ハイブリッド証券 : スキーム(その4)まとめ
前回まででハイブリッド証券を出す際の前提条件となる環境を説明しましたが、ごちゃごちゃしているのでまとめてみましょう。発行体と投資家のニーズは以下の感じです。
1.発行体は発行する証券の利子・配当などを損金にしたい
→ 社債を発行すれば利子は損金算入可。しかも劣後社債の形式にすれば経済実態は株式
同様のものを設計可能。
2.発行体は財務基盤強化のために資本性のある証券を出したい
→ 優先株なら資本性があるが、そのままだと課税面で魅力がない。課税がなくて優先株に
類似した証券を出せる仕組みがほしい。
→ そのためには軽課税国で規制の緩い国に金融子会社を置いて発行すればよい。その際、
この子会社の信用力の裏づけは日本の親会社が発行する劣後社債と親会社からの保証と
なる。
3.投資家は日本や発行地の源泉税、法人税、消費税などを最小にしたい
→ 軽課税国で日本にPEのない非居住者のステータスで日本企業の金融子会社に投資する。
なお、不動産証券化などに詳しい方なら「資産流動化法の特定目的会社(TMK)を使って似たようなことができるのではないか?」という指摘もありそうです。TMKの場合、
・TMKの保有する特定資産が有価証券の場合は利子・配当の源泉課税を免除する
・TMKが配当可能利益の90%以上を配当する場合には配当の損金算入を認める
と いう特典があります。しかし資産流動化計画の提出は必要なこと、優先出資は公募扱いで発行・継続開示の負担が重いこと、課税上の特典を受けるためには、募 集を主として国内で行うこと(発行価額の50%以上)、優先出資には適格機関投資家のみによる引受けか50人超の引受人が必要なことなどの条件がありま す。国内募集を中心とすると海外投資家を集められないかもしれません。またここでいう適格機関投資家にはSPCが入らないので、海外の金融機関などは SPC経由でなく自社で投資しなければならず、それだと居住者またはPEのある非居住者となってしまうため、いずれにしても課税面で魅力が失われてしまう のです。
これに対して、ケイマンでSPCを設立した場合に海外投資家のメリットとしてよく挙げられる点をみてみると、
・法人税、源泉課税がない
・SPCの設立コストは安い
・資産流動化計画の届出や規制上の各種登録・認可なども不要
・SPCにケイマンでの帳簿保存義務はなく、会計監査も義務ではない
・取引、書面とも英語で処理できる
・英米法の慣行で取引を処理できるので法的に安定したスキームにできる
・軽課税国の中でも政情が安定している
・ニューヨークとの時差が1時間しかないので業務の遂行上便利である
などがあります。こうした点を勘案すると、日本の銀行や大企業が資本調達する際には、ユーロ円建ての劣後債の発行+ケイマンSPCの設立と劣後債引受け+ケイマンでの優先出資証券の発行を組み合わせるのが良いことがわかります。
===========================================
記述で補足が必要な部分がありました。
海外発行して「PEなし非居住者」または「外国法人」が日本企業の海外発行の債券の利子を受け取っても節税になるというのは、「民間国外債の利子の非課税の特例」が延長されているためです。
1.発行体は発行する証券の利子・配当などを損金にしたい
→ 社債を発行すれば利子は損金算入可。しかも劣後社債の形式にすれば経済実態は株式
同様のものを設計可能。
2.発行体は財務基盤強化のために資本性のある証券を出したい
→ 優先株なら資本性があるが、そのままだと課税面で魅力がない。課税がなくて優先株に
類似した証券を出せる仕組みがほしい。
→ そのためには軽課税国で規制の緩い国に金融子会社を置いて発行すればよい。その際、
この子会社の信用力の裏づけは日本の親会社が発行する劣後社債と親会社からの保証と
なる。
3.投資家は日本や発行地の源泉税、法人税、消費税などを最小にしたい
→ 軽課税国で日本にPEのない非居住者のステータスで日本企業の金融子会社に投資する。
なお、不動産証券化などに詳しい方なら「資産流動化法の特定目的会社(TMK)を使って似たようなことができるのではないか?」という指摘もありそうです。TMKの場合、
・TMKの保有する特定資産が有価証券の場合は利子・配当の源泉課税を免除する
・TMKが配当可能利益の90%以上を配当する場合には配当の損金算入を認める
と いう特典があります。しかし資産流動化計画の提出は必要なこと、優先出資は公募扱いで発行・継続開示の負担が重いこと、課税上の特典を受けるためには、募 集を主として国内で行うこと(発行価額の50%以上)、優先出資には適格機関投資家のみによる引受けか50人超の引受人が必要なことなどの条件がありま す。国内募集を中心とすると海外投資家を集められないかもしれません。またここでいう適格機関投資家にはSPCが入らないので、海外の金融機関などは SPC経由でなく自社で投資しなければならず、それだと居住者またはPEのある非居住者となってしまうため、いずれにしても課税面で魅力が失われてしまう のです。
これに対して、ケイマンでSPCを設立した場合に海外投資家のメリットとしてよく挙げられる点をみてみると、
・法人税、源泉課税がない
・SPCの設立コストは安い
・資産流動化計画の届出や規制上の各種登録・認可なども不要
・SPCにケイマンでの帳簿保存義務はなく、会計監査も義務ではない
・取引、書面とも英語で処理できる
・英米法の慣行で取引を処理できるので法的に安定したスキームにできる
・軽課税国の中でも政情が安定している
・ニューヨークとの時差が1時間しかないので業務の遂行上便利である
などがあります。こうした点を勘案すると、日本の銀行や大企業が資本調達する際には、ユーロ円建ての劣後債の発行+ケイマンSPCの設立と劣後債引受け+ケイマンでの優先出資証券の発行を組み合わせるのが良いことがわかります。
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記述で補足が必要な部分がありました。
海外発行して「PEなし非居住者」または「外国法人」が日本企業の海外発行の債券の利子を受け取っても節税になるというのは、「民間国外債の利子の非課税の特例」が延長されているためです。