大人になってから語学を独学で勉強していると、いくつかどうしたらいいか悩む事があると思います。「どうやって勉強したらいいかわからない」というのはよく聞くと思いますが、それ以前に「どんなものを教材として選べばいいか」というのが、勉強の仕方と同じぐらい、いやむしろ遥かに重要な事だったりします。なので実はここでコケるといくら頑張って勉強してもいつまで経っても勉強の成果が上がらないというトホホな状況になりかねないです。

 

よくある質問で「英語ができるようになりたいです!お勧めの教材ありませんか?」とか、「今、○○大学を目指してて、この△△という教材を使って勉強してます。この教材をこなせば合格できますか?」とかいうのを耳にします。これらに対する答えは、「わかりません」としか言いようがありません。そもそも、万人に同じように効果がある、「これさえやっておけばこれだけの成果の上がる」教材など存在しませんし、どんな目的を持って勉強しているのかや自分の今のレベルなどによって、選ぶべき教材は全く違ってくるからです。

 

ただ、いかなる語学レベルでいかなる目的を持って勉強している人に対してでも1つ共通して言える事があります。それは「使おうとしている教材のレベルと自分の今のレベルの距離感を把握すべき」という事です。今のレベルから見てあまりに難しすぎる教材を選んでしまったら、どんなに頑張って勉強しても結局わけわかんなくなって挫折してしまう可能性が高いでしょうし、あまりに簡単すぎるものを選んだ所で、スラスラ進める事はできても今以上のレベルには行けないでしょう。なので、自分の今のレベルでは少し難しいかなと感じる程度の教材が理想的と言えると思います。

 

具体的に言えば、例えば洋書を英語のリーディング教材として選ぶとしたら、1ページにつき知らない単語が5~10個、新しい文法項目が1つや2つぐらいに抑えられているぐらいといった所でしょうか。知らない単語や文法項目の数はテキトーに書きましたが、これが1ページにつき40個や50個新出単語が出てきたり、知らない文法項目が一気に10個とか出てくるようだったら明らかに難しすぎだと思います。こういう教材で粘るよりも、基本的には自分の今のレベルで無理なくできる教材から始めて、少しずつ教材のレベルも上げていくという手法を取る方が望ましいです。

 

僕自身の語学勉強はどうかというと、スウェーデン語の勉強に関してはスウェーデン語語学教室などそうそう見つかるものではなく、勉強し始めた時からずっと独学でやってます。(今では日常会話には困らないぐらいのレベルにはなってます。)半年ほど独学で勉強してある程度自信がついてからはスウェーデン人の友達にスカイプで週1でスウェーデン語での話し相手になってもらっていて、「さっきのこの部分ではネイティブのスウェーデン人そういう言い方はしないから、代わりにこういう表現を使った方がいいよ」とかアドバイスをもらったりしますが、それ以外の普段の勉強は全部自分でやってます。なので教材選びは結構考えました。どれが今の自分に合ってそうかな、どれが今の自分にはまだ無理そうかな、と。

 

スウェーデン語の勉強を始めたばかりの頃は、本当に文字通りスウェーデン語の何一つ知らなかったので、それこそ最初は「こんにちは」「あなたの名前は何ですか?」「ありがとう」とかいうレベルから始めました。アメリカ留学時代に本屋を特にこれといった目的もなくブラブラ歩いていたら、たまたまComplete Swedishという音声CD付きのテキストで初級から中級レベルまでカバーされているものを見つけ、長さも350ページと十分あってよさそうだったので、それを買い、最初の半年ぐらいはずっとそればっかり使って勉強してました。

 

実は、僕がスウェーデン語の勉強のためにお金を出して買った教材はこのComplete Swedishぐらいなものです。あとはほぼネットを駆使してAuthentic materialを手に入れる事で、スウェーデン語教材を確保していました。Authentic materialとは、語学学習専用に作られたものではなく、日常的にあふれている、いわゆる「生の教材」です。

 

例えば僕のスウェーデン語学習で言えば、Bamseというスウェーデンの小さい子供用のアニメ(日本でいうアンパンマンみたいなものでしょうか)がスウェーデン語字幕付きでYouTubeにアップされているのを見つけたので、早速それを使って勉強しました。子供用とはいえ、スウェーデン語を外国語として学んでいる人のためではなく、スウェーデン語のネイティブの子供たちを対象にした作りになっているので、初級者レベルを脱したかどうかのレベルの当時の僕にはちょうどいいものでした。この時点の僕のレベルで大人用のTV番組をスウェーデン語で見たってわかるわけないですからね。かといって教科書ばかりやってるわけにもいかないので。やはりあの時点ではあの教材で良かったんだと思います。

 

語学学習用のテキストやCDは、初心者が基本的な文法や発音やボキャブラリーを覚えるのにはいいと思いますが、一度それらの基本を一通り勉強し終わったら、早いうちに「生の教材」に手を出した方がいいと思います。なぜなら、教科書でばかり勉強するよりも、実際にその言語のネイティブ用に作られたものを使った方が、より自然な形で言語を覚える事ができるからです。

