前回の『英語とカエルちゃんのお話』で、「あ、そういえばこの話も追加しようかな」と思った事があったのですが、既にかなり長い文章になってしまっていましたし、この追加分もそれ単体だけでそれなりの長さになりそうな気がしたので、別個に書きます。それは何かというと、タイトルにもある通り、語学力よりも人間力があった方が圧倒的に有利という事です。なんかこんな事書いてる時点で既に「語学編」ではなくなっちゃってる気もするのですが、まあ惰性で書いちゃいます。

 

海外で生活するにあたっては、当然その国の言語を話せた方が、話せないよりも有利です。ですが、その国の言語を流暢に話せないと生活できないかというと、そうでもないです。更に語学力がないと成功できないかというと、それも必ずしもそうではない。今回は、その具体例をいくつか紹介していく事によって、改めて人間力の大事さを再認識したいなと思います。こんな事書いてる僕自身も、人間力アップせねばならんような奴ですからね。

 

まず1人目はテレビに出ているような著名人ではなく、僕がアメリカ留学中に出会った日本人、「けんしょう」です。(←これ、彼の本名です。漢字だと難しくてめんどくさいのでひらがなで。ちなみに本人からは本名でのブログ掲載の了解はもらってます。むしろ、今は自分のビジネス持ってるから名前だして宣伝してくれとか言われました(笑))

 

けんしょうと初めて会ったのは、僕がアメリカに留学して3か月ほどたった頃でした。僕は既に1学期分を勉強し終えており、次の学期から新しく入ってくる留学生たちが当時僕の住んでいたアパートのいくつかの部屋に入居してきており、その新しいメンバーでパーティが行われていたので、僕もそれに参加したのでした。

 

けんしょうの第一印象は、とても明るくて軽いノリのキャラ。実は彼は僕より2つ年上だったのですが、この時期に僕の新しいルームメイトになった、僕より2つほど年下の子がタメ口を普通にきいていたので「同い年ぐらいかな~」と思ったし、キャラ的にも軽かったのでよく確認もせずに最初からタメ口で喋ってました。んで、後で2つ年上とわかったものの、「今更敬語に戻せないしな~」という事で、僕は相変わらず彼にタメ口きいております(笑)

 

けんしょうはこの時「いや~、今さ、金がなくて困っちゃってるんだよね~」とケラケラ笑いながら言っていました。聞けばこの人、帰りの飛行機の切符を買うお金の余裕もないのに、何故か片道切符でアメリカに来てしまったのだそうです。当然今後の学費も生活費も危うし。「ええ~?ちょっとちょっと!何考えてるの?大丈夫なの?」と聞かれても、「いや~、何とかしてみるわぁ(^^)」と余裕の表情をしておりました。

 

しばらくして彼に再び会って話してみると、彼は近況を報告してくれました。

 

けんしょう:「お金の件、何とかなった!奨学金入った!これでもうしばらくアメリカで勉強できるぞ!めっちゃ探したわぁ(^^)」

 

なんと執念で奨学金をゲットし、それでしばらくの生活費と学費はまかなえるとの事。そしてしばらくして語学留学を終えると、彼は今度はビジネス系のプログラムに入りたいみたいな事を言い出しました。ところが、この彼の希望していたビジネス系のプログラムは、正社員のフルタイムでの職歴がある人のみ応募資格があるものだったらしく、日本で塾のバイトを少しした事があった程度のけんしょうは対象外と言われてしまったのだそうです。これでけんしょうの夢は終わったかのように思われたのですが、彼はこの程度で潰れるような男ではありませんでした。

 

しばらくして再びけんしょうに会うと、なんと彼はその例のビジネス系プログラムに入っていた事が判明。彼曰く、

 

けんしょう:「あのプログラムねぇ、結局入れたよ!何回も門前払い喰らったんだけど、通いに通い詰めたねぇ。押した押した!押しまくって、ねじ込んだ!めっちゃ粘ったわぁ(^^

 

アメリカ人もタジタジの驚異的なネゴシエーション(?)術で、本来だったら入れないはずのプログラムにも入学してしまったけんしょう。そこからしばらく彼とは連絡をとっていなかったのですが、ふと気まぐれに彼と連絡を再び取ってみたところ、なんとハワイで就職が決まっていた事が判明しました。

 

けんしょう:「いやぁ、ハワイは偶然たどり着いたんだぁ。ここまでいろいろあってねぇ。めっちゃ大変だったわぁ(^^)」

 

