レスターの物語 [2] レスター家に帰る | レスター・レヴェンソン(セドナメソッド創始者)の珠玉の言葉

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セドナメソッド創始者、レスター・レヴェンソンがセッションで話した内容で大切だと思ったポイントを訳しています。
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その日の午後、彼はまるで墓石にような彼のペントハウスに帰った。「これは墓だ」彼は思った。「そして私は死人だ。きっと慣れるしかないんだろうな」妹達が彼の面倒をみるために滞在したいと申し出てくれたが、彼は彼女達を帰した。彼はただ一人になりたかった。
彼はベッドに入り、食べる時と薬を飲む時、トイレに行く時以外は、3日間をほとんど眠って過ごした。それから、傷ついた動物が巣に戻るように、這ってベッドに入った。

何かが変わったのは4日目だった。
昼食の後、彼は椅子に座りながら窓からセントラルパーク(ニューヨークの)を眺めていた。雪が降り、木々は輝いていた。公園はまるで妖精の国のように見えた。
彼は何て美しいのだろうと思っていたが、その景色を全く楽しんでいない事に気づいた。彼は美しい事にさえ心が動かなくなっていたのだった。彼は事実上、回復の見込みがない病人であった。せいぜい、何年かこの自宅で座って、横になる分別もない虚弱で死人のような体を養生し、終わらせる事を楽しみにするくらいである。
それを思うと、彼は憤慨し、発作を起こして以来の大きなエネルギーの高まりで、椅子から立ち上がり、洗面所にある薬箱に向かい、錠剤を数えた。彼は新しい薬、鎮静剤と心臓の薬が十分ある事に気がついた。
又、数年前に腎臓結石の痛み止めに処方されたモルヒネの錠剤もあった。もし彼がこの世を去る事を望むなら、そうさせてくれるだけの量のモルヒネがビンには残されていた。モルヒネは心地良く死なせてくれる。暖かく心地の良い雲に舞い上がり、全てがバラ色なのである。確かに次の心臓発作を待つよりは確実に良い死に方だった。

さあ、今、彼は選択肢を持った。病気になってから初めて彼は自分自身に起こった事をコントロールするものを得た感じがした。彼は何をするか考えた。モルヒネの錠剤を飲んで人生を終らせるか?いや、今ではない。彼は決断した。もっと悪い状態になった時にいつでも飲めるのだから・・。
彼は椅子に座り、この状況を吟味し始めた。声を出して自問した。
「お前はまだ息をしている。病気の予後について、医者であろうが誰であろうが何を言ったとしても、お前はまだ息をしている。それこそが意義のある事だ。きっと何か希望があるだろう」
「さあて、どこから始めようか?」

この質問は落ち込むような感覚を再び生じさせ、一気にモルヒネの錠剤を飲むべきかも知れないという思いを彼にさせた。少なくとも、それで彼はこの不幸から逃れ、戦いを終結させることが出来るのだから・・・。

彼は生きている間、何と戦っていたのだろう?
ほんのちょっとした幸せ、それが全てだった。彼はその幸せを見つける事が出来なかった。見つけたとしても、その幸せは1時間、あるいは数分しか続かないものであった。
束の間・・・それが人生であった。束の間・・・永続しないもの・・・常に変化している・・・全てがうまく行っている、あらゆるものが決まりきってリラックス出来ると思うや否や、何かが起き、あなたは再び始めにいたところに戻ってしまうのだ。

分かっているのに、持ってはいられないものを掴んで、握りしめようとしてしまう。一体人生とは何なんだろう?

一体どんな意味があるのか?この地球上で彼は何をしたのだろう? 

彼は自分が生まれてきた理由が全く分からなかった。人生で体験してきた事全てを調べても、何の意味もなかった。肉体が死んで最終的に土に還るという事以外、何もないまま終るのだった。
彼が所有していたもの、達成した事は全て意味がなく価値がないように感じた。
「ほこりのようなものだな」彼は思った。

「灰は灰に、ごみはごみに還る…もし戦争があなたを掴まえなくても、税金があなたを掴まえる」
彼はこの馬鹿げた詩の中にある真実に笑わざるを得なかった。人生はあまりにも馬鹿げたものに思えたのだ。しかし、モルヒネの錠剤を飲む事を考えながら、まだ諦める事は出来ない事を理解していた。
彼の脳裏に喚起する何かがあった…どこを探したらいいか分かれば答えがそこにあるかも知れないという捉えどころの無い思いがあった。彼には時間以外何もないと分かっていた。彼の体は半分死にかけているけど、まだ精神は機能していて、まだ考える事は出来ると思った。

