文書問題の発端となった文書作成者は県民局長の職にあった。このポストそのものについて人事の視点で考えてみる。

 

 まず県民局長の権限を見てみる。兵庫県発表の「令和5年度組織改正・人事異動の概要」のうち、令和5年度組織改正図で件の西播磨県民局を見てみると、

  県民局長----副局長----総務企画室
            県民交流室
            龍野県税事務所
            龍野健康福祉事務所(龍野保健所)
            光都農林振興事務所
            光都土木事務所

 

という配置になっている。この配置関係を見てわかることは県民局長にはほとんど権限がないことであろう。税は県税事務所、保健と福祉は健康福祉事務所(注)、農林関係は農林振興事務所、インフラ関係は土木事務所に直接権限が与えられている。

 すなわち、税、保険と福祉、農林関係、インフラ関係に関しては県民局長の関与はないということである。

 

注)保健所と福祉事務所は同じ厚生労働省関係なので兵庫県では統合されている。

 

 

 次に県民局長の任期を見てみよう。同じ概要には幹部人事が記載されているが、
O監査委員は但馬県民局長の職にR2.4から1年間、その後、議会事務局長、会計管理者を、

S会計管理者も同じく神戸県民センター長(注)の職にR2.4から1年間、その後、県民生活部長をそれぞれ歴任している。

 他の年度の人事異動の概要を見ても、県民局長の職に配属される期間は1,2年間がほとんどである。

 

注)一部の地域では県民局長ではなく、県民センター長となっている。

 

 

 兵庫県庁のウェブサイトに県民局長のメッセージという興味深いページがある。このページが各局長により実に多彩である。段落ごとに一字下げをしている局長もいれば、しない局長もいる。段落間に空白行を設けたり設けなかったり。発行時期も毎月が通例だが一月に2回以上発行している局長もいる。

 おそらくこのページは部下ではなく局長自らが書いているのではないか。部下が作成すると横並びになってしまい、文章の体裁などが同じになることが役所では多いからである。このページは地域の実情を部下の報告ではなく、自分の目で把握し局長が自ら書くものとなっているのでないか。なお元局長は自分の持論を記載し命取りとなった。

 

 これらのことを考えると、このポストは、1,2年ほどの短期間ではあるが、地域の実情を部下の報告などではなく今一度自分の目で把握したうえで気力、知力を充実し、その後、本庁の部長級として異動してもらってがんばってもらおう、そのようなポストではないかと考えられる。

 

 ところが、元局長は令和3年4月から約3年間もこのポストに就いていたのである。いわゆる島流し人事の可能性がある。

 怪文書というものは、本来は作成者がわからないがゆえに「怪」なはずなのだが、この文書は作成者がいとも簡単に特定されてしまった。この問題に限らず怪文書は日常的に大量に作成されている。ネット上で収集している方もいる。私も怪文書を実際に見たことがあるが、詐欺まがいのとても滑稽なものであった。だが怪文書は多々あるものの、今回のように作成者が特定されたものは非常に珍しいであろう。

 

 今回の事件では2024年3月20日(水・祝)に知事が文書を入手し、同月25日(月)に局長のパソコンが回収されている。23日、24日は土日であるから土日出勤がないとすればたった3日で作成者が特定されたことになる。いや回収日は含まれないだろうからたった2日である。なぜこんなにも早く文書作成者を特定できたのであろう。

 

 種を明かすとこれは業務システムの記録から調べをつけているのである。元局長は文書や日記を公用パソコンで、しかも勤務時間中に作成していた。この場合、パソコンの使用状態は全て記録されている。人事課や情報システム課勤務経験者には常識である。個人情報や企業機密など、大量の情報をデジタル形式で扱う現代において、ある程度の大きさの組織で仕事をしているところでは業務システムなしに仕事はできない。このような職場でパソコンは単体で電源を投入しただけでは仕事にはつかえない。職場のLANに接続し業務システムにログインすることで本格的にパソコンが使用可能になる。

 またパソコンそのものにも許可なくソフトをインストールできないようにしていたり、マインスイーパーなどのゲームもない。ネットサイトの閲覧にしてもECサイトやSNSにはアクセスできないようにしている場合もある。

 

 業務システムにログインした後はシステムがパソコンの使用状況を記録し始める。システムの設定によるが、記録内容はログイン・ログアウトの時刻、ユーザーID、使用したアプリケーションやファイルのアクセス履歴など広範囲に及び、パソコンの使用状況が丸わかりである。また、このようなシステムログがあるからこそ、情報漏洩やコンピュータウィルス感染経路なども追跡可能なのである。

