ハイブリッド証券 : スキーム(その1) | 謎の金融日誌

ハイブリッド証券 : スキーム(その1)

ハイブリッド証券のバリエーションにはいろいろありますが、IRでよくみかけるスキーム図はだいたい似通っています。しかし非常に基本的なところでよく受けるご質問に

「なぜ本体で優先株を発行せずにケイマンの特別目的会社(SPC)からなのか?節税対策なんだろうと漠然とは思うけど実際にはどうなのか」
「なぜ本体では社債形式にしてSPCでは優先出資証券という形にするのか?」

というものがあります。
こ の観点はハイブリッド証券に特有のものではなく、証券化やプロジェクトファイナンスなど「仕組もの」には共通する部分です。今日はこの点について簡単にま とめておきます(規制や税制はころころ変わるのと、個別の発行事例は発行体や投資家のさまざまな利害や市場環境にも影響されるので一概にはいえません が)。

まず、この手の案件を考えるときに注意が払われるのは「税金」の問題です。その際のポイントは以下のとおりです。
 1.発行されるのは債券なのか株なのか
 2.発行体は内国法人なのか外国法人なのか
 3.投資家は居住者なのか非居住者なのか
 4.発行地は日本なのか海外なのか
 5.利子や配当を受取るのは日本なのか海外なのか
こんなところでしょう。この点をもとに発行体側の利子や配当が損金算入できるか(法人税の節税)、投資家側の源泉税がなくて済むかなどが検討されます。何回かに分けて順次みてみましょう。

1.発行されるのは債券なのか株なのか
  ハイブリッド証券は、資本増強を目的としつつ、利払や配当はできるだけ損金で落としたいのが発行体側の本音です。また投資家側も発行体側の法人税が圧縮さ れた商品設計ならばそれだけ高いリターンを期待できることになります。しかし純粋な社債だと資本性の度合いが落ちてしまい、よい格付ももらえないため困り ます。そこで、理想的には法人税控除後も高い利回りとなる優先株するか、利払が業績に連動する利益参加型の劣後社債が考えられます。しかし前者だとかなり 高い収益を見込んでおかないと十分な優先配当を約束できなので発行体としてはつらくなります。そもそも収益力が落ちている中で発行するのが通常ですから、 配当をコミットするレベルはできるだけ下げておきたいところです。一方、利益参加型の社債の利払は国内では損金不算入となる恐れがあり、スキームとして安 定しません。そこで、発行体自身では社債形式で調達し、証券の形式がよりゆるい海外では優先株(優先出資証券)を発行するという選択肢が考えられます。
(つづく)