プロレスの凄さ
前エントリーで書いたように、ワクワクしながら取材をさせてもらった『マッスルハウス5』だが、取材を終えたあとの感想は正直原稿を書くのも辛いくらいブルーだった。内容のほうはangle JAPANのほうを見ていただければ大体分かると思う。正直、「楽しむ」ことを期待してチケットを買ったファンの中で、「あ~、面白かった」と思って帰った人は少なかったんじゃないだろうか? そういう意味でこの大会には賛否両論あるかもしれない。ただ、坂井さんをはじめ、マッスルの関係者たちが「今大会はコレをやろう」と思った気持ちもよく分かる。
例えばプロレスラーの橋本真也さんが亡くなったとき、同期で闘魂三銃士と呼ばれた武藤や蝶野が中心になって、大々的に「橋本真也追悼興行」をやるという話があったが、結局行われることはなかった。
亡くなった人を使ってお金を取るなんてことはナンセンスだという考えもあったのかもしれない。ただその反面、仲間だった同期の選手たちが中心になって、追悼興行をやるくらいのことはしてほしかったと思った人も多いだろう。
今回の『マッスルハウス5』は言い換えれば、726夫人追悼興行だった。事前にそう告知していれば観客の反応も違っていただろうが、私は個人的にはそれだったらマッスルらしくないと思っただろう。マッスルはあくまでも“マッスルらしい”やり方で追悼興行を行った。それはそれでいいと思う。
私は都内に住んでいるが、テレビ埼玉が見られる環境のため、テレビ埼玉で放送されていた『マッスル牧場classic』は全部見ることができた。当然726夫人が登場した回も見ている。
その回は坂井さんがフェイクドキュメンタリーというように、726夫人がプロレス特訓をしてプロレスラーになることで、イマイチやる気が感じられない726に喝を入れるという内容だった。番組内では726夫人がレスラーになるために坂井さんやアントンと特訓をするシーンがあったのだが、その中で特訓中に726夫人の爪が根こそぎ剥がれてしまうアクシデントがあった。
それでも726夫人が自らほかの爪を全部短く切り、特訓を続けたいと坂井さんらに直訴していた。フェイクドキュメンタリーとはいえ、このシーンは恐らくガチだろう。私はこのシーンを見て、「うぉ、奥さんスゲーな」と思った。
番組とはいえマッスルの中でこれだけのインパクトを残している時点で、726夫人はマッスル史に名を残すマッスラー(=参加キャラ)の1人である。つまり726夫人の死は、「マッスルの選手の身内の不幸」に止まらず「1人のマッスラーの悲報」である。それならば、旦那や仲間たちが追悼興行をやってもいいと思うというのが個人的な考え。
私はプロレスラーというのは“表現者”でもあると思っている。亡くなった愛妻の追悼興行をこういうカタチでやり、それを見た以上、今後726という人がマッスラーとしても、プロレスラーとしてもどう成長していくかは気になるし、頑張ってほしいと思う。あと、今回の大会に“本気さ”を感じて敢えて手荒い喝を入れにやってきた鈴木みのる選手と高山善廣選手には、本気で「お前ら男だ!」と言いたくなった。
哀しみを川に流して翔ぶのは哀川翔だが、哀しみを思い切りぶつけていき、それをすべて受け止められた上でぶっ潰された726選手の姿には、思わずジーンとした。癌を克服してリングに戻ってきて、何十発もチョップを打って、ムーンサルトまでやって、雪崩式エメラルドフロウジョンを食らった小橋建太もスゲーなと思ったけど、今日リング上で見た726もスゲーな思った。