[目次]
・え、もう終わり?
・もう辞めますわ、この仕事
・パーティで「ヒィィーーーハーーー!!(^0^)」
・マットお怒り
・あれ、ブラマヨのネタじゃなかったの?
・ピッキング上達!
1月23日の金曜日。この日はイギリスのサイモンとハリスとのチームに戻ってのオレンジピッキングだ。南半球にあるオーストラリアの1月は真夏で、今日も相変わらず炎天下である。流石に5日も経ってくると少しピッキング作業に慣れてきたし、初日の酷い体験から得た教訓から暑さ対策もするようになったし、僕的には週始めと比べたら仕事が少し楽になってきた感覚があった。だが、サイモンとハリスは違っていたようである。箱が3箱半ほど埋まった所でハリスがこう言いだした。
ハリス:「今日はこの4箱目終わらせたらもう終わろうぜ」
ええ?もうっすか?この4箱目終えてもまだ午前の11時ぐらいにしかならんぞ?まぁあと数時間余分にやっても1人あたり30ドル上乗せできるかどうかだし、早く上がれるなら早く上がれるでそれはそれで別にいいんだけどさ。
夏でもそれほど暑くならない国からやってきた2人のイングリッシュボーイズには、オーストラリアの本格的な夏は相当キツイようだ。まぁ湿度が低いとはいえ気温40℃越えだしね。日本の夏の湿度の高い38℃と比べればだいぶマシだけど、それでもやっぱり一応暑い。明日土曜日は休みだし、金曜日にこうやって早く仕事終わるのもいいかもしれない。そして早い時間帯で仕事から解放された2人のイングリッシュボーイズはまたしても「ヒーハー!」と叫んだ。
この日の仕事が終わると、僕はファームのオーナーに「次の出勤日の日曜日でここで働くの最後にします」と伝えた。(このファームは土曜のみ休みの週6労働)何故このタイミングで辞めるのかというと、前日木曜日に仕事が終わってホステルに戻るとマットが別の仕事の話を持ち掛けてくれたからだ。このオレンジピッキングの仕事が週始めに始まったばかりの段階で、そもそも10日間ほどしか仕事がないという話がマットの耳にも入っていたのだ。「そんなに早く仕事終わっちゃうの?じゃあもう別の仕事見つけてあげなきゃいけないな」と、マットは早速僕らバックパッカーたちの仕事探しに取り掛かってくれた。そして実際にすぐに仕事を見つけてきてくれたのだった。
マット:「今度の火曜日から箱詰め作業の仕事が始まるよ!時給20ドルは入るなかなかいい仕事だ。興味あるかい?」
僕:「あぁ、わざわざどうも^^でもまだオレンジピッキングの仕事は続いてるし、いきなり途中で辞めてそっちに移っちゃっても大丈夫なんですか?」
マット:「大丈夫大丈夫!残りあと数日とかの所で辞めたって全然問題にならないよ。ファームのオーナーの所に行って口頭で『辞めます』って伝えればそれで済む話だから」
実際、オーナーにあと1日働いたら辞めますと言ったら、「ああ、そうか。次はどこへ行くんだい?」と普通に返された。こちらではこういうファームの辞め方はけっこう普通なようで、オーナーにビックリした様子は見られなかった。マットの言っていた通りだ。
他のヨーロッパ勢も今日はけっこう早目に仕事を終えていたらしく、ホステルはパーティモードに入っていた。どうやら彼らにとって金曜日はパーティをするための大事な日らしい。その日の夜、僕は自分の部屋でくつろいでいた。するとドアをノックする音がするではないか。誰だ?ドアの向こうに立っていたのは台湾の女の子。ヨーロッパ勢が中心になって今夜ゲームパーティをするから、よかったら一緒にどう?というお誘いだった。知り合って間もない段階だったし、こうやってパーティで交流するのもいいかなと思い、僕は参加する事にした。他のアジア勢も参加しており、今回のパーティは全員参加になった。
今回やったのはビアポンというゲームだ。
ビアポン(Beer Pong)とはアメリカ発祥のゲームで、多くの場合2人ずつ2チームで行われ、専用のテーブルをはさみ目標とするカップをめがけて各チームが交互にピンポン玉を投げ合い、競うスポーツだ。当初はアメリカの大学生の間で、カップにビールを入れ相手が投げたピンポン玉がカップに入った場合にそのビールを飲み干すという遊び方が一般的であったため、現在でもビアポンと呼ばれている。一部では別名ベイルート(Beirut)。(以上、Japan Beer Pong AssociationのHPから引用)
ホステル滞在のバックパッカーたちは、2人1組のチームに分かれ、トーナメント方式で対戦していった。ドイツのサイモンが中心となり、ゲーム中は周りの観客が異様なまでに盛り上がる。どちらかのチームがカップにボールを入れるのに成功すると、すかさずドイツのサイモンが「ヒィィーーーハーーー!!(^0^)」と甲高い声で叫び、他のみんなもそれに続き同じように奇声を発する。どの対戦でもカップにボールが入る度にほぼ毎回みんなで「ヒーハー!」と叫ぶので、あの日の夜はひたすらヒーハーが聞こえてきた記憶しかないような気がしてきた。そしてアジア人たちが疲れてベッドに入った後も、彼らヨーロッパ勢の勢いは止まらず、真夜中でもドンチャンドンチャン、ヒーハーヒーハーと騒いでいたのだった。知らない人があの光景だけ見たら、たぶんなんかのクスリでもやってラリッてるのかと思うかもしれないな、うん。
