朝目覚めると、昨日の強い倦怠感は消失していた。朝5時過ぎに目覚めてしまったため、部屋の電気をつけてスマホをいじっていた。僕が起きていることに気付いてくれた看護師さんが、「昨日とお変わりなければ、一般病棟に移動ですね」と声掛けしてくれた。僕の体調は昨日と変わらないどころか良くなっていると感じていた。僕は、「何か準備しておくことはありますか?」と確認すると、「担当の看護師が、荷物がなくなっていないかのチェックをしますので、間違いないかを確認してください。事前に準備はいらないですよ。」とのことだった。

 

そして朝食。昨日までに回復していた食欲が減退していた。可能な限り食べようと思ったけど、みそ汁とおかずの少し、パックのジュースしか食べれなかった。嫌な予感がしたけど、体調に大きな変化はなさそうだった。自分自身で勝手に判断してしまったけど、次の食事が食べれなかったら相談することにした。

 

看護師さんによる朝の体調チェック。体温、血圧、脈拍、酸素に異常のないことがわかると、身体に繋がれたコードをすべて外してくれた。この瞬間は嬉しかった。特に左手人差し指の酸素計?があったからキーボードが使いにくくて、PCが使えなかったから。これで入院中の生活も大きく変わる予感がした。

 

一般病棟への移動。室内にシャワー、トイレ、ソファがあるという理由で、金銭的には厳しかったけど、個室に入った(新しい病院だからか、差額ベッド代は1日15,000円だった。他の病院と比べて高いらしい?)。一般病棟へ移動後、すぐに主治医の回診。そこで思い切って相談してみた。「今朝、朝食がどうしても食べれませんでした。食べるものには気をつけますので、病院食をやめてみてもよいですか?」。主治医はあっさりと「問題ないですよ。好きなものを食べてください。尿の回数・量が減らないように、水分を多めに摂ってください。」と言ってくれた。

 

これ以降、入院7日目からは以下のように経過した。

・2023年6月25日(入院7日目)

 昼食を買いに病院の2階にあるコンビニへ。入院病棟から出るには看護師さんに自動ドアを開けてもらう必要があるから、昼12時の少し前にお願いした。お願いした看護師さんが気を遣ってくれたのか、「おひとりで行けますか?私はこれから休憩で買い物に行きますから、一緒に行きませんか?」と言ってくれた。女神かよ!全く迷うことなくお願いした。付き添っていただいたことでものすごく安心感があったのか、転倒やふらつきもなく買い物ができた。

 一般病棟へ移動後のはじめての食事に選んだのはコンビニのざるそばとカロリーメイト。webで調べたところ、食品添加物の含有量がご飯ものと比較して少ないという理由。一週間ぶりに自分が食べたいものを食べることができる喜びを感じた。食後は、僕の大切な人が差し入れしてくれたものの中に入浴セットがあったことを思い出し、シャワーを浴びた。頭はシャンプーとリンスを使って2回洗い、身体はボディーソープを使って念入りに洗った。やはりこちらも一週間ぶり。めちゃくちゃ気持ちよかった。

 今日から特に治療はなく、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士のリハビリをこなし、それ以外は安静にする生活だ。

 

・2023年6月26日(入院8日目)

 歩く感覚が戻ってきた。自動販売機に飲み物を買いに行くときに医師とすれ違い、回復の早さに驚かれた。

 ここで、ちょっとした嬉しいハプニングが。看護師長?が僕の部屋に訪れ、部屋数が足らないから部屋を移動してほしいらしい。他の患者でなく僕に依頼した理由は、体調が安定しているからだという。そして気になるお部屋は特室!1泊55,000円という、まごうことなきVIP ROOM。一応見栄を張って、「お部屋を使用する料金はお支払いしますよ」と申し出たんだけど、「こちらの都合ですので」と辞退された。ベッドはセミダブル。お風呂、洗面室、キッチン、シャワートイレがあり、ホテルみたいな部屋だった。

 

・2023年6月27日(入院9日目)

 体がどんどん元に戻っていくのを感じた。歩きがスムーズになることに加え、腿上げができるようになった。少しずつ余裕ができてきたから、コインランドリーを使って洗濯をした。そのときに窓から病院の外の景色を眺めて気付いたんだけど、遠くが全く見えなかった。複視の症状はかなりひどいと思う。これまではスマホとPC画面を見ることが中心だったから、複視は相当改善したものだと思い込んでいた(たしかに近距離が相当改善した)。コインランドリーの機械から洗濯物を取り出すときに距離感がつかめず、あたふたもした。