ちなみにこのけんしょう、今となっては英語には不自由していないようですが、少なくとも僕がアメリカで会った時点では、英語はあまり喋れませんでした。そんな中で困難に直面しようとも、「いやぁ、大変だったわぁ(^^)」の一言で笑い飛ばし、鼻歌交じりに片づけてしまうその逞しさ。僕だったら「入れない」って言われたプログラムにねじ込むなんて無理だったでしょうね~。「ダメ」って言われた時点で諦めてたと思います。この辺りが、けんしょうの計り知れない人間力の凄まじさなのでしょうね。語学力よりもよっぽど重宝する能力です。

 

ちなみにこのけんしょう、先ほども少し触れたように、現在はALOHA KENSHO TRADINGという自分のビジネスを持っており、関東地区で英会話レッスンをしております。このビジネスもたしか立ち上げてから2~3か月とかで軌道に乗ったらしいです。起業する人の9割以上は1回も軌道に乗せられないまま廃業するらしいというのに。けんしょうおそるべし。

 

2人目からは、テレビに出ている人の話に移りましょう。まずはムネリンの愛称で親しまれている、プロ野球選手の川崎宗則選手。彼はアメリカに渡ってからしばらく経ちますが、お世辞にもその英語は流暢とは言えないものです。しかし、「彼に語学の壁はない」と評されるほど、ムネリンはその明るい人柄でチームメイトとファンの心を掴み、皆から愛される選手となっています。これは理想的なアスリート像の1つと言ってもいいでしょう。

 

ムネリンや(当時の)けんしょうのような、英語が流暢でなくてもアメリカで上手くやっていける日本人がいれば、日本語がペラペラではないのに日本で上手くやっていけるアメリカ人もいます。例えばボブ・サップとかがいい例です。彼はK1に参戦したばかりの頃はもちろん純粋に闘う事で稼いでいましたが、試合であまり勝てなくなって格闘技の世界でそれほど歓迎されなくなってからでも、(一般人の彼に対する好き嫌いは別として)依然としてあらゆる分野で高い適応能力を発揮して活躍しています。

 

例えば、『ガキの使い』の七変化というコーナーでは、挑戦者には文字通り七変化して様々な手法で笑いを取る事が求められ、笑いをとった分だけ賞金が入るというシステムになっているのですが、ボブ・サップは当時の最高獲得賞金額の記録を更新し、現在でも歴代3位の記録を保持しています。サップ以外の挑戦者はみんな日本人のプロのお笑い芸人ばかりで、笑わせなければいけない対象も日本人ときている中で、この記録です。いかに彼が「語学を超えた何か」を持っているかがわかるでしょう。彼の活躍の場はバラエティ番組にとどまらず、CMにも出たり映画にも出演したり、最近では韓国にも進出しており、そちらでもなかなかウケがいいみたいです。

 

そういえば、『世界番付』の「オードリー春日の部族滞在記」のコーナーでも、春日は日本語しか喋れないのにどの部族でも信じられないぐらい現地の人に馴染んでますよね。どこの国の子供にも好かれてますし。編集の技術とかもあるのかもしれませんが、他の芸人さんではあそこまで良い画はなかなか撮れないでしょうね。

 

こうしてムネリンやボブ・サップや春日の例も見てみると、「人間力」というのがいかに汎用性の高い能力かというのが伺えますね。語学力というのは、その言語が話される国や地域の中でしか役に立ちません。例えば日本語が流暢な外国人が日本語力を活かせるのは日本国内、あるいは日本国外でも日本人に何らかの関わりがある所のみに限られます。世界でこれだけ広く話されている英語でさえ、中南米やアジアでは喋れる人があまりいないのですから、ひとたびバリバリローカルなエリアに入ってしまったらどれぐらい英語力が役に立つのかも怪しいものです。それに対し、人間力は世界中のどこでも通用します。いわゆるつぶしがきくというやつですね。

 

ただ、人間力はどこでも使える万能性を持つ反面、具体的にどうやって鍛えたらいいのかよくわからん能力でもあります。筋力や語学力などは着実に伸ばしていくための科学的・体系的なトレーニング法・勉強法がありますが、人間力というのは漠然としていてどうすればいいのやら、です。まぁ、人間力を鍛える体系的トレーニング理論が確立されていないのであれば、「強くなりたければ強いヤツが集まる所に行け」の理論で、人間力の高い人たちがたくさんいる環境に身を置いて、そこの人たちから吸収すればいいのかもしれませんね~。

 

ちなみに、前回の『英語とカエルちゃんのお話』に引き続き、なんか「語学力はそれほど重要じゃない」みたいに解釈できるような事をいろいろ書いてきましたが、それはあくまで「語学力」と「人間力」の2つを比べたらの話で、語学力を軽視してしまえばよいという事ではありません。もちろん語学力はあればあるほど有利な場合も多いでしょうし、あくまで語学は役に立つ可能性のある能力の1つに過ぎないという位置づけではあっても、自分の目標達成のために語学力が必要な人は、やはり地道に努力を続ければいいのではないかな~と思います。