逃亡(8)
「犯罪者は何人で何をやらかしたんだ」
「は、ふたりでございます
ゲオルグ様を打倒してゲオルグ様の馬を
盗みましてございます」
強盗か盗賊といったところだな
「ゲオルグの馬を……
代官代理の馬を盗むとは豪胆なものだな」
ミヒャエルは涼しい顔で
「その馬はもしや、この馬ではないか」
と顎をしゃくった
「おお、その馬はまさしくゲオルグ様の愛馬
どこでお見つけになられましたので……」
ミューラーはベリンゲー家の船頭で
ゲオルグの用心棒であった男だ
ゲオルグが下級代官代理になったがために
ゲオルグのお目付け役だった彼も
一緒に役人になってしまった
不器用な彼は礼儀作法などまるでわきまえない
だから不自然に大げさであったり
妙な敬語を使ったりする
「先程この坂を上がってきおったのだ
それより、ゲオルグがここにおらんが
まさか死んだのか」
「いえいえ、頭にそれはひどい怪我を負われましたが
無事でございます」
ならば罪はさほど重くはない
どういった経緯でそうなったかが問題だな
つづく