ミッテイ・コリア(Mitty Collier)、過小評価も甚だしいソウル歌手の一人。

活躍期(60年代)には日本での紹介は無く、P-Vineがチェスを獲得した時の大々的な発売計画にも入れてもらえず、マニア向けでLP復刻がアナウンスされたが、結局未発売!なんとも不遇の人です。(当時)唯一のLPも入手困難状態でまさに”幻”といってよい存在でした。というのは、ちょっと意地悪な表現で、実は1969年に当時チェスの権利を持っていたビクター・ワールド・グループから発売のオムニバスLP中に1曲だけひっそりと収録されていたのが日本デビュー。しかも最高傑作とされる「Everybody Makes A Mistakes Sometime」の収録。私も後年知り、驚きました。2枚組の豪華盤でジャケットには写真も無く、どさくさでの収録だったのかな?ワールド・グループ1969年4月号月報に掲載されているSJET-9153/4 『豪華盤「R&B大全集」~シカゴ・サウンドのすべて』というタイトルで全24曲入り。ビクターはモータウンからのヒットがそこそこあり、R&Bには力を入れており、その絡みでチェスも出されたのだろう(多分、大御所桜井ユタカ氏の尽力)。佐藤修氏が72年に初代洋楽宣伝課長に就任されスタイリスティックスなどで爆発的ヒットを取り、”ニュー・ソウル”のビクターと呼ばれる前の時代(なので、ひっそり・・・)。

 その唯一のアメリカ盤LPも、初版はミッティ・コリアの歌っているポーズ写真をあしらったものだったが、別人の写真!だったので発売前に急遽差し替えられ、なんとも味気ないデザイン(やっつけ仕事か?!)のものとなりました。どこまで不運なんだ・・。70年代は5桁で取引されるレアLPで、ミッティを聞くのは至難の業。オリジナル・US・シングルも入手困難(というか輸入盤シングルは流通も微量、個人輸入でしか入手できないような状態・・)。友人が持っているオリジナルLPをカセット・テープにダビングしてもらい愛聴していました。その後、オリジナルLPもゲットしたが、今回のテーマはLP発売の切っ掛けになった曲「I Had A Talk With My Man」にまつわるあれこれ・・・。前置き、長すぎ・・・。

 

 その後80年代中頃にChessの権利を持っていた米MCAからLPの復刻が始まり、このLPも回収された最初のジャケットでの復刻となり、喜々として入手しました。さらに、CD時代になり、チェスの再評価というかCD化が始まり、1998年に権利を持っているユニバーサル・ミュージックからChess Legendary Masters Series の1枚としてUMD 80561『Shades Of A Genius 』が発売されました。オリジナルLPと同じタイトルですが若干曲目が違い、追加曲も含めて全22曲とチェスのキャリアの前半部分(ほぼ半分)が集められています。これでようやくミッティ・コリアのソウルに浸れる!と思ったが、入荷数が少なかったのか入手が難しく、手元に届くまでにかなり時間がかかり、確か九州の輸入レコード店の通販でようやく入手した記憶があります。この時期のリイシューの内日本盤CDも多く出ましたがミッティはスルーされ、唯一の専門誌ブルース&ソウル・レコーズも輸入盤レビュー無しというのけ者扱い・・・どこまで続く不運の道。かわいちょ。

  UMD 80561『Shades Of A Genius 』

 

 さて、ここからが本稿の肝(そんな大げさな物じゃないけど・・・)ですが、CDプレイヤーから流れてきた1曲目(LP作成のきっかけとなった大ヒット)「I Had A Talk With My Man Last Night」(CDの記載!)を聞いてブッ飛んだ!!教会丸出しのゴスペル調!なんと最初に吹き込んだといわれるプロト・タイプ(シングルとは別バージョンなのです。(タイトルに”Last Night”が付いてる!)これには絶句!何回も聞き直しました。ここでその盤のレビューが掲載されているレコ・コレ(99年4月号)を引っ張り出してきて確かめたのですが・・・・、なんじゃこりゃ!

 このスゴイ発見には一切触れておらず、『・・といっても、有名な①(注:この曲)はやはり名作ですがね。』といたって冷静。こいつこのCD聞かずにレビュー書いてるな(要するにやっつけ仕事!)と手抜きが見え見えでした。レビュー前半でP-Vineの企画が頓挫した経緯に触れているが、『彼女の作品で日本に紹介されているのは、その後のピーチトゥリーのサザン・ソウル時代のものだけのはず。』と上記2枚組の件には触れず、その時の紹介曲「エヴリバディ・メイクス・ア・ミステイク」は、『聞きたかったな。』とレビューを締めくくっている。オイオイ、そんなに聞きたかった曲は既に日本で紹介されてまんがな、おっさん。本当にトホホなレビューでした。(この方ミッティ嬢のことがお嫌いなのかな?)

 

    

Chess 1907 DJ Copy     同 別レーベル(Monachプレス、スチレン盤)

 

 当ブログ記事、これだけで終わる訳もなく、97年にChess50周年に出されたCDの中にオムニバスの『Chess Soul』という2枚組がありましたが、その中にこの「I Had A Talk With My Man」も収録(CD-1の8曲目)、まあ大ヒットなので当然か。またしてもビックリ!!でした。ミックスが違ってる!ストリングスやオルガンなどが後退しベース、ドラムスのリズム楽器が全面に出るミックスになっていました。このCD用に新たなミックスをした?イヤイヤそんな細かいことするハズもないでしょ。

  輸入盤CHD2-9388 (国内盤発売もあります)

これはきっと何かあるに違いない!とにらんだアタシは探索の旅に・・・出ました。そして発見!、おなじみのブルーのグラデーション・レーベルの同曲盤にそれが入ってました。オリジナルは黒地にカラーのチェスの駒か黄色とオレンジの矢印がCHESSに向かうデザインの盤(上の写真参照)です。聞いたらCDと同じバージョンでした。

 

 レーベル部分が凹んだChess CH-1907!!

何時かは分かりませんが、時代に合わせたアレンジ(ミックス)で”ヒットよもう一度計画”があったのかもしれません。しかもこの盤は、ローラ・リーの「Dirty Man」のシカゴ・バージョンが入った、レーベル部分が凹んでいる盤と同じく真ん中部分が凹んでるもの。ランアウトの寸法も異なる別物(オリジナルはTM1014だが、こちらはTM5408とかなり後年のもの)。この頃何か見直しプロジェクトでもあったのだろうか?この形状の盤は侮れません。新たな謎が出てきた、というところで今回はお開き。

(と言うことは、次回は、Laura Leeなんだな?←分かり易くてスミマセン・笑)