ネルケ無方『日本人に「宗教」は要らない』 | キムチの備忘録♪

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かなりお久しぶりになりますが、本の紹介です本

 

 

第一章 「日本人は無宗教」って、本当? ~日本と欧米社会の差異~

第二章 ここがすごいよ、日本の仏教

第三章 ちょっと不思議な、日本仏教

第四章 もし日本から「仏教」がなくなったら… ~日本人の死生観について~

第五章 日本人はなぜキリスト教を信じないのか

第六章 日常生活に役立つ「禅」の教え

 

 

曹洞宗・安泰寺のドイツ人住職である著者が「日本人の宗教観」について考察した本です。

彼はもともとキリスト教徒(プロテスタント)の家に生まれながらもキリスト教に疑問を持ちながら育ち、日本の「禅」に興味を持ち、来日したのだそうです。

そんな著者の視点から、日本人と欧米人の考え方の違いや仏教とキリスト教の違いなどをわかりやすく解説してくれています。

 

 

 

印象に残った部分をいくつか抜き出してみますと、

 

「日本人にとっての宗教は、空気を吸って吐くように自然なものではないだろうか。宗教心があふれているからこそ、無宗教に見える。だから、他宗教に対して寛容にもなれるし、宗教を理由に他人を否定する必要もない。宗教に無関心である日本人は、最も宗教的な人々だと私は思う。」

 

「日本には宗教の授業がないが、悲観する必要はない。…給食の前には全員で「いただきます」と言い、食べ終わったら「ごちそうさまでした」と言う。…自分たちが使っている教室やトイレは自分たちで掃除をする。これは、禅の教えを実践していることなのだ。」

 

「いまや日本仏教のメインの仕事は、法事である。日本仏教は、「葬式仏教」になってしまっている。…仏教が葬式を司るのも大事なことだが、それだけで終わっていてはいけない。」

 

「「生きるための教え」、それが仏教である。人としてどう生きるべきか、社会はどうあるべきか、を考えるのが僧侶の役割ではないのか。…葬式ばかりに忙しく、坐禅をする暇がない、念仏をしている暇がない、というのは本末転倒だ。」

 

「オウム真理教が起こした一連の事件は、日本の仏教界にも衝撃を与えた。…オウム真理教の事件は日本仏教界が直接関与したわけではないが、あまりにも関わらなかったからこそ起きた事件なのではないか。もっと早い段階で、「日本にも本当の仏教はある。生き方を考えるならこうゆう実践がある」と、広く門戸を開くべきだった。」

 

「人間としてこの世に生を受け、やがて死んでいく…。つながったこのふたつの両極を仏教ではひとつの働きと考える。これを「生死(しょうじ)」と言う。仏教本来の考えでは、死んでから「ホトケ」になるのではなく、生きるのも死ぬのも、そのまま仏の命にほかならない。だから生のみを尊いものとし、死を忌まわしいものとは考えない。」

 

 

 

私は寺社仏閣を観るのは結構好きなのですが、正直今まで宗教的な意味を深く考えたことはありませんでした。

しかし仏教とは何ぞや?と改めて考えてみたくなり、この本を読んでみました。

すると、日本人は宗教に無関心と言われているけれど、じつは仏教の教えが深く日本人の生活に根付いているのだと分かりました。

日本人における宗教に対する曖昧さは寛容さでもあり、美徳でもあると言えるのかも知れません。

しかし本来“生きるための教え”であるはずの仏教が法事にしか必要とされていない現状はとても残念だし勿体ないとも思いました。

 

仏教を知るための入門書として、グローバルな視点で分かりやすくかいてくれている良書だと思います。

仏教や寺社仏閣に興味はあるけど何かとっかかりが欲しい!という方にお勧めの本です。