「それより、ゲオルグがここにおらんが

まさか死んだのか」

 

「いえいえ、頭にそれはひどい怪我を負われましたが

無事でございます」

 

ならば罪はさほど重くはない

どういった経緯でそうなったかが問題だな

 

 

逃亡(9)

 

「そうか、ウンターヴァルテンは物騒だな

それにしても、代官代理の馬を盗んだとはいえ

たかが馬泥棒にこの人数とは仰々しいものだな」

 

ミヒャエルは肩をすぼめた

 

見たところ役人と呼べるのはミューラーだけ

――といっても、一見

彼も役人には見えないが――で

あとは皆ニトヴァルテンの農夫たちのようだ

 

収集の鐘が鳴らされたといっていたな

 

「よし、怪しい二人組を見かけたら俺が捕まえてやる

この馬を連れてお前は安心して

ウンターヴァルテンへ帰れ」

 

「は、いや、しかし……」

 

手ぶらで帰っては、激怒しているゲオルグに

何といわれるか分かったものではなかった

 

馬だけでは話にならない

 

だが、ウーリの下級代官代理が管轄外だ

とばかりに立ちふさがっている

 

ミューラーには

それ以上どうすることもできなかった

 

「事件の詳しい状況と

そいつらの人相を聞いておこうか」

 

ミヒャエルは

ここでミューラーを足止めにした

 

ヴィルがシュテファン夫妻を

無事に逃がすための時間を稼ぐのだ

 

 

つづく