 

 元局長は県庁ホームページの県民局長からのメッセージですでにマークされていた。そこで元局長の業務システムの記録を見てみると、出るわ出るわとなった。ファイル名も何の配慮もなく、そのまま、「告発書」であるとか、「〇子通信」、「Hな語録集」などとしており、これがそのままアクセスログに記録されていた。この記録を見た人事課担当者は絶望したのではないだろうか。うちの幹部職員はかくもあほなのかと。

 

 フリーのジャーナリストらが漏洩した情報を偽造だと主張していた。フリーのジャーナリストは個人で動いているためパソコンを単体でしか使用していない。業務システムのことには思いもよらないであろう。このため彼らは基本的にこの種のことに不勉強であり疎い。

 

 元局長は元人事課長であり、以上のことは人事課固有の業務として知っていたはずなのだがなぜこんなことをしたのだろう。元局長は過去に人事課長であった。このようなシステムがあるのは知っていたはずであり、このシステムを使って職員の公用パソコンの私用を追求する立場にあった。にもかかわらず自分が追及されてしまったのである。何とも間抜けな話である。全国の人事課や情報システム部門はあきれ返っているであろう。

 兵庫県の文書問題を人事課の視点で考察してきました。今回は番外編です。文書問題とは直接関係ないのですが、表題のことがあまり知られていないようなので書いてみました。

 

 兵庫県庁の新規採用予定者の入庁辞退が話題になっています。斎藤知事の件と結び付けたおかしな記事が配信され、またそのおかしさを批判する投稿も多々あります。おかしな記事が作成される背後には兵庫県庁は人気があり、兵庫県庁への就職を採用予定者が辞退することはほとんどないという先入観があるからではないでしょうか。

 

 

・こちらはおかしな記事の例を挙げてみました。

 

 

 

・またブログでも記事が取り上げられています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 阪神地域の地方公務員には知られた話ですが、実は阪神地域の地方公務員志望者にとって兵庫県庁はもともと人気がありません。

 理由は転勤が広範囲にわたることです。兵庫県は五国(摂津・播磨・但馬・丹波・淡路)の国と呼ばれることがあります。北は日本海側の豪雪地帯から南は淡路島まであってとても面積の広い県なのです。気候、風土はもちろんのこと言葉もかなり違うのかもしれません。出先機関に異動になれば引っ越しは免れません。

 もともと地方公務員になりたい人は転勤が広範囲に及ばないことを理由に上げる方がいますし、実際に兼業農家の職員も多く転勤を避けたいと思う人も多いのが実情です。

 このため、通常は地方公務員志望者は県庁と市役所とでは県庁を志望する人が多いのですが、兵庫県の場合、転勤が広範囲にわたる兵庫県庁を避け、政令指定都市の神戸市役所はもちろんのこと、西宮市役所や芦屋市役所の方を志望する人が多いのが実情です。

 

 兵庫県庁職員である元局長自身が自分の公用メールアドレスに送信したと思われるメールには「『辺境』の地で待つ」などと書かれていました。こんなところからも事情がわかると思います。それにしても幹部職員が自分の担当地域(西播磨地区)を「辺境」などと言うのはいかがなものでしょうか。

 公用パソコンのファイルの漏洩元を推測する にアクセスいただいています。やはり気になるところでしょうがさすがにここから漏洩したと断じることははばかられました。そこでヒントではないですが、生成AIに尋ねてみました。

 

 「職場で貸与されているパソコンにはどのような文書やデータファイルが保存されているか?」と尋ねるといろいろと回答してもらえます。このファイルのうちで、スクリーンショットに存在しないファイルが提供時に削除されたものと推測できます。みなさんも試してみてはいかがでしょうか。衝撃的な結論になると思います。関係者のうち、なぜか完全に沈黙している方がいるのかもわかると思います。

 

 今回の問題は元局長が安易に(おそらくいたずら程度に)文書を散布したことが発端になっています。幹部職員や政治勢力などいろいろな人たちの種々の思惑が交錯し、亡くなる人まで出た、そんな事件だと思います。

 

注)生成AIがファイルの種類を回答してくれますが、ご丁寧に職場のパソコンに私的ファイルを保存してはいけませんと忠告もしてもらえます。

 

