不公正発行(1)秀和vs忠実屋・いなげや事件
10月20日の不公正発行に関するエントリの続きです。
まず不公正発行に関する主要な事例(判例)と結果を挙げてみましょう。順番は時系列です。(1)最終的な決定/判決・時期、(2)株主・発行者、(3)不公正発行に当るかどうか、(4)理由の要約、(5)コメントです。
1.秀和 vs 忠実屋・いなげや事件
(1)東京地裁 平成元年7月25日(判例時報1317号28p)
(2)株主=秀和、発行者=忠実屋・いなげや
(3)不公正発行(発行差止め)
(4)発行目的が現経営陣の支配権維持・特定株主の持株比率低下にある。主要目的が右に
当らない場合でも、特定株主の持株比率低下の認識があり、かつ、発行を正当化できるだけ
の合理的理由がなければ不公正発行に当る
(5)不公正発行が争われた事例としては今となっては古い部類に属します。これより前だと横河
電機製作所事件(最高裁昭和50年4月9日、もともとの訴因は昭和36年の新株発行)などが
あります。
本件では、秀和が忠実屋の株式の33.3%、いなげやの株の21.4%を取得した上で忠実屋
・いなげやと秀和関連会社(ライフストア)の3社合併を提案したことが発端でした。秀和の提
案に対抗して忠実屋といなげやは両社で業務・資本提携を行うとして相互に株式を割当てる
ことで秀和に対抗しようとしました。したがって判示のとおり「経営権の争いのある中での特定
株主の持分の低下」という意図が明白だったことになります。
また資金調達目的としても、忠実屋といなげやの間で業務提携交渉が過去本格的に行わ
れた形跡がなく、調達された資金も互いの新株取得に充当する以外はこれといって具体的な
資金使途が明確ではないことから否定されました。
さらに、秀和が両社の経営に関与することが両社の業務に重大な不利益をもたらす証拠は
見当たらないとされた点も指摘されました。
大体、この手の係争では主要目的ルールに照らして「経営権に争いがある」と認定される
可能性は高いわけで、資金調達目的や事業提携の具体性の有無が判断を分けるといえま
す。後述の「CSK vs ベルシステム24事件」はまさにそのような案件です。
なお「両社の業務に重大な不利益をもたらすか」は現代風にいえば「企業価値・株主共同
の利益を毀損するか」ということでしょうが、言い回しに時代を感じますね。
=================================
ご指摘によりちょっと訂正です。
秀和vs忠実屋・いなげやの件より以前の主要なものとして以下の事件がありました。
1.コスモポリタンvsタクマ事件
大阪地裁決定 昭和62年11月18日
2.高橋産業vs宮入バルブ製作所第一次事件
東京地裁決定 昭和63年12月2日
確かに、コスモポリタンは暴力団がらみということで注目を集めました。また高橋産業vs宮入バルブの件は二度に渡って差止め申請が出た件でした(第二次事件の決定は忠実屋・いなげやより少し後)。
これらについても後ほど触れることとします。
まず不公正発行に関する主要な事例(判例)と結果を挙げてみましょう。順番は時系列です。(1)最終的な決定/判決・時期、(2)株主・発行者、(3)不公正発行に当るかどうか、(4)理由の要約、(5)コメントです。
1.秀和 vs 忠実屋・いなげや事件
(1)東京地裁 平成元年7月25日(判例時報1317号28p)
(2)株主=秀和、発行者=忠実屋・いなげや
(3)不公正発行(発行差止め)
(4)発行目的が現経営陣の支配権維持・特定株主の持株比率低下にある。主要目的が右に
当らない場合でも、特定株主の持株比率低下の認識があり、かつ、発行を正当化できるだけ
の合理的理由がなければ不公正発行に当る
(5)不公正発行が争われた事例としては今となっては古い部類に属します。これより前だと横河
電機製作所事件(最高裁昭和50年4月9日、もともとの訴因は昭和36年の新株発行)などが
あります。
本件では、秀和が忠実屋の株式の33.3%、いなげやの株の21.4%を取得した上で忠実屋
・いなげやと秀和関連会社(ライフストア)の3社合併を提案したことが発端でした。秀和の提
案に対抗して忠実屋といなげやは両社で業務・資本提携を行うとして相互に株式を割当てる
ことで秀和に対抗しようとしました。したがって判示のとおり「経営権の争いのある中での特定
株主の持分の低下」という意図が明白だったことになります。
また資金調達目的としても、忠実屋といなげやの間で業務提携交渉が過去本格的に行わ
れた形跡がなく、調達された資金も互いの新株取得に充当する以外はこれといって具体的な
資金使途が明確ではないことから否定されました。
さらに、秀和が両社の経営に関与することが両社の業務に重大な不利益をもたらす証拠は
見当たらないとされた点も指摘されました。
大体、この手の係争では主要目的ルールに照らして「経営権に争いがある」と認定される
可能性は高いわけで、資金調達目的や事業提携の具体性の有無が判断を分けるといえま
す。後述の「CSK vs ベルシステム24事件」はまさにそのような案件です。
なお「両社の業務に重大な不利益をもたらすか」は現代風にいえば「企業価値・株主共同
の利益を毀損するか」ということでしょうが、言い回しに時代を感じますね。
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ご指摘によりちょっと訂正です。
秀和vs忠実屋・いなげやの件より以前の主要なものとして以下の事件がありました。
1.コスモポリタンvsタクマ事件
大阪地裁決定 昭和62年11月18日
2.高橋産業vs宮入バルブ製作所第一次事件
東京地裁決定 昭和63年12月2日
確かに、コスモポリタンは暴力団がらみということで注目を集めました。また高橋産業vs宮入バルブの件は二度に渡って差止め申請が出た件でした(第二次事件の決定は忠実屋・いなげやより少し後)。
これらについても後ほど触れることとします。