「○○ちゃんが、大好きだった
中村吉右衛門さん、天国に召されたね…」


ずいぶんご無沙汰していた友達が
ラインをくれました


私は、20代半ば
吉右衛門さんが大好きでした




そして吉右衛門さんが演じた
池波正太郎さんの鬼平犯科帳も大好きでした
主役の長谷川平蔵が吉右衛門さん
小説のイメージそのものです



後にも先にも、こんなカッコいい時代劇を
見たことがありません








長谷川平蔵は
放火や博打、盗賊の捜査や検挙にあたる
火付盗賊改方


良い人が
ふと悪事に手を染めたり


悪党だけど
つい良いことや、優しいこともしたり…


善悪の狭間でゆれる
人の矛盾をも


人情味あふれる裁きで
人の心にあたたかさを残す



辛酸を舐め尽くし
人生の裏表も知り
清濁合わせのむ


これぞ、
大人の中の大人!
男の中の男!


吉右衛門さんも平蔵のような人になりたい
と言われていたそうです





TVだけでは飽き足らず
鬼平犯科帳の舞台にも行きました



吉右衛門さんの一挙一動に惹きつけられる
圧倒的な存在感でした


心情のきめ細やかな表現で


何げない仕草、ふるまいも
特別な空気が纏っているよう


颯爽とした太刀さばきは神業


忘れられないのは、平蔵が
夜空の満月をみあげたシーンの後ろ姿


ただ、佇んでいるだけ
背中だけで表情は見えないけれど


平蔵が眺めている江戸の街が
こちらの目にも浮かび
今にも江戸の風が吹いてくるよう


演技というより
吉右衛門さんの人としての
計り知れない器の大きさ
底が見えない深さがにじみ出て


ただ、ただ、見惚れるばかり…





そして、その感動から数ヶ月後
思いがけず、嬉しい出来事が!




京都の四条河原町の交差点で
信号待ちをしていました




青になって、横断歩道を歩き始めたら




ん? 真ん前からダンディな男性が…




な、、なんと、
吉右衛門
さん‼️
 

一歩、一歩、吉右衛門さんが
近づいてくる




うわ〜
どうしょ、どうしょう〜〜〜



そして、すれ違った瞬間




私は無意識に
くるりとUターンして




吉右衛門さんの背後へ




( こんな、ストーカーみたいな、
迷惑な、失礼なことしてはいけません! )




しかしながら
若気の至り



吉右衛門さんの3メートルほど後を
てくてくついていきました



吉右衛門さんは
ダークブラウンにワインレッドの入った
仕立てのいいツイードジャケットを
お召しになっていました



その後ろ姿は
舞台で拝見した
あの悠然とした広い背中



私と吉右衛門さんのあいだには
初冬の冷え渡った空気のみ




あぁ〜 感動✨✨✨



…と、夢見心地に浸っていたのは
1分ほどでした





吉右衛門さんは、すぐ近くの
パチンコ屋さんに入っていかれました




そしたら、私も、、、
とは、さすがに入れませんでした




南座公演の合間の息抜きだったのでしょう




もう30年も前のことですが
あの時のドキドキは忘れません




こんなに深く感動や喜びをもらえる方は
何が違うんでしょう




どれだけの鍛錬や苦労をすれば
こんな人としての厚みが生まれるのでしょう






( 中村吉右衛門 播磨屋 画がたり より)