 

 

 不服申し立てをしないことになるほどと思わせるにはどのような理由が考えられるだろうか。それは(1)自分の目的が達成されていること、かつ、(2)懲戒処分が実際には自分への打撃がほとんどないことを示せるとよいだろう。

 

 ここで生きてくるのが元局長の処分が免職ではなく停職であることだ。

 

(1)について見ると、知事のパワハラ、おねだりの件は真偽のほどはともかくとして世間に知らせることは既にできている。文書を全て回収されてしまうことなど今更あろうはずがない。したがって目的は達成された。

 

(2)を考えると実は驚くべきことがわかる。「元局長からみた懲戒処分のメリットとデメリット」で見たように、停職処分を受けたということそのものの不名誉をのぞくと、経済面での不利益など一切ないのである。名誉的なこと以外では実質的に何ら打撃を受けていないのである。ここが懲戒免職の場合と大きく異なるところである。

 

 したがって、元局長は、「知事の不適格さを既に世間に知らせることができた。処分は不当であるが、これ以上県政に混乱を与えたくないので不服申し立ても訴訟も行わない。」と堂々と言えるのである。これで自分の大量の日記や小説を自分の身内に見られずに済むのである。

 

 これで”えらそうな”ことを発表してきた自分の(身内の中での)名誉が守られることになる。その代わり停職処分を受けたという世間一般的な不名誉は残ることになる。おかしな話ではあるが、人は身近な評判は大変気にするが、身内でないものなど、遠くの世間の評価など気にも留めないのである。

 

 念のため、懲戒免職処分の場合を考えたい。この場合の大きな不利益は「懲戒免職された」という事実はもちろんであるが、数千万円の退職金を失うことである。家族からは突き上げられるだろう。もし不服申し立てを行わなければ、それ相応の不祥事を起こしたことを認めたとも思われるだろう。また不服申し立てや訴訟をけしかける弁護士も出てくるであろう。労働関係の弁護士は左翼的な人が多いので反斎藤知事の政治活動にも利用できる。したがって、懲戒免職の場合、元局長は処分そのものよりもその後の不服申し立てや訴訟で非常に困ることと思われる。

 

 以上を考えると、元局長は免職ではなく停職という温情処分に大変感謝していたのではないだろうか。処分そのものの軽さはもちろんのこと、身内での名誉が守れるからである。

 

 これでひと段落付き落ち着いたと思われた。百条委員会が動き出すまでは。

 懲戒処分に不服がある場合、処分そのものがおかしいとか、重すぎるといった時には元局長にはどういう対抗策が取れるのであろうか。一つは懲戒処分を受けた者、この場合は元局長が処分の取り消しを求めて訴訟を提起することである。このほか、不服申し立てという制度も利用できる。

 

 訴訟は裁判所が法律上の争いを判断し法的に解決を求める制度である。懲戒処分も法律、条例に従って行っているので該当処分が正しいか否かを司法である裁判所に判断を求めることとなる。

 

 不服申し立ても処分の撤回を求めて法的に解決を求める制度であるが、訴訟と違って判断するのは裁判所ではなく行政機関である。手続きも訴訟より簡易なものとなっている。この行政機関は今回の場合、兵庫県人事委員会が該当する。

 

 原則として不服申し立ては訴訟より先に行わなければならないこととなっている。

 今回の事例では、まず兵庫県人事委員会に不服申し立てを行う。人事委員会で取り消しを認められればそれでよいこととなる。人事委員会で取り消しを認められなければ裁判に進むことになる。

 

 ところで人事委員会とはどのような行政機関なのであろうか。実は役所には独立行政委員会というところがある。独立とは県庁から独立しているという意味で、例えば、選挙管理委員会、収用委員会、教育委員会、労働委員会、監査委員会などがある。役所は政治的に中立が必要である。与党支持者の消費税は3%だが野党支持者は20%などということはあり得ない。しかしより一層中立が求められる選挙や教育、労働紛争処理などは県庁から独立させ、独立行政委員会として設置しているのである。人員面で見ると、教育委員会を除くと少人数で運営されているのが特徴であり、県庁や市役所勤めの地方公務員から見ると寂しいイメージの役所である。少人数のためプロパーの職員で組織することは難しく、県庁から異動してくることがほとんどである。

