最近、フィンランド人の友達から「これ面白いよ」と逆輸入的に紹介された『世界の果てまでイッテQ』をちょくちょく見るようになりました。オススメされたのは芸人の出川哲郎さんが海外で英語を駆使して与えられたミッションをクリアする、「出川イングリッシュ」こと「出川哲郎はじめてのおつかい」です。

 

単純に面白かったので、それ以降よくYouTubeで暇を見つけては過去エピソードも見るようになったのですが、そうするとオススメ動画で出川さん関連の他の動画も出てくるようになります。例えば「なぜ出川哲郎は『嫌いな男1位』から人気者になれたのか」とかです。

 

そういわれてみれば、出川さんって確かに昔は「抱かれたくない男」とかの不名誉なランキングの数々で上位ランクインの常連さんだったはずなのに、最近になって急に人気になっていたので、そちらの関連動画も興味深いと思い見てみました。

 

動画の中では出川さんが昔から一貫して誰に対しても平等に敬意を持って接していた事などその人柄が評価されていたり、出川さん自身が口にした「ブレずに頑張り続けていれば、必ず誰かがどこかで見ていてくれるはず」というセリフも確かに重みがあるなとは思いました。

 

内容的にはたしかにいい話ではあると思います。ただ、分析としては全体的に浅くて物足りない印象は否めませんでしたねー。

 

だって、世の中には出川さん以外にも「誰に対しても誠実に接する人」や「ブレずに頑張り続けている人」はたくさんいるはずですが、その全員が出川さんのように人気者になれているわけではありません。むしろ、誠実にしていたり頑張り続けているのに全く評価されていないかわいそうな人たちだって大勢いらっしゃるでしょう。

 

出川さん本人にしても、芸人としてのキャリアはもう30年を超えているというのに、お茶の間から好印象を集めるようになったのはつい最近の話です。昔からテレビにコンスタントに出られてはいたものの、当時は「出川は下品」と思われるような企画ばかりをやらされており、20年ぐらい前はその「下品」なイメージのせいか渋谷を歩いているだけで「オヤジ狩り」ならぬ「出川狩り」に遭うなど、文字通り毛虫の如く嫌われていたのだとか。

 

イッテQの出川イングリッシュの企画がウケて人気が出たとかも言われていますが、では昔から既に人に好かれる資質を十分に持っていたはずの出川さんがなぜここまでの人気を得るのにこんなにも時間がかかってしまったのか?という疑問にはいまいち答えられていないでしょう。

 

最近の出川さんが人気者になっている一方で、同じく誠実にしていたり体を張って頑張っているのに報われていない人たちは何が違うのでしょうか?また、嫌われていた頃の出川さんと今の人気者の出川さんでは具体的に何が違うのでしょうか?(←昔から一貫して人柄はいい人だったはずなのに)

 

いろいろ見てみましたが、やはりこの根本的な疑問にスッキリとした答えを出している動画やページは見つかりませんでした。

 

だったら自分で分析して書いちゃおう、というのが今回の記事の趣旨です。

 

僕は出川さんのケースのように、一度ネガティブなイメージがついてしまった人(それも本人の問題行動のせいではなくネガティブなレッテルを貼られる状況にいつのまにか放り込まれてしまっただけの人)がそれを覆すためには、単純に本人の努力だけでは極めて難しく、努力以外にも他の要素が組み合わさる必要があると考えています。

 

例えば出川さんの場合は、「外の世界」の力を借りる事ができていました。イッテQの出川イングリッシュではロケ地は海外であり、出川さんが話しかける相手(英語圏の人たち)は出川さんの事を全く知らない人たちばかりです。

 

という事はこの人たちは当然「この男は下品なやつ」などといった変な先入観は持っておらず、純粋に出川さんの人柄やコミュニケーション能力のみを見て「この人はどんな人間なのか」の判断をする事になるのです。で、元々愛嬌のある人柄なので、それが伝わり多くの方から親切に対応してもらえるというわけです。

 

これがもし下手に出川さんを知っていて「下品な男」という偏見を持った状態からスタートした人だったら、出川さんが自身のインタビューで語っていたように、「近づいただけで『キモイ、来ないで』などと言われた」なんて事になっていたかもしれません。

 

また、イッテQの出川イングリッシュのコーナーが始まったくらいの時期になると、毛虫の如く嫌われていた昔と比べてもう1つ大きな違いが生まれます。それは視聴者の層が変わってきたという事です。

 

現在出川さんに好印象を持っている若い世代の人たちは彼の嫌われ者時代にはまだ生まれていないかあるいは当時は幼かったため、当時の彼の事を知りません。つまり、この若い人たちも英語圏の人たち同様に、出川さんに対して変な先入観を持たずに純粋にイッテQでの活躍だけを見て彼の事を評価する事になるのです。

 

出川さんに対して偏見を持つ人が減った状態で、彼が本来持っていた愛嬌のある人柄を披露し、尚且つそれが評価される姿を多くの人に見せ続けた。これによって彼を支持する人が徐々に増え、その勢いが彼を毛嫌いしている層を上回った。これが世間全体での彼の評判を「嫌われ者」から「人気者」に一新できた大きな要因といえるでしょう。

 

ここで大事なのは、以下の

 

・偏見を持たない人に囲まれている

・自分の本来の実力を披露できている

・「出川さんってすごいんだね」と評価する周りの人の数が増えている

・上記の条件が一定期間以上続いている

 

という複数の条件が全て満たされる必要があるという事です。

 

ちなみに人気者になる前の時点でも、明石家さんまさんがテレビで「出川は二流」と言った人に対してすかさず「出川は一流や」と切り返したり、島田紳助さんが「出川みたいなのがいると司会者としてはやりやすい」といった、彼を好意的に評価する発言をする事は何度かありましたが、当時はまだ「出川嫌い」派の層を上回るほどの「出川好き」派の勢力はありませんでしたし、毎週のように定期的に出川さんの好感度が上がるシーンを見せ続けていたわけでもありませんでしたので、やはりネガティブなイメージをひっくり返すとまではいきませんでした。

 

今回の出川さんの見事なまでの汚名返上は、彼の実力に巡り合わせのよさも重なった、稀なケースであると思います。ていうか、稀じゃなかったらわざわざ「なぜ出川は人気者になれたのか」なんていう特集も組まれないはずですよね。珍しいからこそニュースになるんですから。

 

とはいえ、今回のケースは僕たち一般人から見ても参考になる部分はあると思います。というのも、例えば自分が今いる組織で正当に評価されていないと感じている場合、そのままそこで我慢して頑張り続けるのとどこか他に移って環境を一新するのとどちらがいいのか、といった事を考えるのにいい参考材料になるからです。

 

せっかく真面目に一生懸命頑張っていても、変な先入観を持った人間に囲まれていたらいつまでたっても評価してもらえないままかもしれませんし、出川さんのように本来の姿を正当に評価してもらえるまでに30年もかかってしまうかもしれません。

 

出川さんは意図せず偶然こうなったのだと思いますが、場合によっては意図的に「外の世界」に出てみて、環境をリセットするのもありかも?です。