母ちゃんが騙された!<3> | セコンドアウト!

母ちゃんが騙された!<3>

母ちゃんが騙された!<2>からのつづき

 “ニセJ”を我が息子だと完全に信じ切っていた母ちゃんは、当然「ケータイを水没させて壊れた」という話も信じ、“ニセJ”のケータイ番号を息子の新しいケータイ番号として、電話帳に登録したそうだ。
 体調が悪いという息子を案じ、息子の自宅まで行こうかどうかまだ悩んだという母ちゃんだが、夜だしこの日は父ちゃんが不在だったこともあって、翌日の午前中にかかってくるという息子(ニセJ)からの電話を待つことに。

 しかし、ここで母ちゃんにある好奇心が沸き上がってくる。
 本来、ウチの母ちゃんは実の息子である私と違い、どちらかというとクールというか、冷静な人である。まぁそんなタイプの人でも実の息子の名前を名乗り、「具合が悪い」と言われると信じてしまうのだから、昨今の詐欺は巧妙である。
 とにかく母ちゃんはふと、「息子はケータイが壊れてしまい、新しい電話番号になったが、仕事先への連絡はどうしているのだろう」という新たな心配事が出たそうだ。ご存じの通り、私はフリーランスで仕事をしている上、取材などで自宅兼仕事場を空けることも多く、ケータイは仕事上の必須アイテムだ。

 だからこそ基本的にそう簡単にケータイ番号を変えるわけにはないかない。だから母ちゃんは「具合が悪いのにあちこちに連絡しなきゃいけないのかな」→「壊れた前のケータイはもう直らないのかな」→「前のケータイに電話したら新しい番号とかアナウンスされるのかな」→「そもそも壊れたケータイに電話したらどうなるんだろう?」という、いつのまにか息子の心配よりも、壊れたケータイに電話したらどうなるんだろうという単純な興味が沸いてきたらしい。

 本当にウチの母ちゃんはそんな変な好奇心というか、冒険心が沸くタイプではないので、これは極めて珍しい。これが今回の事件の奇跡の1つである。
 母ちゃんはおもむろに自分のケータイから、息子の前のケータイ番号に電話をしてみた。その結果、「母ちゃんが騙された!<1>」で書いたやり取りとなったわけだ。

 「アナウンスでも流れるのでは? いや、コールはするけど延々と誰も出ないのは? いやいや、そもそもコールすらしないのでは?」と、いろんなことを考えながら、好奇心だけで息子の“壊れたはず”のケータイに電話したところ、あっさりと息子が電話に出た上、「ケータイが壊れたって言ったじゃない!」と言っても「へ? 何のこと? そんな電話してないっすけど」とスットンキョウなことを言われたのだから、母ちゃんはまたパニックである。

 パニくった母ちゃんは何度も「別にあんたを心配して電話したわけでもなく、本当に壊れたケータイに電話したらどうなるんだろうって思ってかけてみたら、アンタが出たのよ~」を連呼していた。いやいや、別に心配して電話してくれても一向に構わないって。実の息子なんだから……
 とにかく完全な思いつきで、壊れたはずのケータイに電話をするという“奇跡”を起こし、数十分前に実の息子だと思って話していた男が、実は息子でも何でもなく、実の息子はいたって元気でケータイも壊れていないことが分かった母ちゃんだが、実はそこに2つ目の奇跡があったりする。まぁ奇跡ってほど大げさなことじゃないけど……

つづく……