昭和記念公園で暮らす様々な野生のいきものたち。冬を迎えたこの時期に一番目につくのはやっぱり野鳥です。ただし、水辺に行けば確実にいるカモの仲間などと違い、小鳥に出会いたければ彼らの食生活をある程度知っておくことをおすすめします。

園路沿いで赤い実が文字通り鈴なりになっているのはイイギリ。つややかに流れ落ちるような房の美しさに足を止める来園者も多いこの木は、果実好きな小鳥にとっても素敵な場所のようです。

 

イイギリの実を食べにきたヒヨドリ

葉が落ちて実の色鮮やかさが際立つイイギリ

 

この木のそばでそっと見ていると、ヒヨドリやツグミ、ムクドリなどが次々とやってきて実をもいでは丸飲みしていきます。自分では動けないイイギリの木にとっても、長距離を軽々と移動する鳥に種を運んでもらえるのでwin-winの関係なんです。ついでに見ている私も幸せ(*´∀`)

 

肉食の小鳥で比較的見つけやすいのはモズです。彼らは草むらに潜む虫や小動物(小柄なのにネズミも狩っちゃう腕利きハンター!)を主食にしているので、草地を見下ろせる木の上が好き。公園内では定番中の定番ですがバードサンクチュアリーがおすすめ。水辺・草地・木立の三拍子が揃うよう設計された環境のため、水鳥から小鳥、小鳥を狙う猛禽類まで様々な野鳥が訪れます。さらにその姿を見ようと集まってくるバードウォッチャーの皆さんは、とても気さくに色々な情報を教えて下さるので、コミュニケーションも楽しみの一つです。

 

観察舎前で捕えた虫を右足でつかむモズの雌

 

痕跡からしか生息をうかがわせてくれない生き物もいます。クロマツの木の下に、熟して落ちた松ぼっくりがたくさん転がっていました。よく見ると不自然に形が崩れているものがたくさんあります。道から外れた草の上なのに、踏みにじられたかのようにボロボロ。

 

無傷の松ぼっくり

ボロボロ松ぼっくり。上の写真と同じ種類とは思えない姿

 

実はこれ、ネズミの仲間が松ぼっくりから種を取り出すために外側の殻をかじりとった跡なんです。リスも同じような行動をとるのですが、リスの場合は本当に芯しか残さずきれいに周りをかじり取るので、松ぼっくりはエビフライそっくりの形になり果てます。あちこち探しましたが残念ながら「エビフライ」は落ちておらず、どうやら昭和記念公園に現在リスはいないようです。

 

さらに歩いていくと、「誰かのダウンジャケットが破れたのかな?」と勘違いしそうなふわふわの羽毛の山に出くわしました。近くにはハトの風切羽。自然に抜け落ちたのではなく、誰かにむしり取られたものだとわかる状態です。

 

根元に短い羽毛がくっついたままのハトの風切羽

 

これはタカの仲間が食事した痕跡。ハトサイズの鳥を狩れるとなると、公園に住んでいるオオタカ夫婦の仕業の可能性もあり、ちょっとわくわくします。

何気なく見過ごしがちな、日常風景にまぎれたささやかな非日常。それは人間以外の誰かにとっての日常だったりします。すぐ隣にある他者の営みを尊重しながら、一緒に生きていけるといいですね。(篠原)