前回の記事では、最後に「現在自分が取り組んでいる語学の教材が自分の今のレベルから見てけっこう難しかった場合でも勉強は進められる」という事にチョコッと触れましたので、今回はもう少し詳しく書いていこうと思います。

 

基本的な考え方は至ってシンプル。それは「復習」をせよ、という事です。自分の今のレベルより少しだけ高いぐらいの、丁度良いレベルの内容の教材が手に入らず、結構難しい教材を使わざるを得ない場合、1回サラッとその教材をやっただけで内容を理解し、尚且つ覚えていられるという事は基本的にないと言ってよいと思います。だから復習すべしという事なのですね。

 

ですが問題は、「どうやって」復習をするかです。復習というのは、文字通り一度学んだ内容をもう一度学ぶという事ですが、ただ何回も繰り返せばいいというものではありませんし、繰り返せば繰り返すほどその回数や時間に正比例して記憶力が強化されるというほど単純なものでもないです。

 

本編のファーム編でも少し触れましたが、僕はレンマークにいた頃にCourseraという無料オンライン教育プログラムでカリフォルニア大学サンディエゴ校のLearning How to Learnというコースを受講していましたが、そのコースを担当している教授によると、復習をする際は11回の復習の間の開け方を変える事で記憶の定着率も変わるそうなのです。

 

例えば、新しい単語20個でもいいし、30分の動画1本とかでもなんでもいいですが、何かの教材の内容を5回復習するとします。これを同じ日に一気に5回続けて復習するよりも、少しずつ次の復習までの間を長くした方が記憶の定着率が高くなるのだそうです。例えば、1回目の復習を今日したとします。2回目の復習は明日します。3回目の復習はそこから更に3日後(つまり初日から4日後)、4回目の復習はそこから更に1週間後(初日から11日後)、5回目の復習はそこから更に2週間後(初日から25日後)…みたいな感じで、少しずつインターバルを伸ばしていきながら復習をするのです(具体的に何日後に復習するのかは今僕が例えばの話で適当に書いたので、別にここの数字に忠実に従う必要はないです)。

 

復習の回数が同じ5回だとしたら、同じ日に一気に5回連続で行うよりも、このインターバルを伸ばしたやり方の方が記憶の定着が良くなると言われています。その理由は、記憶には短期記憶と長期記憶の2種類があり、インターバルを長くしていくやり方の方が、学習内容を短期記憶から長期記憶に移しやすくなるため、学んだ事を時間が経った後でもしっかりと覚えていられるようになるからでしょう。

 

僕もWikipedia記事をスウェーデン語のリーディング教材として使っていた時は、基本的に「わからない単語が出てきたら全部調べながら読む」と「あまり辞書を引かずに読む」の2つを1セットとしていたのですが、同じ日に同じ記事を3セット以上やる事はなかったです。復習したければ明日やる。既に復習したものだったら、もうしばらく時間をおいてからやる。同じ日に同じ記事を20回復習しようが30回復習しようが学習効果は大して上がらないからです。

 

それから、僕がWikipediaでリーディングをやっていた時に、気を付けていた事がもう1つあります。それは、長い内容のものは一度に一気に読み進みすぎない事です。Wikipediaの記事は、長いものでWordにして10ページや20ページに及ぶものや、それ以上のものもあります。例えば僕のスウェーデン語のWikipediaの記事の中に映画のAvatarやアメリカのオバマ大統領の記事もあるのですが、これらはWikipediaにおいて文量が少ない傾向にあるスウェーデン語でも、Wordに貼り付けてみたら前者は9ページ、後者は21ページもありました。まだまだ勉強中のスウェーデン語だから、毎ページ毎ページ知らない単語だらけです。

 

そんな状況で、最初から最後まで通して読もうとしても、読んだ内容も新しく出てきた単語もなかなか覚えてられないでしょう。なので僕は、このような長い記事の場合は1ページ毎に復習する事にしていました。Avatarの記事の1ページ目を、まずはわからない単語を全部調べながら読む。次は同じ1ページ目をあまり辞書を引かずに頑張って読んでみる。そしたら同じく1ページ目をもう1回覚えていない単語を全部調べながら読む。次はまた辞書に頼らずに読んでみる。ここまでやったらようやく次の2ページ目に進む…といった感じです。

 

