カセットテープ・ダイアリーズ | Get Up And Go !

Get Up And Go !

音楽を中心に、映画、文芸、スポーツ など・・・。

より高く! より深く! けれど優雅に・・・ 冗談も好きなんですけどね (*゚.゚)ゞ







カセットテープ・ダイアリーズ(原題: BLINDED BY THE LIGHT)( 2019 / イギリス )
● 監督・制作:グリンダ・チャーダ
●原作 : サルフラズ・マンズール
〇 出演:ヴィヴェイク・カルラ / ネル・ウィリアムズ / ヘイリー・アトウェル / ディーン = チャールズ・チャップマン / アーロン・ファグラ



ストーリー 本
舞台は1987年のイギリスの小さな町・ルートン。 パキスタンからの移民であるカーン一家の長男・ジャベドは、閉鎖的な町での露骨な人種差別によって、鬱屈した日々をおくっていた。

保守的な父親の価値観の支配する家庭にも嫌気がさしていたジャベドは、ある日 同級生で同じムスリムである友人・ループスから、ブルース・スプリングスティーンのアルバムのカセットテープを渡される。 自分の気持ちを代弁するかのようなスプリングスティーンの楽曲に大きな衝撃を受ける。

聴くものを奮い立たせる歌詞によって、ジャベドは変わり始める。 やがて自分の言葉で表現するという、もともと持っていた才能が開花し始め、理解者も現れ、ジャベッドは文章の世界で生きていくことを決心する。





カチンコ
青春音楽映画はとても好きなので、劇場公開時に逃さず観るようにしています。 今年4月公開予定であった作品 『カセットテープ・ダイアリーズ』が、この7月にようやく公開となりました。 海外では評価が高いようで楽しみにしていましたが、期待を裏切ることなく楽しめる映画でした。 ブルース・スプリングスティーンが好きであるということも、その大きな理由だとは思いますが。

原題は "BLINDED BY THE LIGHT" ですが、日本語タイトルは 『カセットテープ・ダイアリーズ』 となっています。カセットテープで育った世代がつけたものなのか。スプリングスティーンの曲タイトルである原題でも良かったと思うのですが。




Blinded By The Light (1973)
邦題は「光に目もくらみ」。 マンフレッド・マンズ・アース・バンドのよるカバーは、76年全米1位となっています。


大雑把に言うと、ブルース・スプリングスティーンの音楽に影響を受けた少年の成長の物語です。 成長していく過程で、1987年のイギリスの移民排斥、人種差別の問題が絡んでくるところが、この映画を単なる青春映画に留まらせていない、そして評価を高めることとなった理由のひとつでしょうか。

原作者のサルフラズ・マンズールはパキスタン出身のジャーナリストで、彼の回顧録をもとに映画化された作品です。そして監督のグリンダ・チャーダは、ケニア出身のインド系の女性。同じような経験を持つ二人の共通項はブルース・スプリングスティーンのファンであるということ。スプリングスティーンの楽曲がふんだんに使用された、まさに "スプリングスティーン映画" です。






それにしても、1987年のイギリスで移民の問題や人種差別の問題が、こんなにも激しい形で存在していたとは知りませんでした。現在の欧米の状況と重ね合わせて見てしまいます。 イギリスは階級社会であるし、人種差別の問題もあるとは思うのですが、紳士の国・イギリスではもっと穏やかなものだと思っていたので。

主人公のジャドは、差別、文化の違い、親の価値観との違いなどの様々な困難を、スプリングスティーンの放つ詞に後押しされながら乗り越えていきます。 国も文化も違うアメリカ人ロックシンガーの歌ががきっかけとなって、自分を見つけていくわけです。 おそらくここがこの映画のポイントかと。 ですが、けっして堅苦しい映画ではありません。そこは、スプリングスティーンの楽曲の持つ、人を高揚させる何かが、それぞれの場面をキラキラとした場面に変えてくれています。 いくつかの曲は、歌に合わせて演じたり踊ったりのミュージカル調になっていて、ブルースの曲は青春ミュージカルに合うんだなと。 これは発見ですかね。




Born To Run (1975)
日本でもこの曲に影響を受けたロックミュージシャンは多いと思いますよ。


"こことは違う場所。 自分にとっての約束された場所があるはずだ"
それは "夢" という言葉に置き換えられるのかもしれませんが、それを青春時代の通り過ぎたこととしてしまうのではなく、どこかに持ち続けていたいとも思います。現在も良作を発表し活動を続けるブルースは、現在の作品も過去の作品も変わらずステージで歌い続けています。