ハイブリッド証券 : 基礎(5)発行会社のねらい③
(買収防衛への利用)
ハイブリッド証券は買収防衛にも応用することができます。今回はこの点について考えてみましょう。
転換権 や新株予約権といった手段は、「通常は株主価値の希薄化を招くので多用しないが、敵対的買収などの非常時には一定の条件で発動させる」ように設計しておけ ば買収防衛手段になります。これはポイズン・ピル(毒薬条項)という形でここ数年多くの企業で導入されました。ポイズン・ピルの名称は、買収防衛策が発動 されると毒薬のように浸透して買収者の持株比率が希釈かされるというイメージからきています。いろいろ細かいバリエーションがあるのですが、中心は新株予 約権(ライツ)を一定の条件の下で買収者以外の株主に割り当てる「ライツプラン」と呼ばれる方法となります(敵対的買収防衛策自体はライツプラン以外にも さまざまな手法が存在しており、それらが場面に応じて併用されます)。
ライツプランはおおまかに「信託型」と「事前警告型」の2種類に 分かれます(この分類、名称は2005年の経済産業省「企業価値研究会報告書」を契機として一般に広がりました)。ここでは買収防衛の議論に深入りしませ んが、最近の防衛策の概要とハイブリッド証券の関係をごく簡単にみておきます。
まず買収防衛策ですが、「信託型」は、平時において株主総会の特 別決議を経て新株予約権を発行し信託銀行に信託しておきます。実際に敵対的買収者が現れたら取締役会の判断で新株予約権の割当てと行使を行わせることで、 買収者の持株比率を引き下げてしまうのです。しかしこの方法は取締役会の保身に用いられる恐れがあるとされ、採用数は多くありません。一方、「事前警告 型」は平時に予め買収者が従うべき買収手続を明確に定めて公表しておきます。たとえば買収後の事業計画や買収方法の妥当性といった点について十分に説明さ せます。その上で問題があると経営陣(取締役会)から独立した第三者委員会が買収防衛策の発動について助言を行い、発動するか発動しないかが決められま す。発動されればライツプランが始動し、発動されなければTOBの方法により買収手続が開始されることになります。現在はこの事前警告型が手続の透明性が 高いとして導入の主流となっています。
さて防衛策の典型は以上のとおりですが、これを型どおりに導入するには株主総会の特別決議が必要 になるなど手続が煩雑です。また防衛策の導入に否定的に反応する株式市場からは、株価下落の反応を招く可能性があります。そこで、実際の資金調達に資する こと・株主価値の希薄化を回避すること・買収防衛にもなる、という方法を考案するニーズがでてきます。そのために、議決権のないハイブリッド証券で必要資 金を確保しながら、証券の引受者に同時に新株予約権をセットで割り当てることが考えられます。行使条件がいわゆる有利発行だとか不公正発行に該当しないよ うにすれば、友好企業との「株式持ち合い」の代替策になりうるわけです。ただし実際にキャッシュアウトを伴いますから、事業会社からよりはメインバンクに 融資の代わりとして対応してもらうなどの利用法になるでしょう。
※発行価格に合理性が欠けており、引受者にとって著しく有利な場合は「有利発行」として
他の株主から発行差止めの仮処分を裁判所に請求される場合があります。また「合理的な
資金使途がなく、経営陣の保身を目的として他の株主の持株比率引下げを意図している場合」
には不公正な発行として発行差止めの請求が出される場合があります。
上記の買収防衛的な例として挙がるのは新日鉄が2006年11月に発行したハイブリッド証券です。このときは海外子会社が発行した優先出資証券を邦銀3行 (みずほコーポレート、三菱東京UFJ、三井住友)に引き受けてもらっています。この証券には新日鉄本体が発行する劣後CBへの交換権が付いていて、行使 価格740円が当時の新日鉄の株価よりかなり高かったため(2006年7月~9月の3ヶ月間の月末終値はいずれも400円台)、「買収防衛策とも受取れ る」という報道がありました(2006年11月16日付日経金融新聞)。ちなみに潜在的な希薄化率は5.96%でした。とはいえ、このような手法はどの会 社でも「買収防衛のためです」などとは認めないでしょうし、そもそも2006年頃の鋼材需要逼迫時に新日鉄に資金の実需はあったと考えられるので、憶測に 過ぎないともいえます。