 

今、一旦基礎ができたら「生の教材」を使うようにした方がいいとは言いましたが、だからといって必ずしもいきなり難しいものに挑戦しなければならなくなるというわけではありません。「生の教材」イコールめちゃくちゃ難しいものというわけでは必ずしもないからです。先ほど出てきたBamseも、ネイティブ用とはいえ1桁の年齢の子供を対象としたアニメですから、わからない単語を調べながら見ていけば話の内容はほぼわかりました。他にも、ディズニー映画は総じてわかりやすい表現ではっきりと発音しますから、YouTubeでディズニー系の歌を自分が勉強中の言語で探すのもいいと思います。

 

実際僕のスウェーデン語学習の場合でも、『アナと雪の女王』とか、ちょっと前のやつだけど『ライオンキング』とか、その言語での字幕がついてるやつとか結構ありました。他にも日本のアニメの各国言語の吹き替え版はYouTubeで結構たくさん見つかります。僕の勉強しているスウェーデン語みたいなマイナー言語でさえもいろんなアニメが出てきたときは「おぉ、こんなものまで!」と思いましたね~。ある程度自分の語学力に自信がついてきたら、自分の好きなアニメを勉強中の言語の吹き替え版でYouTubeで探してみるのもいいかもしれないですね。

 

自分が勉強中の言語で「生の教材」をお金をかけずに手に入れる方法は他にもあります。例えばWikipediaです。自分の好きな芸能人とかアスリートとか、映画やドラマとか、何でもいいのでとにかく自分の興味のあるもののWikipedia記事を開き、それを自分の勉強中の言語に切り替えれば、それでリーディング教材の出来上がりです。これをわからない単語を調べながら読めば、自然にボキャブラリーも増強できます。

 

Wikipediaはある程度メジャーな内容の記事であれば、ほとんどどの言語で似たような内容が書かれていますから、何語を勉強していても大いに活用できます。僕もスウェーデン語の教材をどうやって確保しようかと最初は悩んでいた事がありましたが、このWikipedia勉強法を思いついてからはいくらでも好きなだけ、しかも自分の好きなジャンルで教材を集められるようになりました。

 

どれだけ勉強したか記録に残しやすいように、勉強したスウェーデン語版のWikipedia記事をWordにコピーして保存しているのですが、それを数えてみると、今までに僕が読んだスウェーデン語のWikipedia記事はA4のWordでざっと150ページ以上あります。これ、あくまで自分の興味のあるものの記事を使うというのがポイントです。教科書と違って、自分の興味のある内容、つまり既にある程度予備知識のあるものが書かれていますから、自分が既に持っている知識と書かれている内容を結び付けてイメージしやすく、それが勉強中の言語での新しい言い回し等を覚えやすくしてくれます。

 

さて、ここまで教材の選び方、探し方をいくつか書いてきましたが、ここまでの内容で一見矛盾しているように思える事があります。それは僕が始めに「使う教材は自分の今のレベルから見てちょっと難しいぐらいがいい」という理論を提唱した割には、「生の教材」の例として挙げているものには内容がちょっと難しすぎるものがあるのではないか?という事です。(例えばWikipediaとか)

 

そうですね、確かに教材は自分の現在のレベルよりわずかに上という程度が理想なのですが、現実問題としてそうそう毎回自分にとって理想的なレベルの教材ばかりが見つかるとは限りません。特に僕がやっているスウェーデン語のようなマイナー言語ではなおさらでしょう。ひとたび基礎をある程度マスターして、さぁ次は「生の教材」を使うぞとなったら、自分の今のレベルと比べて結構ギャップがあったという事もあり得る話でしょう。そんな時はちょっと勉強の仕方を工夫する事で難易度の高めな教材の問題を克服できる可能性がありますが、今回はこの辺にして続きはまた今度書きます~。

 

《ポイントまとめ》

・万人に効果のある教材は存在しない。まずは自分に合った教材を探し出す事が大事なスタートダッシュとなる。

・今の自分のレベルから見て簡単すぎる教材で勉強し続けても何も得るものはないし、今以上のレベルには行けない。

・今の自分のレベルから見て難しすぎる教材で勉強しても効果はない。何度復習しても理解度が上がらないようであれば、その教材はひとまず置いておいた方がよい。

・理想の教材は、自分の今のレベルから見て少し難しいぐらいのもの。

・文法、発音、ボキャブラリーにおいてある程度の基礎が身についたら、語学学習用に作られたわけではない、いわゆる「生の教材」を選ぶようにするとよい。

・「生の教材」探しにはYouTube(リスニング)やWikipedia(リーディング)を活用すれば、勉強したい言語の教材になるものがタダで手に入るかも?

・「生の教材」の内容が今の自分のレベルから見てだいぶ難しそうな場合(でも難しすぎて無理なほどではない場合)の勉強法もある(次回)