「性懲りも無く……か」
ため息まじりにハンスがいった
晒し者(13)
「ああ……」
ヴィルは松明を上下にかざして
吊るされた罪人の背後を照らしている
「俺はゲスラーという男がよく分からない
頭の切れる奴なのか馬鹿なのか、ぶどう酒を俺たちに振舞って、友好的と思わせる態度をとったり、今回みたいに愚かな真似をする」
「愚か……かな」
ヴィルは、絞首刑台をぐるりと回って元に戻った
「そうは思わないか……」
ハンスは腕組みしてヴィルを見た
「ビュルグレンでのことはともかく
こいつが処刑されたことには何か意味があるはずだ」
ヴィルはいった
「こいつは絞首刑じゃなく刺し殺されている
この傷は見せしめに刺したもんじゃないな
多分、後ろから刺されたんだろう
それも腕の立たないやつにやられたみたいだ」
「後ろからなぜ分かる」
「コートの破れ方さ
見ろよ
背中のほうが小さくて腹のほうの破れが大きい
腕が立てばこんな破れ方はしない
どっちから刺したか判らないだろうさ」
ハンスは組んだ腕を解いてうなずいた
「なるほど……
それで見せしめの傷じゃないのは、なぜだ」
「ああ、血だよ
死んでから刺したんなら、こんなに出血しない」
ヴィルは松明をブラウベルクに向けた
「ヴィル、よく知ってる。頭いいね」
つづく