ハイブリッド証券は買収防衛にも応用することができます。今回はこの点について考えてみましょう。
転換権 や新株予約権といった手段は、「通常は株主価値の希薄化を招くので多用しないが、敵対的買収などの非常時には一定の条件で発動させる」ように設計しておけ ば買収防衛手段になります。これはポイズン・ピル(毒薬条項)という形でここ数年多くの企業で導入されました。ポイズン・ピルの名称は、買収防衛策が発動 されると毒薬のように浸透して買収者の持株比率が希釈かされるというイメージからきています。いろいろ細かいバリエーションがあるのですが、中心は新株予 約権(ライツ)を一定の条件の下で買収者以外の株主に割り当てる「ライツプラン」と呼ばれる方法となります(敵対的買収防衛策自体はライツプラン以外にも さまざまな手法が存在しており、それらが場面に応じて併用されます)。
ライツプランはおおまかに「信託型」と「事前警告型」の2種類に 分かれます(この分類、名称は2005年の経済産業省「企業価値研究会報告書」を契機として一般に広がりました)。ここでは買収防衛の議論に深入りしませ んが、最近の防衛策の概要とハイブリッド証券の関係をごく簡単にみておきます。
まず買収防衛策ですが、「信託型」は、平時において株主総会の特 別決議を経て新株予約権を発行し信託銀行に信託しておきます。実際に敵対的買収者が現れたら取締役会の判断で新株予約権の割当てと行使を行わせることで、 買収者の持株比率を引き下げてしまうのです。しかしこの方法は取締役会の保身に用いられる恐れがあるとされ、採用数は多くありません。一方、「事前警告 型」は平時に予め買収者が従うべき買収手続を明確に定めて公表しておきます。たとえば買収後の事業計画や買収方法の妥当性といった点について十分に説明さ せます。その上で問題があると経営陣(取締役会)から独立した第三者委員会が買収防衛策の発動について助言を行い、発動するか発動しないかが決められま す。発動されればライツプランが始動し、発動されなければTOBの方法により買収手続が開始されることになります。現在はこの事前警告型が手続の透明性が 高いとして導入の主流となっています。
さて防衛策の典型は以上のとおりですが、これを型どおりに導入するには株主総会の特別決議が必要 になるなど手続が煩雑です。また防衛策の導入に否定的に反応する株式市場からは、株価下落の反応を招く可能性があります。そこで、実際の資金調達に資する こと・株主価値の希薄化を回避すること・買収防衛にもなる、という方法を考案するニーズがでてきます。そのために、議決権のないハイブリッド証券で必要資 金を確保しながら、証券の引受者に同時に新株予約権をセットで割り当てることが考えられます。行使条件がいわゆる有利発行だとか不公正発行に該当しないよ うにすれば、友好企業との「株式持ち合い」の代替策になりうるわけです。ただし実際にキャッシュアウトを伴いますから、事業会社からよりはメインバンクに 融資の代わりとして対応してもらうなどの利用法になるでしょう。
※発行価格に合理性が欠けており、引受者にとって著しく有利な場合は「有利発行」として
他の株主から発行差止めの仮処分を裁判所に請求される場合があります。また「合理的な
資金使途がなく、経営陣の保身を目的として他の株主の持株比率引下げを意図している場合」
には不公正な発行として発行差止めの請求が出される場合があります。
上記の買収防衛的な例として挙がるのは新日鉄が2006年11月に発行したハイブリッド証券です。このときは海外子会社が発行した優先出資証券を邦銀3行 (みずほコーポレート、三菱東京UFJ、三井住友)に引き受けてもらっています。この証券には新日鉄本体が発行する劣後CBへの交換権が付いていて、行使 価格740円が当時の新日鉄の株価よりかなり高かったため(2006年7月~9月の3ヶ月間の月末終値はいずれも400円台)、「買収防衛策とも受取れ る」という報道がありました(2006年11月16日付日経金融新聞)。ちなみに潜在的な希薄化率は5.96%でした。とはいえ、このような手法はどの会 社でも「買収防衛のためです」などとは認めないでしょうし、そもそも2006年頃の鋼材需要逼迫時に新日鉄に資金の実需はあったと考えられるので、憶測に 過ぎないともいえます。