「試してみるべきか?」と疑問を声に出してみた。
少しの間、彼はためらったが、肩をすくめて決断した。
「ああ、何て事だ。何も失うものなんてないじゃないか。もし上手く行かなかったら、いつでもモルヒネを飲めるんだ」
彼はもしそうなったら自分がモルヒネを飲むだろうと分かっていた。絶対そうするのだと思っていた。
心が決まったら、そのことについて再び考える必要がなくなった。彼の心は、長期間そうであったよりもクリアに感じた。
そして病気になって以来初めて本当に空腹感を覚えた。
彼は台所へ行き、自炊した。まだとても弱っていたので、ゆっくり時間をかけ、急ごうとはしなかった。食事をしている間、彼の心は答えをどこに求めるかというアイディア、新しい考え、問いなどを探求する事で忙しかった。この新しいプロジェクトはワクワクするもので、レスターも再び生き生きしてくる自分自身を感じた。この食事によってリフレッシュし、強まったので、彼は窓際の椅子に再び座った。

「どこから始めるか?」
彼は思いめぐらした。
「そうだな。最初に知りたい事は何だろう?」

「人生とは何だろう?人生にはどんな意味があるんだろう?この世界に私が存在する理由はあるのか?もしあるとしたら、それは何だろう?」
「人生とは何だ?私が探してきたものとは何だったんだ?」
「ほんのちょっとした幸せ、それだけだ」彼は自分で答えた。
「分かった。それでは幸せとは何だ?どうやって手に入れる?どこで見つければいい?」
「生きるってどういう事だ?この世界にどんな意味があるんだろう?私と世界の関係とは何だろう?」
「どうして私はこんな有り様になってしまったんだろう?」
「この有り様から逃れる術はないのか?」
彼は既にその答えを知っていた。死を選ぶより逃れる術はないと。しかし、もしその答えを見つける事が出来れば、少なくともこの世に生きた理由が分かると彼は思った。彼はその理由を理解するだろうし、そう
なったらいいと。
まず最初に彼は幸せと人生の定義を辞書で調べた。辞書には彼が知っている事しか書いてなかった。次に彼は何年もかけて集めてきた本がある書斎に行った。フロイトの本があった。
何か役に立ちそうなものがあるだろうか?いいや、彼はフロイト派の精神分析を何年も受けてきたが役に立たなかった。彼は英語に訳されたフロイトの著書を全て読んでいたが、その答えは見つからなかった。フロイトは彼の知りたい答えを持っていなかった。
次にワトソンの行動主義、ユング、アドラーなどの本に向ったが、それらも彼にとっては無意味だった。
次に哲学者達の本があった。彼は書棚から本を取り、山積みにした。彼はそれを全て1度ならず隅から隅まで読んだが、彼は何かを見逃していたのだろう。結局のところ、彼は特別な質問を持っていなかったと思った。
彼は窓際の椅子のところに本を持って行き、読み始めた。次から次へと目を通し、あちこちのページや段落で目を留めた。
彼の頭の中は情報が詰まり始めたように感じ、思考はグルグル回っていた。どんどんイライラしてきて、彼は他の本、医学、物理学、工学などの本を探しに書棚に戻った。部屋の中は散乱し、本は至るところに積み重なり、ある本は彼がイライラして投げつけたまま床に広がったままになっていた。書棚に残された本は、贈り物として貰ったジョークに関するものと伝記ものだけだった。

次は何を見るのか?
「お前はいつも優秀だったな」彼は自分自身に言った。
「お前はラトガース大学のたった3人の全額給付の奨学生に試験で勝ち残ったのだったな?お前はユダヤ人にも関わらず、それを取り消されなかった。お前は勝ったんだ!」
「お前は学校ではいつも優等生名簿に載っていたよな?エンジニアリングから物理学、精神分析や哲学、医学と本当にたくさんの本を読んできたよな?」
「なあ、もしお前はそんなに頭が良いなら、大物なら、お前が勉強してきた事、知識、読書は何をした?偏頭痛、腎臓結石、胃潰瘍、虫垂炎、痛み、苦難、不幸、それで最後は心臓で死ぬはずだったが、そうはならなかった。お前が正気を取り戻す前にこれ以上何が必要なのか?」
「賢い少年レスターよ、お前はバカだ、バカだ、おおバカだ!お前に役立った知識は何もないじゃないか。それなのに、やはりまだ答えを見つけていない者達が書いた本を読もうとしている」
「その通りだ」
彼は自分自身に言った。

「こんなくだらない事は止めたぞ」

こう決心して、彼は今まで感じていた肩の重荷が軽くなるのを感じた。
突然彼は軽さを感じて、目まいがするほどだった。彼は理解した。ずっと同じ答えを探し続けて生きてきた事を。
しかし今、間違いなく分かった事があった。もし伝統的な場所に答えが見つかっていたのだとしたら、彼は既に見つけていただろうと。彼はどこか他の場所を探さなければならなかった。彼にはどこに答えがあるか分かっていた。
彼は役に立たない知識は一時的に忘れ、彼が学んだ事全てを無視する事にし、研究室に戻って一からやり直す事にした。
問題は自分自身の中にあると彼は推測した。問題は彼の肉体、心、感情にあり、その答えは彼自身の中にある筈だった。
そして、彼自身が彼の研究所であり、そこが問題を探すべき場所だった。彼は椅子の所に向かい、答え探しを始めた。

続きます


→レスターの物語 [3]