「ゲームチェンジャーズ」は楽しんでいただけてるでしょうか？

ツグミちゃん、仲間たちはこれからどうなっていくのでしょうか。楽しみですねえ～。

さて、今回は久しぶりに障害者の幸福論シリーズの続きになります。

なかなか難しい問題で進みが遅いですが、みんなで頑張って考えています。

＊　＊　＊

「生命と尊厳の維持に他者の同意と協力が必要」という特殊な基本構造に置かれている場合、一般的な幸福論は通用しないのではないかと考えました。

それが”障害者の幸福論”の出発点です。

今回はそのまとめ作業として、その特殊な基本構造というのは具体的にどのような状態であるのか、またなぜ普通の幸福論が通用しないのかを考えてみたいと思います。

まず「生命と尊厳の維持に他者の同意と協力が必要」というのは長いので、”限定された自己”という意味で「限定自己」と名付けます。

その限定自己の状態とはどのようなものかを把握しやすいように、マズローの欲求5段階を参考に図にしてみました。

＜図の解説＞

一番下の段が、「生命」の維持に他者の協力が必要な状態。つまり、自分単体では短期間で命を失う状態です。人工心肺装着者や栄養を自力で摂取出来ない人を想定しています。

真ん中三段が「尊厳（排泄・飲食・移動）」の維持に他者の手が必要な状態。
この飲食は一番下の段と違い、自力で嚥下はできるけど、口まで運んでもらう、もしくは目の前に用意されないと摂取が難しい人を想定しています。

そして一番上が、生命と三つの尊厳は自分で維持できるが、「精神状態の安定」に他者の協力を必要としている場合です。例えば、定期的な薬の服用が必要な場合や、社会生活に福祉や他者の配慮を要する場合などです。精神障害、軽度知的障害、コミュニケーション障害を持つ人などがここに含まれると考えています。

そして、それぞれの段は上位の段を含むという意味を持っています。
つまり、下四段の肉体的限定は、一番上の心理的限定を含むという図になっています。

＊　＊　＊

肉体や精神に自由がない限定自己。

それをもって一般的な幸福論が通用しないとはどういう理屈でしょうか。

その前に、一般的な幸福論とはどういう物かを考えてみます。

私が考える一般的な幸福論は、簡単に言うと「苦悩からの解放」という事だと思っています。

つまり、自分の思い描く理想と現実の乖離からの解放。

これは言い換えると、利己的な思考からの解放と言えないでしょうか。

だとすると、他者の手助けが必要不可欠な限定自己では利己的な思考が避けられず、そこからの解放は構造上なされないので、結果、そのようなものを目指す幸福論は適用できないという理屈です。

＊　＊　＊　

限定自己は構造上利己的な思考になるとは

限定自己は生命と尊厳を維持するため、常に他者の行動をコントロールする必要があります。

それは時には相手の都合を一切無視する必要がある。これは言い方を変えると、限定自己は常に利己的な状態を維持する必要がある、ということだと思うのです。

つまり限定自己は、一般的に幸福感を得ることができるといわれる「利他」では、生命の危険を感じたり、尊厳を一部放棄する必要が出てくる。

しかし生命や尊厳とトレードオフの幸福というのはあり得るのでしょうか。

それはいわば、マズローの欲求五段階説の下から二段の「生理的欲求」と「安全の欲求」を満たしていない状態で幸福を目指すということになります。

一般的な幸福論は、そのような生きる上での根源的な部分に不満を抱えた状態での幸福追及を全く考慮していないと思うのです。

一般的な幸福論はマズローの図で言うと、少なくとも物質的欲求から努力で抜け出せる人を想定していて、そのうえで、自分の理想とする状態を目指すために、社会的欲求、承認欲求、自己実現の欲求とどう折り合いをつけるかという物だと思うのです。

これが一般的な幸福論が障害者に通用しないと思う理由です。

次回以降の障害者の幸福論シリーズで、この物質的欲求に不満を抱えた状態である限定自己での幸福論を考えていきたいと思います。

第2-77話 障害者の幸福論まとめ１「限定自己」

第2-77話　障害者の幸福論まとめ１「限定自己」