「株主配分を考える㊦」 2008年7月12日 日経
「株主配分を考える」㊦ 2008年7月12日
問われる横並び 成長に応じた配当がカギ
「日本企業は金太郎あめだなあ。」六月下旬、企業の配当政策をテーマにしたセミナーで、日米主要五百社の配当性向の分布をみたある機関投資家は、思わずこう漏らした。
配当性向は純利益からどれぐらい配当に回したかを示す指標。日本の上場企業の配当性向は二〇〇七年度約三〇%と、欧米主要企業の四割前後に比べ見劣りする。だが、集計値から個別企業へ視点を移すと、意外な実態が浮かび上がる。
みずほ証券が日本のTOPIX(東証株価指数)五〇〇と米国のS&P五〇〇の各採用企業について、二〇〇七年の配当性向を調べたところ、日本企業は約二割が十五-二〇%に集中し、六割以上が一〇-三〇%の範囲に収まった。
これに対して米国は分布がばらついているのが特徴だ。最も多いのが無配で十九%を占める。インターネット検索最大手で急成長を遂げてきたグーグルは上場以来、無配が続く。逆に配当性向一〇〇%超、つまり利益を上回る配当をする企業が四%ある。
米国では配当政策は個々の企業の成長ステージを基準に考える。投資家は成熟産業に対しては利益の多くを配当するよう求める。一方、成長企業に対しては「企 業価値を上げるチャンスがあるなら配当より成長投資を優先しても構わない」(インベスコ投信投資顧問の川上敦取締役)と無配も許容する。米国は上場企業全 体でみると、実は八割が無配という。
企業の成長性にかかわらず配当性向が平均値に集中する日本。「他社並みに」という経営者の横並び意識が、企業の配当政策の個性を無くしている。
今年一月に約四千億円で有望新薬候補を持つ米MGIファーマを買収したエーザイ。買収費用で二〇〇八年三月期は上場来初の最終赤字になったが、増配を継続 した。「減配してもいいですよ」。ある外資系投資顧問はエーザイにこんなアドバイスをした。成長投資で赤字なら、あえて増配する必要はないと考えているか らだ。
米運用会社のブランデス・インベストメント・パートナーズは今春、投資先であるに日比谷総合設備の配当政策に疑問を投げかけた。「大幅増配や自社株買いでいったん余剰資本を圧縮したうえで、配当性向を適正化したらどうか」というのがブランデスの主張だ。
投資家が求めるのは必ずしも高配当とは限らない。求められるのは個々の企業の経営実態に即した配当政策だ。少数派ではあるが、国内でも自社の成長ステージを見極めた配当政策を取る企業も現れ始めた。
七月初旬、英投資会社シルチェスター・インターナショナル・インベスターズのファンドマネジャーが靴販売大手のチヨダの本社を訪れ、「投資家を向いた経営に感謝します」と謝辞を述べた。
国内の靴販売市場は縮小傾向にある。チヨダは安定した利益は上げられるが、大幅な伸びは期待できない。白土孝取締役は「もはや多額の投資を必要としない以 上、利益をできるだけ株主に配分するのが筋だ」と語る。単独ベースの配当性向八〇%を目標に掲げ、利益の八割を配当する。
日本企業が六期連続の 増益で積み上げた手元資金は〇八年三月期末で四十六兆七千億円。かつてないカネ余り状態が続いている。成長企業は資金を投資に振り向け、資金余剰の成熟企 業は配当や自社株買いで資金を市場へ返す。こうした当たり前の資本政策を実践できるか。企業に問われているのは、哲学のある株主配分だ。
問われる横並び 成長に応じた配当がカギ
「日本企業は金太郎あめだなあ。」六月下旬、企業の配当政策をテーマにしたセミナーで、日米主要五百社の配当性向の分布をみたある機関投資家は、思わずこう漏らした。
配当性向は純利益からどれぐらい配当に回したかを示す指標。日本の上場企業の配当性向は二〇〇七年度約三〇%と、欧米主要企業の四割前後に比べ見劣りする。だが、集計値から個別企業へ視点を移すと、意外な実態が浮かび上がる。
みずほ証券が日本のTOPIX(東証株価指数)五〇〇と米国のS&P五〇〇の各採用企業について、二〇〇七年の配当性向を調べたところ、日本企業は約二割が十五-二〇%に集中し、六割以上が一〇-三〇%の範囲に収まった。
これに対して米国は分布がばらついているのが特徴だ。最も多いのが無配で十九%を占める。インターネット検索最大手で急成長を遂げてきたグーグルは上場以来、無配が続く。逆に配当性向一〇〇%超、つまり利益を上回る配当をする企業が四%ある。
米国では配当政策は個々の企業の成長ステージを基準に考える。投資家は成熟産業に対しては利益の多くを配当するよう求める。一方、成長企業に対しては「企 業価値を上げるチャンスがあるなら配当より成長投資を優先しても構わない」(インベスコ投信投資顧問の川上敦取締役)と無配も許容する。米国は上場企業全 体でみると、実は八割が無配という。
企業の成長性にかかわらず配当性向が平均値に集中する日本。「他社並みに」という経営者の横並び意識が、企業の配当政策の個性を無くしている。
今年一月に約四千億円で有望新薬候補を持つ米MGIファーマを買収したエーザイ。買収費用で二〇〇八年三月期は上場来初の最終赤字になったが、増配を継続 した。「減配してもいいですよ」。ある外資系投資顧問はエーザイにこんなアドバイスをした。成長投資で赤字なら、あえて増配する必要はないと考えているか らだ。
米運用会社のブランデス・インベストメント・パートナーズは今春、投資先であるに日比谷総合設備の配当政策に疑問を投げかけた。「大幅増配や自社株買いでいったん余剰資本を圧縮したうえで、配当性向を適正化したらどうか」というのがブランデスの主張だ。
投資家が求めるのは必ずしも高配当とは限らない。求められるのは個々の企業の経営実態に即した配当政策だ。少数派ではあるが、国内でも自社の成長ステージを見極めた配当政策を取る企業も現れ始めた。
七月初旬、英投資会社シルチェスター・インターナショナル・インベスターズのファンドマネジャーが靴販売大手のチヨダの本社を訪れ、「投資家を向いた経営に感謝します」と謝辞を述べた。
国内の靴販売市場は縮小傾向にある。チヨダは安定した利益は上げられるが、大幅な伸びは期待できない。白土孝取締役は「もはや多額の投資を必要としない以 上、利益をできるだけ株主に配分するのが筋だ」と語る。単独ベースの配当性向八〇%を目標に掲げ、利益の八割を配当する。
日本企業が六期連続の 増益で積み上げた手元資金は〇八年三月期末で四十六兆七千億円。かつてないカネ余り状態が続いている。成長企業は資金を投資に振り向け、資金余剰の成熟企 業は配当や自社株買いで資金を市場へ返す。こうした当たり前の資本政策を実践できるか。企業に問われているのは、哲学のある株主配分だ。