人が生まれた時、最初に仙骨が動く!
人間の体にとって、呼吸をするということは生命を維持するために絶対欠かせないことで
あり、産声を上げてから死に至るまで、長期にわたって繰り返される体の大切な仕事で
あります。人間の誕生は極めて厳粛なものです。新生児はオギャアーと第一声を大きく
発することにより、胸部が拡張し、肺が広がり、空気を体内に充分に取り入れようとします。
この第一声こそ呼吸の始まりなのです。
母親の胎内にある時には肺は使われず、臍帯(へその緒)を通して必要な酸素を母親から
直接もらっているわけですが、母親の子宮から出始め、狭い産道を通過する間は母親から
何ももらえず、胎児は酸素不足に陥っているわけです。胎児の血液中には当然のこと、
炭酸ガス(二酸化炭素)が溜まった状態になります。酸素不足によって呼吸中枢が刺激され、
母親の体外に出ると同時にオギャアーの第一声を発するのです。
時に、産道を通過中に胎児の口や咽喉に粘液などが詰まることがあり、この第一声を発せず
、上手に呼吸が出来ない場合もあります。こういう時には、昔は産婆が新生児の足を持ち、
逆さにして背中を叩いて粘液などを吐き出させましたが、現在では口腔内に直ちにゴム管を
入れて気道をスムーズにする処置がとられています。それで第一声も元気に出て、肺が大きく
広がり、呼吸もスタートするわけです。
そもそも胎児は母親の子宮内にいる時は羊水の中で生活をする、いわば水棲動物の状態
から、出産によって肺呼吸をする陸棲動物に変化することになります。
ところでこの呼吸についてですが、新生児の呼吸はほとんどが腹式呼吸で、胸で呼吸する
ことはまずありません。腹式呼吸には横隔膜が補助作用し、呼吸を助けていると証明したのは
アメリカの著名なカイロプラクティック・ドクター、デジョネット博士でした。
腹式呼吸は 「骨の運動」 であり、人間が生まれた時に仙骨(骨盤の中心をなす骨)が最初に
動くことによって呼吸の第一歩が始まり、死ぬ時にも、息を引き取る瞬間に動くのがこの仙骨
であると、彼は解説しました。
-次に、この仙骨と横隔膜の作用に関して詳しくお話をしたいと思います。-
さて、呼吸の始まりに対し、呼吸の終わりの仕組みはどうなっているのでしょう。
人間の誕生は実に神秘的なものでありますが、生命の終わりもまた厳粛な儀式といえるの
ではないでしょうか。生命の終わり方にも色々あって、長寿をまっとうする人、病気や不慮の
事故で亡くなってしまう人、自ら命を絶つ人、まさに人間の運命は神のみぞ知るところであります
が、最後の息を吐き出すことによって(呼吸の仕事が)終わる死の瞬間は誰でも同じです。
私が叔父の死に立ち会った時も、慢性呼吸器不全で肺炎にかかり約1ヶ月の闘病の結果、
力を使い果たし、最後に大きく息を吐いて一生を終えたのを鮮明に覚えています。
人間の体の機能が弱ってくると筋肉などの付随するものが働かなくなります。すると、
運動神経が働かなくなり、呼吸の作業が極めて困難になってきます。体の機能が停止し、
まったく呼吸が不可能になった状態、それが死を意味します。単に死ぬといっても、体の内部
にはこうした動きがあるわけです。
人間の一生は息を吸うことで始まり、息を吐き出すことで終わる。その間、呼吸を
持続している時間が生命を維持しているということです。
無意識のうちに行っている体の基本的な仕事、呼吸運動の大切さを私たちはもっと
知っておきたいものだと思います。