ガソリンエンジンは発明当初こそ信頼性に問題があったが、この点は自動車本体が誕生していたこともあって、比較的早い段階でかなりの改善が見られた。以後の自動車の発展を担うことになるアメリカでは自動車が誕生した初期のころは、自動車は上流階級やマニアのスポーツレジャーの対象となっていたから、当時の自動車マニアにとっては、各地で開催されだしたスピードレースに勝つ車こそ人気の的であり、騒音や排気ガス、操縦の容易さはあまり問題ではなかった。騒音などはむしろ歓迎されたくらいである。こういった背景より、その存在能力を認められていたガソリンエンジンは開発の的になり、その性能は飛躍的に発展していくのである。こうして、ガソリンエンジンの性能、信頼性が上がるにつれ、1900年を境にスピードレースで次々とガソリン自動車が優勝するようになった。ガソリンエンジンの性能や信頼性の向上は、何よりも、シリンダーやピストン、そしてピストンリングといった、ガソリンと空気の混合ガスを燃焼、爆発させる機構の精密な加工技術の向上に負うところが大きい。ガソリン自動車の発展は先の時代背景とともにこのような加工技術とこれを支える資産システムや工作機械の発展が、この当時アメリカで一斉に開花したことが、ガソリン内燃機関という、当初は気にもとめなかった技術を急速に発展させることになったのである。 そして、ガソリン内燃機関の精度と信頼性が急速に高まった20世紀初頭に、テキサス州で大油田が発見され、他方で石油産業の製油技術の向上も見られ、ガソリン自体のコストが以前より格段に安くなったことにより、ガソリン自動車の地位は揺るぎないものとなっていったのである。この章では自動車の誕生を中心に書いてきたが、第2章では自動車産業がどのようにして現在のような巨大産業に成長してきたかについて記していきたいと思う。