瞳の好きな料理は、ハンバーグにカレー、


コロッケ、唐揚げ・・・、それらはちゃんと知っていたし、


私も克典も好きであったが、


普段私がそれらを食卓に出すことはあまりなかった。


つづく

「今日はすき焼きなんだ?」


「お肉たくさん買ってきたから、たくさん食べてね」


すき焼きは克典の大好物の一つで、夕食の献立にすることが多かった。


ただ、幼い瞳は未だすき焼きなどの鍋料理を好きになれないようで、


鍋と茶碗を何度も箸が行き来する克典とは対照的に、


瞳は、私が取り分けた野菜も肉にも箸がなかなか進まない。


「瞳、ちゃんと食べなさい」


そう言うと、瞳はいつも憂鬱そうな表情で私を見つめる。


つづく

午後7時30分。


ピンクの花束が飾られた食卓の中央で、


すき焼きの鍋が煮え立つ音を立てている頃、


その音に紛れるように玄関の扉の開く音が聞こえた。


「ただいま」


克典が帰ってきた。


「おかえりなさい」


テレビを見ていた瞳も気づき、


おかえりなさい、と克典の元へと駆け寄った。


つづく