ゲスラーはシュヴィーツを拠点に

じわじわとシュヴィーツ、ウーリの民衆の

動きを封じ込めてきている

 

 

花嫁の危機(4)

 

だからゲスラーにとってもノルトラントのウーリ派遣は

最も用心しなければならぬ

危険分子の動きを抑えるためであり

また、自身の身を守るためにも

近くにノルトラントを置いておく必要があったのだ

 

ウンターヴァルテンは四森林邦湖の対岸にあって

シュヴィーツからは遠い

 

ウーリの隣に位置していても

アルトドルフやビュルグレンからも遠く

ゲスラーは手始めに

そこから圧制を試してみることにした

 

それは同盟三邦の中でも

他の二邦に比べて結束が弱いと感じていたからだ

 

ゲオルグを派遣したにも理由がある

 

単純な男に

とやかくいっても始まらない

 

どうしようもなくなれば

権力をかさに押さえつけようとするに違いない

 

放っておいても思い通りにやってくれよう

 

たとえ失敗したとて

非難を浴びるのはあくまでもウーリ出身のゲオルグであり

ゲスラーは、ただそれを処罰すれば良いだけの話だ

 

そんなゲスラーの思惑も知らず

ゲオルグは今も権力を行使していた

 

いつものように馬に跨り

ベリンゲー家の船頭であったオリバー・ミューラーと

兵士をひとり連れ立って

視まわりと称した鬱憤ばらしに出かけていた

 

誰でもかまわない

 

出会った村人を捕まえては何か適当な罪をでっち上げ

その場で裁くのだ

 

 

つづく