
前回からの続きで本日もNEWシグナスXにタケガワサンのボアアップKIT組み込みがテーマです。
ヘッドに入っているノーマルカムを外してタケガワKITのハイカムにするのですが・・・
ロッカーアームを外さないとカムはヘッドから抜けません

そのロッカーアームのシャフトが「圧入」で入っています。
これです↓
指で指している箇所の左右がロッカーアームシャフトです。
シャフトの中が中空で穴の入りがM8 の山が立っています。
このシャフトを抜くには、SST(専用工具)が必要ですが・・・・・
これだけのために高いSSTを買うのは個人のユーザーさんには「打撃」ですよね
そこで、今回はSSTが無くてもシャフトを抜く方法で作業します。
用意するのは
ゴッツイステーです。
今回はSSTでクランクセパレーター(結局SSTか!ってツッコミが聞こえてきそうですが・・・少し重めのM8ボルトが通るステーならOKです)
これを下から・・・・・・
上へ「ドン」と・・・
カムスプロケットカバーの当たり面に傷を入れないように注意しながら数回下から上へドンドンやり、ボルトが緩んでくるので手で締め込みながらこの作業を繰り返すとシャフトは抜けます
無事にシャフトは抜けて、ロッカーアームを外し カムが外れました。
左がタケガワ 右ノーマル
「山」の大きさ違いがわかりますか?
リフト量UPもしかりですが、作用角が広がっているのが特徴です。
山が横に広がっているのが確認できると思います。
タケガワハイコンプバージョンのようなピストントップが盛ってないピストンの場合はもう少しリフト量を増やしてもバルブとの余裕があります。
ビッグバルブにすることも有効ですが、リフト量が増えることも有効ですのでタケガワサンよりリフトする(「山」が高い)カムにするのも安上がりです。
ただ、リフト量が増えることでデメリットもあることもお忘れなく!
リフト量・作用角 どちらも高く(広く)なる方向にした分 アイドリングは不安定になってきます。
タケガワハイカムが入りました。
次にピストンをコンロッドへ組む前にクランクケースのシリンダーベースを綺麗にします。
ガスケットをはがす際シリンダーベース面を傷付けないように丁寧に作業します。
やりにくい箇所の場合は この様にコンロットやチェーン等を吊っておくと良いと思います。
ウチの場合、ガスケットを剥がす際「リムーバー」は使いません
ガスケットリムーバーは主成分が剥離剤です。
シグナスXのようにクランクケース自体に塗装が施されている場合、この塗装を攻撃するので地道に剥がします
次に
画像は有りませんが過去の記事にて説明していますが、シリンダーを組む前には必ずシリンダー・ヘッドスタッドボルトの増し締めを行います。
この辺りはタケガワサン・純正サービスマニュアルには記載無き事項ですが、シリンダーやヘッドを外した場合は「当たり前」の作業ですので忘れずに実施してください。
次に
コンロッドへピストンを組み付けます。
作業がちょっと飛んでシリンダーまで組んで有りますが・・・・・
ピストンに注目!
3箇所に黄色い点が入っています。
これは私がマークしたものです。
ピストンには トップリング・セカンドリング・オイルエキスパンダーの3段のリングを組み込みます。
リングを組み込んだらその3つ全てに切り欠きが有りますよね
その切り欠きを上の画像のマークの位置にそれぞれ合わせます。
どのリングをどの位置にとは決まっていませんが、この様に120度づつ間隔を空けてリングの切り欠きをシリンダーを入れていく時に合わせやすいようにマークしています。
エキスパンダーリングはサンドしているリングをエキスパンダー合わせ部よりそれぞれ20ミリ以上左右に振り分けて組んでください。
またエキスパンダー自体が重なっていないか十分に確認をすることもお忘れなく!
実は、このリング組み込み作業も適当にやっているトコが多いのでは?
他でボアアップしてある車両をウチでエンジンを開けてみると結構な確率で切り欠き同士が近くに寄っています。
一度キチンと組めばリング自体はクルクル回るものではありません。
次に
シリンダー組み込み時の注意点です
クランクケースシリンダーベース面のガスケットを綺麗に除去できたら シリンダーを組む前にパーツクリーナーで油分を完全除去してください。
この時使うクリーナーはブレーキクリーナー系をお勧めします。
安いパーツクリーナーですと、この時期は吹き付け後「結露」し水滴が発生します。
ワコーズさんですと用途に合わせたパーツクリーナーが数種類有ります。
クリーナーはクランクケースに直接吹き付けるのではなく、綺麗なウエスに吹き付けてウエスで拭くようにすれば結露することもありません。
シリンダー裏面も油分除去!!
