ここで突如謎のリリース、LR-1488(66年4月5日発売)の「悲しき雨音」/「悲しき北風」が浮上してくる。なぜWBレーベルでシングルを出していたカスケイーズがリバティ・レーベルから往年のヒットカップリング・シングルを出したのだろう?WBと間違えた?イヤイヤ、そんな間抜けなイージー・ミス、発売までに気付くでしょう。アソシエイションのヴァリアント関連から見えてきた日本発売事情を念頭に、第二回を投稿します。

 

このあえて自社他レーベルからのリリースの事情を推測・解明してみようと思う。

ヴァリアント・レコードがWBの傘下から離れた時期にアソシエイションはブレイクした。

キング・レコードの担当者は、ロンドン・レーベルのリストにヴァリアント・レーベルを見つけ発売しようとしていたのが66年の秋、その1年ほど前65年、東芝は夏に向け一大再発プロジェクト(R-1320から1410までの約90枚)を計画した。

この再発プロジェクトは、契約レーベルをR-1000シリーズで統一管理しようとする前に、各社独自採番で発売曲中息の長いベスト・セラー物を組み込んで再発しようとしたもので、キャピトル37枚、オデオン(旧エンジェル)30枚、リバティ9枚、WB7枚、キャップ5枚(?)、ステーツサイド3枚(?)が予定されていたようだが、ステーツサイドのような単発契約のものはすでに権利消滅していたようで、キャピトル1枚、WB1枚、キャップ枠なのかステーツサイド枠なのか不明だが3枚の計5枚が欠番となっている。WB枠の欠番1399はDiscogsには(真偽のほどは不明だが)「悲しき雨音」と記録されている。当初予定に入れたが、ヴァリアントはこの時点でWB傘下になかったことが判明し、発売を断念したのだろう。ちなみに、WBの日本発売は1960年8月15日の日本コロムビアからが最初で、傘下のヴァリアント物はシェルビー・フリントWB-15、33、48の3枚のみ、その後62年東芝に移動しカスケイーズくらいしか売れていなかったし、担当者はカスケイーズがRCAに移籍後のヴァリアントの状況には注意を払っていなかったのだろう。

63年3月

 

本国でのヴァリアントの旧譜権利がどうなっていたのかは分からないが、WB傘下時の6000番台のシリーズは1964年に6062番で終了、WBの後を引き継いだのは、フォー・スター・テレヴィジョンという会社。700番台に移行し、最初の10枚は旧譜の再発用に充てられ702番でカスケイーズの「悲しき雨音」/「レット・ビー・ミー」を発売、何故か706からはキャンセル、飛んで711番が1965年に出され66年の739番まで出したようだ。未発売分はWBと旧譜の権利でもめ中止になったのではないだろうか?アトランティックとスタックスの関係のように大手とマイナーの旧譜の所有権はもめることが多い。

そして65年、アソシエイションのOne Too Many Mornings / Forty Times V-730 が出、66年のV-739でフォー・スター・テレヴィジョンの傘下は終わり740からは独立レーベルとなった。そしてV-741Along Comes Marのヒット(6/4付ビルボード誌初チャート、7/16付7位最高位の大ヒット)が生まれた。この独立時点で米ロンドンが海外の発売権を獲得したと考えるのが妥当だろう。そして、キング・レコードはロンドン・レーベルで発売をしようとしたが、何か不確定要素でもあったのだろうか・・・月報記載後の発売中止。(正式権利発生の時期?)

 

東芝もこの65年の再発計画時に「悲しき雨音」がラインアップに上がっていなかったのはもう需要消滅とは思ってなかっただろう事は、66年4月のリバティからの謎のリリース、68年5月のWBへ戻しての再発BR-1893、更に69年の来日時に(68年の米軍キャンプとナイト・クラブ出演に続いて2度目だが、今回は米軍キャンプのみにもかかわらず!)わざわざ単発契約して別録音の「悲しき雨音’69」SR-2251を出し、70年にもBR-2620も出したことからも担当者にとっては、いまだに商売になる重要作だったのが窺える。WBがワーナー・パイオニアからの発売となった時も2回(P-1500、150)も再発されている事からも分かる安全パイ。

68年5月発売時はカスケーズとなっている。ジャケットも7B-14のイラストを意識?

 

69年5月、再録音で、雷の音は無い寂しいバージョン

 

70年10月のまたまた再発物、写真は新しそうだが、メンバーの心境は如何に?

 

再発でベスト・セラーの「悲しき雨音」が出せなかった東芝は、ヴァリアント以降RCAで少しヒットした後マイナーを転々としていたカスケイーズが、65年にリバティと契約しシングルを出した(Liberty 55822)のに便乗し、リバティからヴァリアント時代のベスト・カップリング「悲しき雨音」/「悲しき北風」を(再吹込みでもいいから)発売しようとしたのかもしれない。ところが、リバティ在籍は往年のヒットの再吹込みもないまま、リリースはシングル1枚で終わってしまったようだ。

ここから、独断と偏見に満ち満ちた妄想だが、もしかして旧譜の権利はカスケイーズにあるのではないか?の一縷の望みをかけリバティ社を通して確認、また往年のヒット曲の再吹込みの音源もリクエストしたのではないか?はたまたフォー・スター・テレヴィジョンとのワンショット契約も試みたかもしれないが、上記の様に微妙な時期・状況でフォー・スターとの関係も流動的。その辺グレイなまま自社で持っているWB時代の音を現在の在籍レーベルのリバティの商標を使って再発に踏み切った・・・・。盤を見ると、ラン・アウト部分には、A面100096、B面1000127の刻印が!!これって、7B-14、7B-24に刻印されているマトリックス(原版番号)じゃぁあ~りませんか!超豪快な荒業!コンパクト盤の曲もWBのLP収録曲だ。グループに旧譜の発売権がある!と信じたのか?アソシエイションのブレイクで旧譜カタログ全て買収後WBで再発しているところを見ると、グループには旧譜の原盤権などなかったように思えるが・・。

やっちまったな!担当者。

アソシエイションの大ブレイクでここが潮時と見たかヴァリアントはWBに完全身売り、買収も済み旧譜の発売も権利関係がクリアになったことで東芝はアソシエイションのBR-1877「恋はタッチに御用心」のリリース(4月1日)後、5月1日にBR-1893「悲しき雨音」/「悲しき北風」を(今度は堂々と?)再発している。

 

後半はおぢさんの妄想なので唯一の確証は、LR-1488のマトリックス刻印しかないのですが・・・。アソシエイションの発売経緯を調べていて、妙に辻褄があったので記事にしてしまいました(笑)。

 

おまけ:ワーナーブラザーズ・パイオニアからの再発シングル(71年6月)

この写真って、東芝からの70年の再発BR-2620と同じ服装!なので、その当時の宣伝用写真の1枚かな?しかもこっちは(シャツと時計から分かる)裏焼き!

やっちまったな!ワーナーブラザーズ・パイオニアさん。とオチが付きめでたく完了しました(笑)