役者は暗い観客席に、東京だから、知り合いが来ていたと思われるが、スッと青い光が彼の目から発せられるのを目撃した。
2回 発せられた。相手は解らないがきっと魅惑的な女性がいたのかもしれない。
嫉妬心で言っているのではない。
想像だ。
彼はどちらかと言えば小柄だが、舞台に上がると大きくて迫力が出るのに、他では演じることに関係していないようなのだ。
若い時には、色々とオーディションを受けたりして、頑張っていたらしいが実現しなかったとも聞いた。
江戸時代までの旅公演の役者の技術をこっそり身につけていたのではと推測した。
しかし、それが世間からもてはやされる役者になれるかと言えば、否である。
歌舞伎役者の誰か?は継承しているかもしれないが、(大見得などの時、目を見開いて会場を見渡す等)あいにく、歌舞伎に出かけるほどの金持ちではない。
眼力(めぢから)の本当の極意とも言える青い光がスルスルと観客席に届くのを思い出すと、今でも、秘密であろうそれに興奮する。
芝居も物創りも秘密の極意がある。
探究心と精進を持ち合わせつつ、今もなお、高みを狙ってギラギラと心の炎は燃え上がってくる。
守 鏡丸とは次の年、東京は新宿で友人の家に泊まらせてもらいながら、初めて、二人だけでコーヒーを飲んで、サヨナラの儀式をした。
三十五歳、若き日の仕事に夢中の日々の事だった。