラスを持ってくれないかという電話が入る。ただすべて夜のクラス。近くに身寄りなどおらず、ちょっとお願いと子供を頼む人がいない。こういう願ってもないオファーを断りつづけることに。

 

認めよう。自分は非常に上昇志向の激しい女だ。いや、だった。

 

こんなおいしいチャンスをなぜ、子供の預け先がないという理由だけで断らねばならぬのだ。また「子供」だ。子供が理由で、思い通りに行かない。

 

そして理不尽なことにぶつかり始める。自分の周りの身内が、ちょっとこの日はよろしく、と言って周りが自分たちの予定やトラブルを私に任せるくせして、自分が子供をみてくれないかとお願いすると、即答で、それはムリと言う。

 

何故、周りは私を頼るのに、私は頼れない。

 

この時の私は、とにかく有名クラブのナイスな時間に枠をもつことが、自分の生きがいとなっていた。そこには、「母」としての重要性など一つも考えていない自分がいた。

 

この負のスパイラルはどんどん加速していき、ある日、ふと思った。自分が母であることに集中することを拒否し、自分の人生を謳歌しようとしているから、すべてが回らないのではないか。

 

そう思いだした途端、これまでの「母ではなかった自分の行動」を否定し始める。そして、物が食べられなくなった。

 

ごはんが食べれません、とお世話になった妖精さまにメールする。妖精さまから、今もっているクラスを手放しなさいとのお答えが。わたしは妖精に助けられた。

 

やっと蒸し野菜が食べられるようになった頃、そんな私の状況を全く知らない子供の友達のかあちゃんから、流しそうめんの誘いを受ける。

 

流しそうめんで、今、あんまり食べられへん精神状況で、と自前の蒸したカリフラワーを持ってテーブルにつく私に、理由など一切聞かず、そうかー、そりゃ、気の毒やな、何?お酒も飲まれへん?そりゃぁ、かなわんなー、と笑いながら、目の前でビールぐびぐび飲む母たち。素直にここが自分の居場所や、と受け入れた。

 

子どもが生まれて10年。やっと「母」というものを生業にしようと決めた瞬間やった。

 

今、シカゴで

毎日の家事のルーティーンをこなし、子供の宿題にがっつり付き合うという生活をしている。

 

最近思う。ほんま自分はいったい何に向かって焦っていたのか、と。

派手に失敗して、今に至っております。





 


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