海外リポート・日本のゲーム業界: (1)半数が赤字。手痛い海外市場のロスト | みらいマニアックス !

海外リポート・日本のゲーム業界: (1)半数が赤字。手痛い海外市場のロスト

Gothenburg大のMirko Enrkvist氏が、日本のゲーム業界の現状をリポート。

原題は「CEO Survey Report of Japanese Video Game Developers」で、ゲーム会社社長へのアンケートと企業の財務情報等をデータとして、日本のゲーム業界の現状を分析したものだ。


バックグランド

今回の調査は、日本のゲームデベロッパが、需要と供給の両面で苦境に立たされているという環境下で行われている。
まず需要の面から見ると、国内・海外への出荷は共に減少している(下図)。供給の面から見ると、開発コストの増加がデベロッパの重荷となっている。これらの業界特有の要因に加え、日本のデベロッパはまた、日本がこの期間に直面した経済全体のマクロ敵な課題に対処しなければならなかった。

日本のゲーム市場
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Source : CESA Games White!Paper (1997I2011)
青線=国内市場向け出荷、赤線=海外向け出荷合計、緑線=北米向け出荷、紫線=欧州向け出荷


厳しくなる経営状況

分析の結果、日本のデベロッパのかなり厳しい経営環境が改めて明らかとなった。

デベロッパの平均での利益率はマイナスに落ち込んでおり、直近での会計期間(-2.59%)でも、その前期(-4.68%)においても共に赤字となっている。メジアン(中央値)ではわずかにプラスの結果となる。(それぞれ0.86%、1.22%).
さらにほぼ半数のデベロッパは、利益率が損益分岐点を下回っている。直近での会計期間では、利益率がプラスとなったのは54.8%に過ぎない。その前期には、利益率がプラスとなったデベロッパは56.2%となっていた。


NS:CEO Survey Report of Japanese Video Game Developers
http://www.gdconf.com/news/2012/02/16/Survey/Survey%20Report%20February%202012.pdf


みらい的コメント

日本のゲーム会社の半数が赤字だという事実は、あらためて数字として示されるとインパクトがある。
ゲーム会社各社が、ソーシャルだろうがパチンコだろうが、なりふり構わず食えるもので食おうと動くのも当然の帰結なのだろう。

特に興味深いのは、大きく減ったのは国内ではなく輸出であるという事実だ。
国内市場は2006年から微減が続いているものの、直近の2006年ピークからの落ち込みはせいぜい15%程度でしかない。一方、海外市場向けの出荷は直近の2008年のピークから半減近くまで激減している。

これは(1)それまでのドミナントであったPS2からプラットホームを切り替えるのに失敗したこと、(2)iPod/iphoneといったモバイルデバイスへの進出が遅れたこと、の2つが主な原因だったものと考えられる。


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任天堂の決算での資料(上)を見ると、2008年から2009年で最もソフト販売が大きく落ち込んだプラットホームはPS2だ。ドミナントであったPS2フォーマットでゲームが売れなくる一方で、Xbox等のより勢いのある新しいプラットホームがそれをリプレースしていったことが分かる。
国内のゲーム会社は2006年~2008年頃、新しいXboxプラットホームに注力しようと様々な試みを行っている。ご存知の通り結果は散々だったわけだが、Xboxを日本で売ろうという不毛な試みの代わりに、例えば米国のデベロッパへ直接出資する等もっと別のやり方で成功していれば、現在の状況はだいぶ違っていたことだろう。


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また同じく任天堂の決算の資料(上)では、2009年の欧州で、DSやPSPといった携帯ゲーム機の売上が大きく落ち込んでいることがわかる。
以前のエントリでも述べたが、2008年~2009年はモバイルデバイスが携帯ゲーム機を本格的にリプレースし始めた時期にあたる。それまで繁栄を謳歌していた携帯ゲーム機市場が大きく縮小したことが、国内ゲーム会社各社にとって痛かったであろうことは想像するに余りある。
もしもその時期、日の出の勢いであったモバイル市場で成功し、Angry Birdのようなゲームを出すことができていれば、やはり話は全く違っていただろう。

新しい市場への対応を機敏に行い、かつ成功させることは、現実問題としては極めて難しいことだ。
ドミナントであったPS2の衰退、携帯機からモバイル機への変化という極めて大きな変化があったが、これを上手く乗り切ることを全てのゲーム会社に求めるのは酷というものだろう。
その意味で日本のゲーム会社が現在苦境に立っていることは、避けられないものだったことなのかもしれない。