「当たり前のことを当たり前に出来る人間になろうや」
「人にやられて嫌なことをしたらあかん」
小中学の時代に良く言われたことだ。
そう、この常識、道徳が出来なくなるのが社会だ。知らんけど。多分。少なくとも、僕はそうだ。
特にこの、「当たり前のことが当たり前に出来る」なら、今頃僕は普通の高校を卒業して、二流の大学を卒業して、二流の会社に勤めて、二流の嫁と結婚して、二流の収入を得て、二流の暮らしを出来たろうに。
ところがどっこい、僕は当たり前のことがてんで出来なかった。クソったれだと言わんばかりにしないし、出来なかった。
出来なかったというより、しなかった。
いや、しなかったというか、出来なかったのか。
出来なかったのか、しなかったのか。
やろうと思えば出来たのか。
今となっては分からない。
どちらにしろ、やらなかったのだ。
そして僕の人生はパンクそのものだった。
セックスドラッグロックンロール気取りで生きていたら気が付くと35歳。
後悔しているといえば大いに後悔している。
しかし、満足しているといえば少し満足している。
どうせまともに生きれない遺伝子なのだと遺伝子のせいにしている。
しかしいつまでも社会の底辺にいるつもりはない。
ここらで一発逆転をぶちまかしてやろうじゃないか。
小説を書いて新人賞を取ろう。そして作家になるのだ。それしかない。
きっとなれる。僕の文才はきっと唯我独尊。
きっとこのクソみたいな二畳一間から脱却して、社会の言う、偉い人になってみせる。
そしてみんなからチヤホヤされるのだ。
凄い凄い、偉い人、偉い人って言われて心の中では鼻高々に胸を張りつつも、いやいや、僕なんて大したことないですよ。なんてクソみたいな謙虚な戯言を吐いたりしてみせたりするんだ。
そんで良い女連れてアメ村のクラブでキマって踊って、高いラブホでキメてセックスして、その後にまた高級タワーマンションで小説を書く。夜にはまたアメ村のクラブでキマって踊って、高いラブホでキマって踊って高いラブホでキメてセックスしてその後にまた高級タワーマンションで小説を書く。
なんてシンデレラストーリーを夢見ながら、その日に刻一刻と近付いていく。小説全然書いてないけど。