昨年12月中旬、こんな記事を読んでいました。
『仏で今年8月に放送され、あまりの好評に6回も再放送された日仏合作のドキュメンタリー映画「千年の一滴 だし しょうゆ」が2015年1月2日に日本公開される。』(※1)
和食に欠かせない「だし」(出汁)と「しょうゆ」(醤油)をテーマにしたドキュメンタリー映画となれば、グルメ志向のボクはとても気になります。(爆)
今年1月2日に日本公開とあるのでどこで上映されるのか知りたかったのですが、それなりにアンテナを高くしても電波(=情報)が届かないみたいでわかりませんでした。(泣)
こうなると自分で調べるしかないが、ディズニーランドでのカウントダウン、同窓会(中学と高校)、人間ドックなどの予定があり、それらが終わらないとどうも調べることに身が入りませんで後手に回ってしまいました。
1月13日頃だったろうか、仕事の合間にインターネットで検索してみたら、さほど悩むこともなくたどり着いてしまいました。(汗)
困ったなと思ったのは、上映館が関東(地方)では都内と横浜の2ヶ所だけだったことです。
ちなみに、横浜は2月21日からの上映、1月2日からの上映中は都内です。
上映館は東中野(東京都中野区)、JR総武線・東中野駅の西口改札を出て北側の通りを新宿方面に少し歩いた『ポレポレ東中野』(※2)でした。
でっ、観て来ました。
ドキュメンタリー映画は二部構成になっていて、第一部が「だし」(出汁)、第二部が「しょうゆ」(醤油)でした。
各々50分ずつなので、合計100分の上映になります。
その内容たるは素晴らしいものでした。
「んっ、何だろ?」と思ったら、ぜひ、見て頂きたいとお薦めします。
「だし」の素になるのは”昆布”であり、”鰹節”です。
”鰹節”の代わりに”干しシイタケ”(乾燥シイタケ)を使うこともあります。
これは誰でも知るところと思いますが、”昆布”を例にすると「海で生育に2年、蔵で3年乾燥させる」というように5年もの時間を費やすなんて知ってました?
ボクは「時間を費やす」という事は知ってはいましたが、「5年」も費やすなんて知りませんでした。
その”昆布”を使って料理人が「だし」をとるのはたったの10分です。
”昆布”が料理人の手元に届くまでに費やされる、その時間は直に見える訳ではないし、料理を食べに来るお客さんからすれば想像すらできないだろう。
このドキュメンタリー映画は、それを教えてくれたのです。
”昆布”は「海で生育に2年」というのは2年目の”昆布”を収穫するという意味でもあるのですが、逆に言えば1年目の”昆布”は収穫せずに残すのです。
そうすることで来年、また収穫できるという訳です。
また、2年目の”昆布”が収穫されることによって1年目の”昆布”に太陽の陽が射し込み、海のうねりや流氷に晒されて厚みのある大きな”昆布”だけが生き残り、立派な”昆布”が育つのです。
つまり、生態系を壊すことなく自然の恵みを大切にしてきた日本人の知恵が、そこにありました。
「(そこまでは)知らなかった♪」
ドキュメンタリー映画を観ながら、そればかり呟いてました。(笑)
さらに驚いたのは「だし」の起源です。
それは、800年前の禅宗寺院の食卓にあるという。
その後、17世紀には徳川将軍の政策により肉食禁止となりベジタリアン化させられ、侍さんも町民も味に飢え始め、それでいかにして「うまみ」を取り出すか模索したのです。
やがて、”昆布”、”鰹節”、”干しシイタケ”(乾燥シイタケ)から「うまみ」を取り出すという「食の革命」が起こり、それが今日まで引き継がれているのです。
澤井醤油本店(京都市上京区)
第二部の「しょうゆ」(醤油)では、その製造過程を日本の四季を感じながら知ることになりますが、その中で重要なものが”かび”(麹カビ)です。
学名は「アスペルギルス・オリゼ」(日本麹カビ、またはA・オリゼ)です。
ドキュメンタリー映画の中では略して”オリゼ”と呼んでましたが、世界中どこにもない、日本にしかない”かび”なのです。
この”かび”が日本にしかない理由はドキュメンタリー映画の中で明かされます。
ちなみに、『今から千年ほど前、日本人は、自然界に漂う何億種類のカビの中から、A・オリゼを抽出する方法を世界で初めて編み出しました。』(※4)とあり、そのことからドキュメンタリー映画のタイトルの”千年の”という文言がついたものと思いました。
面白いのは『鎌倉時代には、蒸し米の上でカビを育て、どこにでも運べる「カビの種」を作る種麹屋(たねこうじや)が現れました。』(※4)という解説、そして「種麹屋」はいわば「世界最古のバイオビジネス」なんだという解説です。
バイオビジネスと聞くとつい最近始まったように思えますが、実は千年も前から日本人は実現していたのです。
和食(※4)
この”オリゼ”という1種類の”かび”によって「しょうゆ」(醤油)だけでなく、「さけ」(酒)、「みりん」(味醂)、「みそ」(味噌)がつくられるのです。
それらは和食の「うまみ」が詰まった調味料であり、現代日本人においても何と身近な存在であることかと思います。
また、『あらゆる「うまみ」のベースには、このカビとその仲間がいるからこそ、和食は統一感のある味と香りのハーモニーを奏でることができるともいえるのです。』(※4)
このようにボク自身が余りにも知らなすぎたことに気づき恥ずかしくなりましたが、「日本人って凄い民族なんだぁ♪」と誇りを持ちたくなりました。
そして、「日本人に生まれて良かった♪」と思い、ドキュメンタリー映画を見終えた帰り道は”和食”が無性に食べたくなりました。(笑)
ドキュメンタリー映画「千年の一滴 だし しょうゆ」(※3)の監督はプロダクション・エイシア代表の柴田昌平氏です。
2011年の第1回・国際規格会議「Tokyo Docs」(トウキョウ・ドックス)において優秀企画賞を受賞し、フランスの放送局・映像制作会社と、NHKも企画・制作に加わり3年がかりで完成させたものです。
ちなみに、この国際規格会議「Tokyo Docs」は『日本の優れた番組制作者に、番組の国際共同製作を行い、日本の姿を世界に発信する機会を提供することを目的としています。あわせて、他のアジアの番組制作者にも共同製作の機会を提供しています。』(※5)
※1 仏で大好評の日仏合作映画「千年の一滴 だし しょうゆ」、日本公開へ
=「近年最高のドキュメンタリー」の声も
http://www.recordchina.co.jp/a98831.html
※2 ポレポレ東中野
※3 日仏合作ドキュメンタリー『千年の一滴 だし しょうゆ』公式サイト
http://www.asia-documentary.com/dashi_shoyu/index.html
※4 NHKスペシャル|国際共同制作和食 千年の味のミステリー
http://www.nhk.or.jp/special/detail/2013/1215/
※5 国際規格会議「Tokyo Docs」(トウキョウ・ドックス)
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