翌日の朝、ご機嫌ナナメな様子のマットが僕に聞いてきた。
マット:「あいつら、昨日の夜は結局いつまでバカ騒ぎしてたんだ?」
僕:「いやー、けっこう遅くまでやってましたよ。少なくとも夜の1時半とかはまだ余裕で騒いでましたね^^;」
マット:「まったくもってガキでバカな奴らだ。こんなんじゃ夜うるさくて他の人が寝れないだろう。あいつらが来てからキッチンは汚くなるし。これだからヨーロッパ勢はしばらく入れてなかったんだ。あの子たちはね、このホステルでは何年かぶりのヨーロッパ人なんだよ。少なくともここ2~3年はヨーロピアンは1人も受け入れてなかったからね」
後から他のバックパッカーたちからも聞いたが、本当にこのホステルは今までアジア人ばかり受け入れてきたのだという。マットから直接聞いたわけではないが、おそらくやり方としては電話をした時にアジア系かヨーロッパ系かを判断し、ヨーロッパ系であれば部屋に空きがあっても「今は空きがないから入れられない」と言って追い返していた、という噂だ。本当にこの方法で意図的にヨーロッパ人を締め出していて、それが明るみに出た場合、国籍による差別にあたり問題になる可能性が高い。確かにやり方としては良くないかもしれないが、そこには今までロクにマナーを守って宿泊施設を使わない奴にヨーロッパ勢が多かったという背景でもあるのかもしれない。たしかに今回のヨーロッパ勢も、ドイツの子たちを除いてキッチンの使い方とかが相当汚いし、金曜日の夜は毎週騒ぐし、意図的に締め出したくなる気持ちもわからんでもないかも。様々な国から人がやってくる宿泊施設を経営するのはやはりそう簡単な事ではないのだ。
僕がここレンマークに来てヨーロッパ勢と過ごすようになってから、頻繁(はんざつひんぱん)に「ヒーハー!」という掛け声を耳にするようになったのだが、僕は最初この掛け声はブラックマヨネーズの小杉のオリジナルのネタだと思い込んでおり、なぜヨーロッパ人がヒーハーを知っているのだろうと思ったものだった。ブラックマヨネーズって、日本はともかくヨーロッパでそんなに有名だったけ?と。気になって調べてみたら、むしろ本家は英語のyeehaw(無理やりカタカナ表記するとイーハウだろうか)なのではないかという事になった。Yeehawは、何か喜んでいる時や興奮している時に使われる叫び声で、元々カウボーイが使っていたそうだ。ウィキペディアによると、初めて小杉がヒーハーと言ったのはマイケル・ジャクソンの物まねを急にムチャブリされ、苦し紛れに出したのがキッカケだったらしい。英語のyeehaw(イーハウ)が日本人の耳にはヒーハーに聞こえるからこうなったのではないかという説があるが、個人的には僕もそうなのではないかな~と思う。
日曜日は再び出勤日。この日はハリスが体調不良のため、サイモンとの2人でチームを組んだ。この日は8時間ぐらい働き、2人で6箱のオレンジを集める事ができた。1箱28ドルで1人あたり3箱ずつ集めた事になるから、この日の給料は84ドルだ。すごくいい給料とは言えないが、まぁこれなら一応は許容範囲の給料かな。仕事を終えた頃、丁度デンマークのキオンとニコライとドイツのサイモンのチームもピッキングを終えていたようで、キオンが僕のチームメイトのイギリスのサイモンに話しかけた。
キオン:「よぉ!今日はどうだった?」
サイモン:「こっちは6箱だったよ。そっちは今日どうだった?」
キオン:「俺たちは9箱だ」
サイモン:「9箱??すっげぇ集まったな!」
キオン:「でもこっちは3人だし、1人あたりで言えば3箱ずつだから同じだよ。俺たちの今日のレーンはけっこうオレンジたくさんなってる木が多かった感じするし、それを考えると君ら2人のチームのが頑張ったかもな」
考えてみれば、僕のチームは初日は3人で5箱しか集まらなかったのに、この日は2人で6箱集まった。1人2箱のペースすらいかなかったのが、1週間後には1人3箱できるようになっていたのだ。ここで初めて、マットが言っていた「最初の2~3日は思うようにピッキングできないだろうから、あまり期待しない方がいいよ。慣れてきたらスピードも上がってくるさ」という言葉の意味を実感したのだった。とはいえ、やはりこの時期はオレンジピッキングには相当なハズレだったらしく、そもそもオレンジの木にあまりたくさん果実がなっていないので、短時間で大量のオレンジを集める事はかなり難しく、結果的にはあまり稼げない仕事となってしまった。レンマークに来て、後になってから口伝いに聞いたのが、「ここはピッキングなら5月ごろに来るのがいい」という情報だった。もしレンマークにファームをしに行く予定のある人がいれば、4月の終わりごろとかに来るのがいいかもしれない。
さて、ファームでの初仕事となったオレンジピッキングではこの通りあまり稼げなかったが、次の週からは時給制の仕事だ。マットからは「3~4週間は続く仕事だと思う」と聞いているし、いよいよ本格的に稼ぐ時が来そうだ^^
見よ、このオレンジの箱の大きさを!
夜明けとともに勤務開始!今日も一日頑張るぞ~