中原中也というと、ピュアなイメージがありますが、実生活は、若い頃から自堕落な生活を送っていたようです。それは、医者である父親が、中也を過干渉に過保護に育てようとしてきたことに、大きな原因があるように思います。

 

彼には小学生の頃から短歌の才があり、身内はその才にうとく理解してもらえず、体裁ばかりを取り繕う親に、中也は反抗を深めていきます。

 

ただ、親への反抗だけが人の生きる原動力になるわけはありません、彼は自分の才能に目覚めつつも、どのように開花させていけばいいのかわからず、自分の才能と現実生活の折り合いがわからず、鬱々とした日々を送っていたことでしょう。

 

弟の一人を幼い頃に、そして24歳にまた、弟を亡くし、そのときに書いた詩が「一つのメルヘン」です。彼自身も喀血したりと、彼は常に死を身近に感じて生きてきたのでしょう。

 

その後、彼の詩集「山羊の歌」が好評となり、子どもにも恵まれ、私生活も順調と思われたその矢先に、彼はとてつもない悲しみの底に突き落とされることになります。

 

「一つのメルヘン」、この中也の透明感のあるピュアな詩は、彼の精神が泥水のなかをもがいたからこそ生まれたものでしょう。

 

喪失の悲しみの先に、中也が見たものは何だったのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

喪失悲嘆で悩み苦しんでいる方、グリーフケアの活動に携わっている方向けの講座です。