なぜ今、世代間交流か | 和光市世代間交流会

和光市世代間交流会

人から人へ伝えていく思い、世代から世代へ受け継ぐ生きることの価値・・・関係性を再構築していくために、地域でささやかな活動を続けています。

ふれあい  

私が育ったまちには、老人もいて、忙しい両親の世代がいて、子どもたちがいて、そして障がいのある人がいて、それぞれが日々のくらしの中でふれあい、つながりあって生きていました。けれども、今私が子どもたちを育てている大型団地は、個々の家庭のプライバシーが尊重され、高齢者は高齢者の集まりに、子どもたちは子どもたちの集まりに・・・と場を共有することはほとんどない環境です。友人同士も父母や祖父母の時代からのつきあいはまずなくて、互いの子ども時代を共有する人はほとんどいません。地域に伝わる風習も祭りもないのです。

 そういう中で、新しいコミュニティとして、独自の地域活動や祭りを創り出してきたわけですが、こんなことがありました。団地の祭りで、子どもたちにみこしをかつぐ体験をさせてやりたいと、自治会の役員が手作りでみこしを用意し、子どもたちが集まってかついだのですが、子どもたちは地域の祭りを見て育ったわけではないので、掛け声をかけることを知らなかったのです。黙ってかつぐみこしがどんなものだったか・・・子どもたちの親や地域の人たちの中には、子ども時代にみこしをかついだ経験を持つ人が少なからずいるでしょう。私もその一人です。でも、自分にとっては当たり前のことが、子どもたちにとっては当たり前ではないということに気づかず、誰も子どもたちにそういうことを伝えていなかったのですね。子どもたちが黙ってかつぐのを見て初めて、子どもたちに「伝えていなかったこと」に気づくのです。

 こういうことは、さまざまな場面であることではないでしょうか。少子高齢化、家族の形態の変化、高度情報化、人と人とのコミュニケーションのありようの激変・・・子どもたちが育っている環境は、私たちの子ども時代と大きく隔たっています。そのことが頭ではわかっているのに、私たちは、大事なことを子どもたちに伝えることを怠ってきたかもしれません。「伝えなければ伝わらない」ことが、今はたくさんあるというのに。

 子育ての困難、虐待、犯罪の低年齢化、子どもの犯罪被害など、さまざまな問題が表面化して、世代から世代に継承すべきことが途切れたことの代償を、今私たちは思い知らされつつあります。そして「世代間交流」の必要性がいろいろな場面で強調されるようになりました。けれども、共有する場をつくりだすだけではなく、生きて味わってきたことの実感を、子どもたちに伝えていくことが大事なのだと思うのです。

 大人はもっと子どもたちに、自分を語らなければならないと思います。子どもたちの今を、批評したり批判したりするのではなく、生きてきた自分の思いや悲しみや希望を、失敗や挫折を、そして今生きてあることの喜びや辛さを、子どもたちに語り、子どもたちへの愛を伝えることが必要なのではないかと思うのです。