※ちなみに、このブログを書いている今現在の時点で、僕はフィンランド語のWikipediaの記事も読んでいるのですが、フィンランド語は難易度がスウェーデン語の時よりも高くなっているので、1ページ毎どころか、5~10行毎に復習しています。

 

このように細かい単位で復習せずに、1ページ目から全部単語調べながら読み続けて、21ページまで全部読み終わったら次は1ページから21ページまで辞書に頼らずに読み続けるというように、最初から最後まで通して読もうとすると、記憶に残りにくいと思います。読んでいる教材が自分の今のレベルから見てそんなに難しくない内容であればこのようにいちいち立ち止まらずに通して読んでもいいかもしれませんが、教材のレベルが高ければ高いほど復習も小刻みにした方がよいでしょう。

 

さて、ここまで主にリーディングの復習の仕方について書きましたが、リスニングについても基本的な考え方は同じです。ですがリスニングで自分の現在のレベルよりだいぶ高めの教材に取り組む場合は、リーディングの場合に加えて更にもう1つ気を付ける事があります。それは学習中の言語での字幕(英語のリスニングなら英語字幕、スウェーデン語のリスニングならスウェーデン語字幕)も使ってリスニングの練習をした方がいいという事です。

 

よく「学習中の言語でテレビを見る場合は字幕なしで見るべきだ」と言われる事がありますが、あれはあくまで、その見ているものが自分の今のレベルから見て難しすぎない場合の話です(知らない単語が多すぎない、発音に強い癖がない、喋るスピードが速すぎない等)。僕も自分のスウェーデン語学習で、字幕なしだと20~30%もわかるかどうかというビデオはまずはスウェーデン語の字幕付きで見るようにしています。

 

また、ほとんど内容がわからず、字幕サービスもついていない動画の場合はその時点では見るのを諦め、他の動画を探したり、リーディングでボキャブラリーを増やすなど他の勉強でもう少し実力をつけてから再挑戦します。

 

そして、ビデオクリップ全体の長さに関わらず、必ず5分や10分単位(場合によっては2~3分)で区切るリーディングの時と似たような感じで、まずは最初の10分を字幕付きで分からない単語を全部調べながら見る。次はまた同じ最初の10分の部分を辞書に頼らず、でも字幕は確認しながら見る。そして次はまた同じ内容のものを字幕を見ないようにして見る。これを1セットとします。

 

10分のビデオクリップだと最初は単語を調べながら見ると30分ぐらいかかりますので、30分のテレビ番組があったとすると、10分ひとかたまり(30分+10分+10分)×3つ分なので、150分かかる事になります。そもそも30%もわかるかどうかという内容だったのですから、それなりにわかるようになるにはこれぐらい時間を費やさねばならないのは仕方がないでしょう。ロクに内容もわからないまま30分通して聞いていても、理解度は上がらないと思います。

 

たまに、復習を3回も4回も5回もやっても理解度が全然上がっていないと感じられる時があるかもしれません。そういう時は、いったんその教材には見切りをつけましょう。今の自分にはその教材は難しすぎるという事です。また別の教材で勉強して力をつけてからそのできなかった教材に再挑戦すればいいです。

 

それから、教材を振り返る際には、たまには使い終わってしばらく経った教材をもう一回見てみるのもよいと思います。例えば3か月前とか半年前まで勉強していた内容を今もう一回見てみます。それで「あぁ、なんだ。こんな簡単なものを当時の自分は難しいと感じていたのか」と思えたら、あなたの実力は伸びているという証拠です。逆に、今でもその教材を難しいと感じてしまうようだったら、力がついていないという事であり、これまでの勉強方法を見直してみる必要があるでしょう。

 

《ポイントまとめ》

・難しめの内容の教材で勉強をする時は復習が重要。

・復習をする時は、復習の回を重ねるごとに復習のインターバルを少しずつ長くしていくと、記憶の定着率が高まる。

・「わからない単語を調べる」と「辞書に頼らずに進める」の2つを1つのセットとして勉強する

・教材の内容が長い場合、1ページ毎や10分毎に区切って、細切れ事に勉強・復習をする。

・復習を重ねても理解度が上がらない教材があれば、それには見切りをつけ、別の教材を探す。今の時点でわからなかった教材は、実力をつけてからまた戻ってくればよい。

・たまにはひと昔前の教材も振り返ると、自分の実力の伸びを実感できる。