 リハビリでは、脱力というか力が入らない状態が解消されていた。握力は右手38kg、左36kgくらいまで回復していた。歩行後の血圧も大きな変動がなくなっていた。

 

・2023年6月28日(入院10日目)

 大きな変化はなく、順調にリハビリ。屈伸や震脚ができるようになった。

 

・2023年6月29日(入院11日目)

 構音障害がほぼ解消したため、仲間やご迷惑をおかけしたお客様へ電話した。今でも思うんだけど、回復してから電話してよかったと思う。呂律が回らない状態では、僕も辛いし、相手を心配させるだけだから。大切な人(彼女)とは1時間くらい話したと思う。普段はほとんど電話しないから新鮮だった。

 午後に医師の回診があり、「明日、ふらつきの検査を受けてください。かなり改善していると思います。」と話された。入院当初に受けた検査だ。当時と現状の差分が確認できるから楽しみだった。医師は続けて、「今のところ症状のぶり返しがなく、体調はみるみる改善、検査の結果が良好であれば退院しましょう。」と話してくれた。僕はさっきまで「複視の状態がまだまだ回復していないから、しっかり治るまでお世話になろう。」と思っていたのに、いざ退院の話が出ると、「いつ退院できるんだろうか?」という考えに変わっていた。

 

・2023年6月30日(入院12日目)

 退院のかかったふらつき検査。勝手に緊張してたけど、結果は良好。明日にでも退院できるということになった。ただ、明日は事務が動いておらず、治療費の精算ができないから退院手続きができないらしい。ということで、日曜日に退院が決定。この時点で部屋不足が解消されたようで、通常の個室へ引っ越しの話がきた。退院日まで今日を入れて3日ということで、自腹でこの部屋に留まることにした。1回味わった生活レベルを下げるのは難しい(経済学では「ラチェット効果」といいます)。

 

・2023年7月1日(入院13日目)

 弟に退院のお迎えをお願いしたけど仕事が詰まっているという。僕の家の鍵を届けてもらい、大切な人(彼女)にお迎えをお願いした。リハビリの先生が3人とも部屋を訪れてくれた。リハビリの中で不安要素であった、脚力の回復が少し物足りないという点について、自宅でできるリハビリメニューが記載された資料を与えてくれた。

 

・2023年7月2日(入院14日目)

 朝の10時にお迎えに来てもらって退院。治療費は後日自宅へ届く請求書を見て2週間以内にお支払することになった。2週間振りの日常、彼女の車に乗せてもらって帰宅。助手席から見る世界は複視でぐちゃぐちゃだった...

 

2週間振りに自宅に戻った。彼女にお願いして、買い物へ連れて行ってもらった。複視は辛かったけど、何とか歩き回り、この先1週間分くらいの食料を購入した。とてもひとりで買い物ができないことを自覚した。

自宅に帰ったあと、彼女が昼食のリクエストを聞いてくれたので、お好み焼きをお願いした。以前、たこ焼きパーティをしたときの残りがあって気になっていたから笑。久しぶりに楽しい食事ができて幸せを感じた。いつも支えてくれてありがとう。復帰後は僕があなたを支えると誓うよ。

 

最後に、この時点での体調を入院当時と比較してみる。

・歩行困難

 ⇒外観的には通常に歩行。ただ筋力回復が不十分で力弱い。小走りまでは可能。腱反射なし。

・球麻痺(呂律がまわらない、飲み込みが悪い)

 ⇒全快!

・複視(ものが二重に見える)

 ⇒病院内では遠くを見る必要がなく気が付かなかったけど、1メートル以上離れたところはヒドい複視が残る。

・起立性調節障害(状態を起こすと脈拍が130くらいまで上昇)

 ⇒自覚症状なし(退院後わかったが、起立時に100くらいまで上昇。自律神経障害か??)

・手足のしびれ

 ⇒全快!

 

入院中に医師から聞いていた「症状が出た順番の遅いものから回復する」というとおりに、残すところは脚の筋力と複視だった。

退院できた喜びと同時に、複視の回復は平均で3ヶ月、早いと1ヶ月、遅いと6ヶ月、という情報を目にして不安も押し寄せてきた。

さて、今日から自宅での療養(闘病生活)の開始だ。