3DSは、DSの改良機(アップデート・バージョン)である | みらいマニアックス !

3DSは、DSの改良機(アップデート・バージョン)である

【本エントリのポイント】

・DSはユーザに飽きられ、早急に建て直す必要があった

・任天堂は、DSに3D機能を追加し、DSに飽きたユーザの目先を変えることを試みた

・3D機能以外の変更点は、DSの順当な改良といえる範囲にとどまっている

・3DSは、革新的な次世代機というより、むしろDSのアップデート版として考えた方がよい


なお本エントリは、以前のエントリ「狙い澄ました一撃。PS殺しの切り札、3DS」 の続き(第2回)です。




任天堂は、そもそも、なぜ3DSを出したのだろうか?



言うまでもない。DSに変わる何かが必要だったからだ。DSに深刻な問題が起こっていたことは明らかだった。本体もソフトも、売れ行きがどんどん落ちてきているのだ。昨年10月の中間決算の説明会でも、DSが不調であることは隠しようがなかった。


(以下、岩田氏コメント)

【日本】
・DSハードは前年対比でマイナスになっています。
・携帯型の中でのDSのソフトシェアは、下がってしまいました。
【米国】
・ここ数年、規模を拡大させていたDSハードの市場規模が縮小に転じているということは事実です。
・ハードと同じように、(ソフトも)販売数では前年を割り込んでいます。
【欧州】
・DSハードの販売台数は、2年連続して縮小しています。
・DSのソフトなら何でも売れていた、そういう時期が終わり、売れるものと売れないものの差がはっきりと表れる。



DSが不振に陥った理由はいろいろとあるのだろう。だが、根本的な問題は、DSがもはや飽きられ、ユーザに新しい驚き・新しい喜びを与えられなくなってしまっことにあるのだろう。岩田氏自身が今から約1年前に指摘していた懸念が、まさに現実になりつつあるようだ。

(任天堂 再浮上の条件 http://www.nikkei.com/biz/focus/article/g=96958A90889DE2E6EAE0E1E1EA

E2E0EBE2E1E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;p=9694E0EBE2E1E0E2E3E2E5E1E6E5 )



それでは、新しい驚き・新しい喜びとは、どんなものであるべきか?

この問いに対する任天堂の答えは、3Dだった。

3Dの箱庭で、マリオが、リンクが、サムスが、カービーが、豊かなアクションを見せてくれる。分かりやすくキャッチー、これまでになく新鮮で、一目でほしくなるようなインパクトを備えている。これならば、ユーザは新鮮な驚きと喜びを感じてくれるに違いない。

3DSとはそのようなマシン、まさに3DなDS、というコンセプトから生まれたのだろう。



このことは、DSから3DSへの進化の過程でが何が変えられ、何が変えられなかったか。そのことから見ても明らかだ。(以下一部、前のエントリの内容より抜粋含む)


【変えられなかったポイント】
 ・サイズ/重さとデザイン
 ・タッチパネル(感圧式シングルタッチ)
 ・ネットへの接続方法(IEEE802.11b/g 2.4GHz)


 ・名前
→地味だが重要。3DSは、3D+DSから命名されたものなのだろう。
  3DSはあくまでも3Dな「DS」であってそれ以外の何かではない、という任天堂のメッセージだ。


 ・サイズ/重さとデザインはDSからそのまま引継いだ
→名前と同様だ。ビジュアルにおいても、3DSは、DSとの連続性・同一性が強調されている。


 ・ネットへの接続は重視しない
→ミニゲームは別として、主力ゲームのDL販売やパッチは基本的に想定しない。
  またネットワーク経由での対戦やcoopは基本的に想定しない
  これは遊びに関するこれまでの考え方、が変わっていないことを意味する。
  これは、マクドナルド等にあるニンテンドーゾーンの強化を続けていることとも、整合性がとれている。

  つまりバーチャルではなく、実際に集まって遊んでもらうことを重視しているということだ。



【変えられたポイント】
 ・裸眼3Dの追加
 ・グラフィックを精細化、色彩表現を強化
 ・画面サイズ変更(上画面を大きく、下画面を小さく)
 ・カメラの追加
 ・センサ(加速度センサ・ジャイロセンサ)追加
 ・通信機能の強化
 ・演算性能の大幅な強化
 ・スライドパッドの追加


・グラフィックを精細化
→3DSは視差バリア式を採用しており、実際にユーザ見える画面の2倍の情報を画面に出力してやる必要がある。グラフィックの精細化の大きな理由の一つは、おそらくこれだったと考えられる


・カメラを追加
→カメラを追加し、背面のカメラを2個にした。これは明らかに3D写真を撮影するためのものだろう。


・画面サイズ変更(上画面を大きく、下画面を小さく)、タッチパネル(感圧式シングルタッチ)変更なし
→上下画面の役割分担を明確化。
  上下画面を連動させた表現は切捨て、下画面はタッチ操作用サブ画面、と割り切ってきた。
→タッチはあくまで十字キー+ボタンの補完機能との位置付け。
  細かいポインティングがメイン。ジェスチャーをUIのメインにしたiPhoneとは使い方が全く異なる。


・センサ追加は、wiiの成功を受けた、順当なフィードバック
→wiiでのモーションコントローラーの成功から、十字キーとともに、今後の定番として位置づけた。
  また、wiiでひきつけた客を3DSに展開したい、との意図も感じられる。


・通信機能の強化
→すれ違い通信の強化。ゲームが個々に通信するDSiの形から、通信機能を本体側に寄せてきた。
  通信できる可能性が飛躍的に増加し、ドラクエのようなビッグタイトル以外でも通信が現実的になった。
→いつの間にか通信。
  こちらは、上のセンサと同じく、Wiiからのフィードバックだろう。



結局「変えられたポイント」は、その大部分が、次のどちらかに当てはまることになる。
①3D機能の追加に伴うもの
②もとからあるDSiの機能を改良したもの/Wiiの機能をフィードバックしたもの


仮に3D(上の①)を除外して考えた場合、3DSはDSを改良し/Wiiからフィードバックされた機能を追加したものということになる。

また、名前やデザインがDSから引継がれ、遊び方についての考え方も変わっていないことから考えると、3DSは、前世代を一夜にして過去においやるような、文字通りの次世代機というより、DSを改良しそれに3D機能を追加したマイナーチェンジ機、と考えるほうがむしろしっくり来る。


おそらく任天堂はDSのコンセプトの正しさを疑っておらず、それを変える必要性を感じていなかったのだろう。むしろDSやWiiで導入した試みが成功したことに自信を深め、革新的な新しい何かを試みるのではなく、これまでの路線をリファインしていくことを目指したように思われる。



しかし、この「変えられたポイント」の中には、これまでの路線のリファインということでは説明の付かない変更点が2つある。

・演算性能の大幅な強化
・スライドパッドの追加


このような大きな変更に意味がないはずがない。なぜこの2点は、DSから変更されたのだろうか?
これについて、もう少し考えてみたい。



関連するエントリ:

(1) 狙い澄ました一撃。PS殺しの切り札、3DS

(2) 3DSは、DSの改良機(アップデート・バージョン)である

(3) 3DSの隠れた、そして本当のライバル。PSP

(4) 3DS: 3D機能のお値段は8,200円。高い?安い?

(5) 3DSのソフトの価格は、DS以上・PSP未満