 県人事委員会は県庁の人事行政の監査をするのが仕事である。したがって、人事委員会には県庁の人事行政に詳しい県庁人事課勤務経験者が異動してくることが多い。兵庫県の場合、兵庫県人事委員会の職員は、兵庫県庁人事課での勤務経験がある職員が配置されている可能性が高い。元局長は人事課長も経験した人事畑の職員である。人事委員会には元局長の先輩、同僚、後輩が勤務している可能性が非常に高いのである。

 

 従って元局長が不服申し立てをすると、自分に対する懲戒処分の妥当性を自分の先輩、同僚、後輩が審査することになる。つまりこの元局長の場合、自分が公用パソコンで勤務時間中に作成した変な日記や小説、聞き取り情報を見せてしまうことになるのである。

 元局長はイエスマンが集まるとか上に立つものの矜持などといった”えらそうな”ことを書いているが、こういった日記などを見た先輩、同僚、後輩は、どの口が言うとあきれ返ってしまうであろう。公用パソコンで勤務時間中におかしな文書を大量に作成していたことが”身内”に知られてしまうのである。したがって不服申し立ては何としても回避しなければならないのである。そのためには不服申し立てをしないことについてなるほどと思わせる理由を考える必要がある。 続く

 

(注)”えらそうな”と記載していますが、えらそうな挨拶を書くのは幹部職員の仕事の一部です。幹部職員の重要な仕事は、部下の顔と名前を覚えること、部下の監督、それと”えらそうな”あいさつをすることで他の仕事は枝葉末節です。揶揄する意味で使っているわけではありません。全国の幹部職員がそろいもそろって”えらそうな”挨拶をしていますw

 先にデメリットから言うと、懲戒されてしまったということそのものがある。兵庫県庁から正式に非違行為ありと認定されてしまったのである。

 経済面はというと不利益は何もない。もともと4月以降は定年退職自己都合退職のため給料の支払いなどあろうはずもないからである。

 他には叙位叙勲への影響が考えられる。懲戒処分は人事記録に記載される。叙位叙勲の検討の際にはこの人事記録が考慮されるので、懲戒処分のあった元局長は叙位叙勲はないことになる。

 

 次にメリットを考える。退職金は支払われる。これが経済面では大きなメリットであろう。一見すると他にメリットはないように思われる。

 

 ところがこの停職処分は元局長にとって第三者にはうかがい知れないとんでもないメリットがあった!次稿で考えてみたい。

 

 

(2025年5月20日修正追記)
 上記では3月末で定年退職としていましたが自己都合退職の誤りでした。お詫びして修正します。

 前稿で処分が非違行為に比べて軽めであることを述べた。ここではなぜ処分は軽いのかを考えたい。

 

 この文書は知事を失脚させることを狙ったものである。この非違行為に対する懲戒処分は知事からすれば最も重い処分としたいところである。つまり免職としたいはずである。その一方で知事は自分の正当性を示すために処分することにはこだわるものの、懲戒処分の軽重にはこだわりはないともいえる。なぜなら重い方の処分である免職としても知事の給料が増えるわけでもなければ、任期が増えるわけでもない。例えば10万票多めにカウントしてもらえるなど、次回の選挙で有利に取り扱われるわけでもない。つまり免職処分を採用しても知事には特に大きな直接的なメリットがあるわけではないのである。ただ軽めの処分とすると身内をかばっていると批判される可能性があるが、元局長が知事の身内であるなどとは誰も思わないであろう。

 要約すると、知事には重い処分を科したいという思いがある一方、処分の軽重にはこだわらないという不思議な状態に置かれていた。そして懲戒処分は免職という重い処分ではなく停職3月という軽い処分となった。

 

 以上は、人事課(知事側)から見た処分を取り巻く環境であるが、当の本人はどう思ったのであろう。元局長の視点で考えたい。元局長は人事畑出身の幹部職員であり、過去には懲戒処分を行う側でもあった。したがって、この処分が非違行為に比して軽めであることは十分に承知しているはずである。

 

 ところで免職と停職ではどのような違いがあるのだろうか。免職とは言うまでもなく公務員としての身分をはく奪することである。公務員であることを一方的に中断させるのであるから通常は退職金も支払われない。

 一方、停職はその期間中は職務に従事せず、給与も支給されないというだけである。

 元局長は文書を作成した3月末で定年退職自己都合により退職しているはずであった。だからもともと4月以降は給料の支払いはなかった。4月以降は学校法人に天下りを予定していたのである。兵庫県庁(源泉徴収票では兵庫県知事)から4月以降はもともと給料を支払われることがなかったのである。退職金も支払われる。ということは停職処分自体は元局長にとってみれば経済面では何ら支障を生じない処分ということになる。

