3DSの隠れた、そして本当のライバル。PSP | みらいマニアックス !

3DSの隠れた、そして本当のライバル。PSP

【本エントリのポイント】
・3DSは、DSから大幅に性能が引き上げられている。
・性能の引き上げは、競合機を上回ることを目的として行われた
・任天堂は、NGPでもiPhone4でもなく、PSPに対して3DSをぶつけたものと考えられる


なお本エントリは、以前のエントリ「狙い澄ました一撃。PS殺しの切り札、3DS」 の続き(第3回)です。



3DSは、DSからみて大幅に性能が引き上げられている。
例を挙げると、頂点処理能力は、DSの12万から3060万となり、フィルレートも3,000万から16億となっている。


ITは依然として急激な進化を続けており、その意味では、7年前のDSからの大幅な進化は当然かもしれない。しかし3DSの性能が十分に検討された結果であることにも、また疑いの余地はない。単に3Dを実現するためだけならば、単に横方向に解像度を2倍にすればよいはずだからだ。しかしDSから3DSへの性能向上は、頂点処理能力で言えば255倍にも達しており、そのレベルは遥かに超えている。



それでは、なぜそのような性能向上が必要だったのだろうか。


性能はタダではない。
性能を上げていけば、携帯ゲーム機はどんどん大きく重くなり、バッテリ持続時間が短くなり、もちろん高価になっていく。そしておそらくそれ以上に重要なことに、本体の性能とゲームソフトの開発価格にも相関関係がある。
本体が高性能の場合には、ゲームソフトの開発費は、高くなる傾向があるのだ(※1)。
性能はタダではない以上、DSから3DSへの255倍にも達する性能向上は、それなりのコストを払ってでも必要なものだったはずだ。


岩田氏は、3DSの性能引き上げの理由を2つ挙げている。(※2)
・3D(裸眼立体視)のために、解像度が必要だった
・スペックが理由で(任天堂のゲーム機では)自分たちのソフトが作れない、と思われることがないようにしたい


3Dのための性能の引き上げということは既に検討したので置く。重要なのは2つ目の理由である。

このコメントは言葉を補うと、「(3DSの)スペックが(競合機よりも低いという)理由で、(競合機よりも良い/売れる)ゲームソフトが作れない、と思われることがないようにしたい」、という意味だ(※3)。

言い換えると性能を引上げた理由は、3DSが競合を上回る(若しくは下回らない)ことが目的なのだ。


性能引き上げの目的が性能上の優位性にある以上、3DSがベンチマークしたもの、それが任天堂の考える、3DSの直接的な競合機ということになる。(※4)




それでは、3DSがベンチマークしたものはなんだったのだろう。


まずPS3・XBOX360ではない。そもそも据え置きと携帯機というタイプの違いがある上に、これらのHD機は3DSの性能を遥かに上回っている。3DSが競合と位置付けいたとは考えられない。PS2も現行機ではあるが、ライフサイクルの終わりにあることは明らかで、これも3DSのベンチマーク対象にはなり得ない。


iPhone4も詳細は不明ながら3DSを大きく上回る性能をもっていると思われ、3DSがベンチマークしたとは考えにくい。更にiPhoneはスマートフォンであり、ゲーム機よりもプラットフォームの更新頻度が高い。近い将来iPhone5がリリースされるものと考えられており、現行のiPhone4を上回る性能を備えていることが予想される(※5)。いずれにせよ直接の競合と考えていたとは考えにくい。


結局3DSがベンチマークのした競合機は、PSPしかない。3DSとPSPは、性能の点でほぼ互角である。頂点処理能力は3DSの3060万に対してPSPの3300万、フィルレートは3DSの16億に対してPSPの6億6千万だ。
(フィルレートは3DSがPSPの3倍近い。しかし、ピクセルあたりに直してみると概ね同等になる。3DSのピクセル数はPSPの約2.1倍。フィルレートは2.4倍であり、ピクセルあたりのフィルレートの差は15%程度でしかない)


なおソニーの次世代機(NGP)に対しては、3DSの仕様決定のタイミングではまだ詳細は発表されていなかったため、正確なベンチマークはできなかった。しかしNGPがPSPを大きく上回る性能を備えていることは十分に予想することができた。これが予想できた以上、3DSはNGPをベンチマークしてはいなかっただろう。




性能の点から見た場合、3DSの競合はPSPであった可能性が強い。
次に、性能と同じくらい重要なファクター、価格の点からも3DSの競合機は何かを考えてみたい。


関連するエントリ:


(1) 狙い澄ました一撃。PS殺しの切り札、3DS

(2) 3DSは、DSの改良機(アップデート・バージョン)である

(3) 3DSの隠れた、そして本当のライバル。PSP

(4) 3DS: 3D機能のお値段は8,200円。高い?安い?

(5) 3DSのソフトの価格は、DS以上・PSP未満



※1:「本体の性能を上げると、対応ソフトの開発費も上昇する点につき補足。

言うまでもないが、個別のソフト毎に見ると、開発費の主な決定要素は作品のボリュームにある。ただしそれを大前提としながらも、なお性能と開発費にはある種の相関関係があるものと考えられる。
(ゲーム機の種類や性能により、ある種の相場観のようなものが形作られ、それが作りこみに影響しているためではないだろうか?)


※2:2010年度中間決算説明会、任天堂カンファレンス Q&Aセッション、Q14より


※3:スペックには絶対となる基準等は存在しないし、仮にそあったとしてもそれは個々のゲームソフト毎に異なるだろう。任天堂が、そのような基準をもとにプラットフォームを設計したとは考えにくい。


※4:もちろん、性能とは関係のないところで競争することは可能だし、むしろそれがWii/DSにおける任天堂の考え方であった。しかし3DSの性能がDSよりも引き上げられたことは事実であり、それには理由があるはずだ。その理由としては、競合との差別化(若しくは競合との差の解消)が最も妥当だと考えられる。


※5:iPhone5の性能は未定だが、以下の情報あり:
・Appleの新しいA5(マルチコアチップの「Cortex A9」ベース)採用
・iPad 2同様にQualcommのCDMA/GSM/UMTS対応チップセットを採用
(Engadgetより)