花嫁の危機(3)

 

きょうは蒸し暑いな、と

ゲオルグ・ベリンゲーは思った

 

朝は寒いほどであったのに、昼を過ぎた辺りから

じっとりとした汗が肌着を重くさせて手足が動かしにくい

 

今や彼はニトヴァルテンだけでなく、もう一方の半邦

オプヴァルテンも管轄下におく権力を手に入れ

ノルトラントに次ぐゲスラーの部下となった

 

ゲスラーはブラウベルク亡き後

面倒なウンターヴァルテンを統治する者がいなくなった

と感じていた

 

そういったことは奴に任せていればよかったが

処刑してしまったものは仕方がない

 

試しにウンターヴァルテンの半邦ニトヴァルテンに

下級代官代理としてゲオルグを派遣した

 

何かしらの褒賞を与えれば

この手の若者は実力以上の能力を発揮したりする

 

如かしてゲオルグは

ゲスラーの所思以上に民衆を抑える能力に長けていた

 

わがままで意地の悪い商家のどら息子は

人をあごで使うことに慣れていたのだ

 

ノルトラントはゲスラーの副官となり

フリュエレンの砦に赴任

 

下級代官代理兼副隊長として

隊長であるミヒャエルを監視している

 

代官代理をふたり選出する異例の人事に加え

ノルトラントがウーリの下級代官代理であることは

ウーリの民衆にとって

最も危険な男がのさばっていることに等しい

 

ゲスラーはシュヴィーツを拠点に

じわじわとシュヴィーツ、ウーリの民衆の

動きを封じ込めてきていた

 

 

つづく