
先月26日、93歳で亡くなられたアルゼンチン出身の作曲家、ラロ・シフリン氏の作品をいくつか。ラロ・シフリンの名前を知らなくても、映画を普通に見られている方は、氏の作曲した音楽を耳にしているはずです。映画音楽の作曲、編曲の分野においては巨匠と言って間違いない音楽家です。
僕自身も、自分の映画鑑賞歴と照らし合わせてみて、かなりの数のシフリン作品を耳にしていたことがわかりました。
『シンシナティ・キッド』『ブリット』『ダーティ・ハリー』『シノーラ』『燃えよドラゴン』『セント・アイブス』『エアポート80』『おかしなおかしな石器人』などなど。
最初に来るのは映画『ミッション・インポッシブル』シリーズの、あの有名なテーマ曲ですかね。トム・クルーズ主演のアクション・スパイ映画ですが、実は60年代の幼少期、すでに耳にしていました。テレビから流れた音楽として耳にこびりついていると言ったほうが正しいのか。日本でも放送されていた、『スパイ大作戦』と邦題のついたテレビドラマで、映画『ミッション・インポッシブル』のベースとなったドラマシリーズでです。
内容はほとんど憶えていなくても、ドラマ冒頭のテープによる指令部分が終わった後の "なお、このテープは自動的に消滅する" の日本語によるセリフは忘れようもないですからね。テーマ曲はスパイアクションにぴったりの、パーカッションとホーンのダイナミックなアレンジが秀逸な曲です。秀逸などと言うのは実は失礼な言い方で、今聴くとまさにプロの音楽家の仕事と言ったほうが良い曲だと思います。
僕の世代だと、ラロ・シフリンと言えば『燃えよドラゴン』のテーマ曲のほうですね。ブルース・リーが大スターとなりカンフー映画ブームの引き金にもなった映画のテーマ曲です。
ブルース・リーは凄いブームになりました。社会現象と言ってもよいほどのブームでした。 中学時の3年間ぐらいと重なったのですが、授業の休み時間になると ”アチョー" とか "オチョー" とかの怪鳥音が廊下に飛び交うんですね。長い学ランを着たスタイリッシュな不良たちは、その学ランの大きなポケットに自作のヌンチャクを忍ばせて、”アタッ" などと叫んで振り回し、自分の顔にぶつけて "イタッ" となるわけです(これはホントの話です)。
当時、その成り切りドラゴンたちの頭の中で鳴っていたのが『燃えよドラゴン』のテーマ曲です。東洋的な匂いをまぶしたアレンジに、メロディの展開も素晴らしい曲です。 ラロ・シフリンは、ジャズ・ピアニストとしてキャリアをスタートしたそうですが、そういった資質がうかがえるジャズでロックでグルーヴィーな楽曲です。 "映画の世界的なヒットを後押しした曲" という表現では足りないぐらいに、この曲の果たした役割は大きかったと思います。この曲のない『燃えよドラゴン』って、想像できないでしょ。(*^^)v
