ハイブリッド証券 : 基礎(4)発行会社のねらい② | 謎の金融日誌

ハイブリッド証券 : 基礎(4)発行会社のねらい②

発行コストの抑制)
 ハイブリッド証券を調達コストの抑制という観点でみてみます。これはハイブリッド証券を利用する目的というよりも、発行に当って工夫が必要な考慮点くらいの意味です。
 
普 通株の増資で資金調達を行う場合、想定されるコストは株式資本コストです(当然ですが資本のコスト=毎期の配当とは考えません)。資本コストは一般的に CAPMで考えるとすれば、リスクフリーレート(長期国債の利回り)+リスクプレミアムとなります。このリスクプレミアムは各銘柄に固有のβと<各銘柄と リスクフリーレートの収益格差>の積ですね。ハイブリッド証券を必要とする場合などはβがそれなりに大きい銘柄でしょうから、資本コストはリスクフリー レートに比べ無視できない高さになるでしょう。ただし近年のようにリスクフリーレートが低すぎるとCAPMから推定した資本コストが必ずしもその銘柄に妥 当するとは限りません。市場関係者はむしろ「国債利回りやスワップレートに対してどのくらいのスプレッドを上乗せするか」、というマーケットの相場感で資 本コストを判断していると思われます。

 さて、普通株だけで資金を賄うと上記のように資本コストの負担が重くなってしまい、資金使途であ るプロジェクトのIRRが資本コストと見合わなくなってしまう場合もあるでしょう。といってコストの安い借入や社債を使えば負債比率が上がってしまうの で、ハイブリッド証券でなるべく普通株式より低いコストを実現するニーズがでてくるのです。よくあるパターンは、社債に普通株への転換権を付与することで オプション価値を上乗せする代わりに、その対価として社債のクーポンをゼロないしきわめて低いレートにするケースがあります。もっとも、オプションは社債 と一体として設計されるのが通例なのでオプション単独での価値はあまり計算されません。

(投資家への甘味材の添加)
 発行コスト の抑制の項でも書きましたが、多くのハイブリッド証券では普通株式への転換権が付与されています。発行コストを抑制する技術的な観点もありますが、本来は むしろリスクの高いハイブリッド証券に対する投資家の呼び水(甘味材)の役割が大きいといえます。現時点で業績があまり良くなくても、調達した資金で高い 価値のあるプロジェクトを実施して企業価値が上昇すると期待できれば、株価はやがて回復するでしょう。そうすれば転換権のオプション価値が高まり、ハイブ リッド証券自体の転売益や転換権の行使による利益が見込めるようになります。また企業再生などの案件では経営危機などの万一の際に備えて優先株保有者に議 決権を与える道を残しておくとか、非上場化した案件で再上場を狙う場合の上場益をアップさせるために新株予約権を付ける(エクイティ・キッカーなどといい ます)といった方法が採られることもあります。
(つづく)