 

(2025年5月20日修正追記)

 上記では3月末で定年退職としていましたが自己都合退職の誤りでした。お詫びして修正します。

 元局長に対する懲戒処分は4件の合わせ技により決定している。【1】問題となった文書の作成頒布、【2】職員の人事情報への不正アクセス、【3】公用パソコンを利用した大量の私的文書作成、【4】職員に対する中傷行為である。兵庫県懲戒処分指針の標準例に照らしてみると、いずれも一つ一つに対しては

【1】は指針1(4)「勤務態度不良」を援用して減給又は戒告。および指針2(10)「コンピュータの不適正使用」により減給又は戒告

 

【2】は1(13)「個人の秘密情報の目的外収集」を援用して減給又は戒告。および指針2(10)「コンピュータの不適正使用」により減給又は戒告

 

【3】は指針2(10)「コンピュータの不適正使用」により減給又は戒告。

 

【4】は指針1(17)「その他ハラスメントのア」によりにより停職、減給又は戒告。および指針2(10)「コンピュータの不適正使用」により減給又は戒告

 とうことで単純計算では懲戒合計が、最大で停職1件+減給6件であり、最少は戒告7件となる。懲戒処分は弱い順で戒告、減給、停職又は免職があるが、戒告が何回あれば減給に昇格(?)といった基準はなく、前例や他自治体の例に倣って行われる。わたくしの職場の事例で勘案すると、今回の懲戒処分は最低でも戒告7件により停職は免れないが、最大では停職1件に減給5件を加算して免職であると考えられる。すなわち停職又は免職に相当するのであるが今回の処分は停職なので相応の処分にとどまっていると考えられる。

 

 しかし、

(ア)本人は幹部職員である。

(イ)職員の個人情報も厳格に保護されるべきであり、しかもそれを業務としているはずの人事課勤務時に非違行為を行っている。

 これらのことを考えると、免職であるべきとも考えられる。しかし停職もありかもしれない。ただこの場合、身内に甘いと取られる恐れがある。当然であるが、今回の事例では元局長を身内と考えることはあり得ない。
 

 以上を勘案すると懲戒免職が相当であるがぎりぎり停職で済ませることもあると考えられる。元局長にとっては結果的に寛大な処分となっているし、そのことは人事課経験の長い本人ははっきりと自覚しているはずである。なぜ寛大な処分となったのであろうか。痴漢や公金横領などと違い、【1】と【4】は知事に対する政治的な攻撃である。知事はなぜ寛大な処分としたのであろうか。別稿で検討したい。

 データファイルは公用パソコンに保存されていたのであるから、これを回収した人事課が保存しているのは当然である。しかし回収当日に片山副知事に「抜いて」といわれたUSBメモリは回収していないと推測される。このUSBメモリにもパソコンのファイルをコピーしている可能性がありそうだ。そしてこのメモリは私物なので現在は遺族、正確には相続人が保管しているはずである。だとすると元のデータファイルは人事課と遺族の2者が保管している。すなわちこのいずれか、ないしは双方が漏洩元となる。
 

 フォルダーのスクリーンショットを見ると、「100(女性の名前)」、「300小説関係」というフォルダーがあることがわかる。これはフォルダー名のはじめに番号や年月日を付け加えることでファイルの一覧を表示したときに見やすくする工夫の一つである。ファイルエクスプローラーの設定にもよるが番号や年月日の順番に自動的にソートされて表示されるからである。
 

 ところが番号のつけ方がおかしい。200がないのである(000があった可能性もある)。これは提供者の都合の悪いファイルがこの200のフォルダーに保管されているために提供時に削除したのであろう。ということで提供者はこのあたりから推測できよう。立花孝志氏の動画では稲村陣営の県職員から提供されたとの発言が記録されている。
 

 なおファイルやフォルダーのタイムスタンプ(コピーの日時)がパソコンの回収日以降になっておかしいと指摘する人もいるが、コピーした際のソフトやパソコンの環境によるため現状では何とも言えないと思う。

 

 データファイルを漏洩させる動機もあわせて考えてみると興味深い。元局長はファイルの漏洩には耐えられないのは当然である。一方、データファイルに登場する人物や関係者が沈黙している。その理由は何であろうか。