前回はLanguage Exchangeで良いパートナーを見つければスピーキングのいい練習になるという事を書きましたが、その時の記事でも書いたように、やはり理想的なラングエッジパートナーはそう簡単に見つかるものではなく、運の要素に左右される事も多々あります。ではラングエッジパートナーが見つからなかったら会話ができないから、スピーキングやの練習ができないのかというと、そうでもありません。自分1人でもアウトプット系の語学スキルを練習する方法はあります。

 

その方法とは、スピーキングのリハーサルを常日頃からしておくというものです。みなさんは、外国語で読む事はある程度できるのに、いざ喋るとなったらなかなか言葉が口から出てこないという事はありませんか?あるいは、母国語でも面接とかで予想もしていなかったような事を聞かれて、「うう、ええっと、それは……」と上手く答えられず言葉に詰まるという事は経験した事はありませんか?

 

1つ目の例の外国語でとっさに言葉が出てこないというのは当たり前に思うかもしれませんが、2つ目の例は僕らのネイティブ言語である日本語での話です。外国語ならいざ知らず、なぜ自分のネイティブ言語ですら、スラスラと喋れない事があるのかというと、それはその喋ろうとしている内容に関するリハーサルが不足しているからです。

 

逆のパターンもあります。日本のテレビ番組には、外国人がたくさん来日して自分の得意な日本の歌を競い合う、のど自慢番組がありますよね。そこに出てくる外国人たちの中には日本語ペラペラな人たちもいますが、日本語がほとんど喋れない人もたくさんいます。でも、この日本語が喋れない人たちもひとたび歌となれば、日本語の歌をスラスラと歌うのですね。なぜ日本語をまともに喋れないのに日本語の歌をスラスラ歌えるのかというと、それだけ練習した、つまりリハーサルが十分に行われてきたという事なのでしょう。

 

僕たちは普段何気なく言葉を喋ってますが、意外とその喋る内容のほとんどはパターン化されたお決まりの台詞だったりするなんてこともけっこうあります。初めて誰かと会った時にする自己紹介や、相手に対してする質問とか、友達でも久しぶりに会った人に対して聞く事とか、パターンとしては大体同じではないですか?

 

こういう普段使い慣れているものはほぼ無意識のうちにルーティーンやパターンとして頭の中で処理されているでしょうから、あまり考えなくてもパッと口から言いたい事がでてきます。ですが、先ほどの面接の例でも出てきたように、自分が普段あまり深く考えない事に関して話すとなると言葉が出てこないのは、リハーサル不足で何からどう言及していいのかわからないからです。

 

ではどうすればリハーサル不足を解消してスラスラと喋れるようになるのか?といえば、答えは簡単。リハーサルを十分にすればリハーサル不足ではなくなります。ではどのようにリハーサルをすればいいのか?という疑問がここで挙がってくるでしょうから、その点についてもう少し詳しく見ていきましょう。

 

以前文法の勉強・練習に関する記事で、パターンプラクティスというものについて書きました。これは覚えた文法項目に沿っていろいろ単語を当てはめるという作業を、実際に声に出してでも頭の中ででもいいから繰り返す事で、その文法、あるいはボキャブラリーを頭に染み込ませるというものです。これはまさにリハーサルそのもので、スピーキングの練習になります。

 

それを更に発展させると、頭の中で自分の他にもう一人登場人物を用意し、その人と頭の中で勉強中の言語で会話をするという練習もできます。一人二役ですから、自分が言った事に対して相手がどんな台詞で対応してくるのかを予測するいい練習にもなりますし、あくまで頭の中でやっている事で外からは見えませんから、道を歩いている時でもバスや電車を待っている時でもいつでもできます。

 

他にも自分の喋りをビデオに撮ったり録音したりするという方法もあります。自分で喋りたいトピックと喋り続ける時間を定め、録画(録音)を開始したら定められた時間が来るまでひたすら喋り続けます。もちろん最初は上手く喋れないでしょうから、何度も練習する事になるでしょう。録画や録音したものを自分で客観的に確認できますから、自分の喋りのどこに問題があるのかがより明確に見えてくるでしょう。

 

部活などで自分自身をビデオに撮った事のある人はわかるでしょうが、どの競技でも初めて自分のフォームをビデオで客観的に見ると唖然としますよ()まさにスラムダンクの合宿シュートの時の桜木花道の「こ、これは俺じゃない!このかっこ悪いのは誰だ…。」の状態になります。

 

このビデオを撮って映像を確認するという行為は、次に同じ動きにチャレンジする時に自分の体(の一部)をどのように動かせばよりスムーズになるのかを考えてリハーサルするのに非常に役立ちます。また、客観的に自分を見る事で今の自分にどのような問題点があるのか、またそれをどのように直していけばいいのかを診断する「テスト」としての機能も果たすことにもなります。

 

備えあれば憂いなしといいますが、それは外国語のスピーキングでも同じ事。日頃から少しずつでもいいので時間を取って、そこで自分が言いたい事を頭の中でだけでもいいので練習するようにしておくと、実際に喋る時にだいぶ違ってくると思いますよ。

 

《ポイントまとめ》

・自分が喋ろうとしている事をスラスラ言えるかどうかは、(少なくとも頭の中で)リハーサルが十分になされているかが大きく影響している

・リハーサルは実際に口に出して喋っても、頭の中で行ってもよい

・頭の中で行うリハーサルは、一人二役の会話に発展させる事で会話練習にする事もできる。

・自分自身のビデオを撮り、自分の喋りを客観的に見ると、さらなるリハーサルのために役立つ。