早坂伊織さんのブログ「着物魂」 より。
着物を普通に知っている人には当たり前のことなのですが、着物というのは反物と呼ばれる細く長い着物用の生地を、8つのパーツに巧みに切り分け、それらを縫い合わせることで一枚の着物としての姿になります。洋服と大きく異なり、着物というのは、縫い合わせた糸を解き、全てのパーツに分離した後も、切り分けた通りに並べなおせば、驚くべきことに、また元の一枚の布の形になるのです。
この事実は、驚嘆すべきことであり、人間が着ることを目的とした衣服の構造としては世界でも類を見ないデザインです。このような衣類としての完成度の高さは、世界的にも周知されており、有名なファッションデザイナーであるピエール・カルダン氏の逸話として次のような話を耳にしたことがあります。彼はかつて日本のある企業から、日本の着物をアレンジした服をデザインして欲しいとの依頼を受けましたが、前述したような着物の事実を知った彼は、「これほど完璧な衣服は見たことがない。」と言い放ち、「こんな完成度の高い衣服をどうデザインしなおせというのか。私にはハサミを入れることなどできない。」と、その仕事の依頼を断ったのだそうです。
さらに
古くなった着物を仕立て直すとき、バラバラにした生地は、傷んだり色あせたりした部分を、上下をさかさまにしたり、下前と上前の生地を入れ替えたりして縫製しなおすことで、十分着用できる状態に復元することができるように考えられています。そうした手法以外にも、着物の仕立て方には、最初から後日のサイズ調整や布の繰り回しを見越した工夫が織り込まれており、着る人と共に、最後の最後まで活用することができるように作られているのです。月並みな表現ではありますが、着物こそ究極のリサイクル技術が導入されたエコロジーな衣料と言えるでしょう。そうして何度も再生を繰り返して着潰した着物は、おしめや手拭い、雑巾となるまで最後の最後まで使い切るのです。
着物は日本人の叡智の結晶ですね。誇りを持って普段から着たいものです。ヽ(´ー`)ノ