きょう、埼玉県の「子どもを虐待から守る地域フォーラム~子育て支援から虐待予防を考える~」 に行ってきました。 その中で三沢直子さんが、「家庭での子育て」から「地域・社会での子育て」へ と題して講演され、描画テストに表れた心の発達の停滞についてお話されました。
「家」と「木」と「人」を描く描画テストで、統合性の発達曲線を見ると、1981年の結果では、1年生から6年生まできれいに右肩上がりの発達曲線が見られるのですが、1997年から1999年にかけての結果では、4年生をピークとして、5年、6年と曲線は下降するのです。つまり、統合性、しっかりとした目的と計画を持ち、社会的規範と状況に応じて適切な判断をしつつ、言動と感情をコントロールする働きをする前頭連合野の脳力が、4年生以降発育停止となっているというのです。さらにショッキングなことに、この発達の停滞は、中学生、高校生と成長するに従って回復していくのかと言えば、その間も発達停止のままである可能性が高いと考えている人、少なくともそう考えると今の子どもたちの現状が非常に納得がいくと考えた人が、中学、高校教師が集まった場で、圧倒的に多かったそうです。
1997年といえば、小学校低学年で学級崩壊が顕著になった頃であり、遡っていくと、1990年頃親役割を果たせない親の増加、1980年代半ばのIQだけ高くEQの低い新入社員の増加、1970年代半ばからの思春期の家庭内暴力と、1960年以降に生まれた世代の問題としてとらえることができるというお話でした。
この背景には、そのまた親世代の戦争体験の影響、高度成長期の社会的、経済的要因、高度情報化による社会の変容等々、さまざまなファクターがあり、それまで自然に日々の暮らしの中で、家庭でも地域でも継承されてきたことが、途切れてしまったのではないでしょうか。人と人との関係性、地域の関係性、家族の関係性、あらゆる場面で人と人との関係はかつてのようではなくなっているかもしれません。
人は人と言葉と体でふれあいつながるものなのに、機械が仲介するバーチャルな世界に子どもたちを放してしまっていいのでしょうか。日常的な子どもとのふれあいも、かつて私たちが子どもだった頃よりもっと意識的に大人が自分を語り、生きる価値や人としてのありようを伝えなければ、伝わっていかなくなっているようにも思えます。
さあ、交流しましょう、という「場」を共有することは、大切な入り口になり得ると思います。けれども、場を共有するだけでなく、伝え合い、受け止めあうやりとり、互いに生きて悩み悲しみ喜ぶ存在としての自分を伝えあうつきあいを、世代を超えて築いていくことが、今必要であるように思うのです。