2
成田から新宿に向かうリムジンバスの景色が、ぼんやりと流れていく。習志野インターを過ぎたあたりから、高速道路は渋滞を始めた。機内で殆ど眠れなかったせいか、睡魔が襲ってきた。 一眠りしてふと顔を上げると、皇居のあたりだった。煙草が吸いたいな・・・と思った。車内の暖房がきつくて、のどが渇いた。 やがて、リムジンは新宿駅に着いた。山手線に乗り換え、渋谷から東横線に乗り継いだ。「代官山」姉は僕が親戚に引き取られた後、祖母と一緒に暮らしていた。その祖母も7年前に亡くなり、姉はひとりで両親の残した代官山の家で暮らしていた。同居を何度も姉に促されたが、僕は最後まで代官山の家には帰らなかった。東京の大学に出てから、代官山、目黒、恵比寿、何度も立ち寄ったのに、代官山の家に足を向けたのは、祖母の葬儀の時だけだった。試験を口実に通夜にはぜず、告別式だけの出席だった。随分勝手をしたものだと今になって思うが、姉は何も言わずに、僕のわがままを黙って聞いていた。駅から表通りを通らず、人通りの少ない裏道に入り長い坂道を登る。壁につたがからんだ、「なつかしの我が家」が見えてきた。