ウチでは組み込み時に液体ガスケットは使いません!
しっかり面出し・油分除去・締め込みトルク管理をすれば液体ガスケットは必要ありません。
次に
ヘッド組み込みです。
タケガワサンの説明書ですと、ヘッドを載せたらカムスプロケット周りを組む前にヘッドボルト(ナット)の締め込みをするようになっていますが、ヘッドボルトは仮組みにして、この様に先にカムスプロケット周りとチェーンテンショナーを取り付けて、テンショナーもテンションをかけてください。
ここからが重要
この状態でクランクをローター側で1回転手で回してください。
回した時に違和感が無いことを確認してください。
この作業でピストン摺動の「芯」を出します。
ローターを手で回しながら、同じく手でヘッドボルト(ナット)を締めていってください。
手だけで締らなくなったらソケットレンチ等を使いそれを同じく手で締る所まで回しながら締め込んでください。
タケガワサンの説明書通りでも不具合が出ることはまずありませんが、こういった作業をすることでより「壊れにくい」エンジンにするべく「壊れない確率」を上げるおまじないと解釈してください!!
ヘッドボルトを締めこむ前のヘッドとシリンダーは重力で下に下がってますよね!
スタッドボルトは長いのでやはり重さで垂れてしまうのです。
シリンダースリーブ突き出し部 クランクケース内に納まる部分は、熱膨張の逃げのためクランクケースのパイ数より狭いのです。
そのため、スリーブ外周には遊びがあります。
その遊びの分だけシリンダー自体がピストン摺動の芯より下に下がっているのを補正するのがこの作業の目的です。
ローターを回しながらと言いましたが、もっと厳密に言うと横置きエンジンのシグナスXの場合は、ピストン下死点から上死点へ向かい始めの位置で増し締めをするのが有効かと思います。
手で締らなくなったら、ピストン上死点にし規定トルクで閉めこんでください。
ナットとカムスプロケットにしてあるマークはバラス前に付けているものです。
ナットのマークついてですが
緩める前と締めこんだ時とで同じ位置に来るか解るようにしています。
何故か?
理由は、スタッドボルトの増し締めを施工したかどうか?の確認のためです。
人間のする作業ですので、忘れることや間違いがあるのはある意味普通ですよね。
その間違いや忘れていることを後の作業で確認できるようにしていれば「ミス」を少しでも減らすことができます。
この場合、条件は
常温室のような場所で、バラス時も組む時も同じ温度ですることが大事です。
この時期ですと特に金属の熱膨張は昼間と夜とでは差が出ます。
ご自身で作業するに当たって、常温室が確保できない場合は一日で全ての作業を終わらせるのではなく、夜間 気温が安定している時間帯に作業し、バラシ・組み付け共に2日間に分けて同じ時間に作業するようにすることをお勧めします。
最後にバルブクリアランス調整をするわけですが、上記記載の通りで、日中の暑い時に行っても全くクリアランス調整はできていないと思ってください。
この時期の「クソ暑さ」の中でやっても熱膨張により、「スッカスカ」なクリアランスになりますので!!(笑)
このバルブクリアランスですが、巷では「エンジンが熱い時にやるのが正解」とか言う方が居られますが、私の見解は
エンジンがアッツアツの状態から作業しても、作業している間に冷めていってしまうのでは?
と思いますし、メーカーが指定しているクリアランスはそもそもエンジンが熱を持って膨張した時のためのクリアランスではないのか?
という考えです。
ハイチューンエンジンなどではこの定義は成立しないこともあると思いますが・・・・
あくまでも「一般的」な答えとしての見解です。
皆さんはどう思われているのでしょうか?
ハイチューン・現代のスーパースポーツ系では
インナーシム化で チタンシム・カバーを使い熱膨張を抑えるパーツも有るのでこの様なエンジンの場合は上記の限りではないと思いますが・・・
余談ですが・・・
「チタンカム」って存在するのでしょうか?(笑)
有ったらすごいですよね!!!
割れやすい素材で強度の確保とか今の技術ではできないように思うのですが・・・・
もしも とっくに出ていたらすいません
何分古い人間なもので・・・・(笑)
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