1月9日金曜日。アデレードのセントラルバスステーションを出発して4時間。ついにファームの目的地のレンマークに到着した。バス停に着くとマットがピックアップに来てくれており、無事にホステルに辿り着いた。1週間分のレント(滞在費)を払うと、マットはホステル内を一通り丁寧に案内してくれた。僕が滞在する事になる部屋には既に他の日本人がいるらしい。僕は仕事の事に関しても気になっていたので、マットに聞いてみた。

 

マット:「そればっかりはその時になってみないとなんとも言えないね。早い人は着いた日の翌日からすぐ仕事があったりするし、運が悪いと1週間とかそれ以上待たないと仕事がもらえない事だってある。今の所は仕事の紹介の件ではどのファームからも僕の所に連絡は入ってないけど、わかり次第すぐに知らせるよ。」

 

どうやら僕はそのタイミングが悪い方の人だったらしく、すぐにもらえる仕事はなかった。まぁ、マットはベストを尽くしてくれると言ったし、実際にやっているのだろうが、人手を必要とするファームが出てこない限りマットも仕事を紹介できないわけで、そこはマット個人の努力でコントロールできる範囲外の事だ。とりあえずはもう少しここで待ってみよう。

 

今回このホステルの部屋でルームメイトとなったのは日本人男性Sさん。これまでにブリスベン、ミルデュラなどを回っており、レンマークのファームで働き始めて数週間経っていた。ちなみにミルデュラはあまりにも環境が悪かったので1週間ぐらいで見切りをつけて出てきたらしい。ミルデュラはイカンと聞いていたが、やっぱりか^^;現在はベトナム人の経営するファームで働いているらしく、そのファームで働いているのはSさんと日本人の女の子と韓国人の女の子1人ずつの合計4人だけらしい。その経営者のベトナム人はメチャクチャ嫌な奴で、常に嫌味を言い続けてくるから仕事のモチベーションは湧かないが、セカンドビザ申請のための要件の88日間の労働をクリアするまで我慢し続けるのだという。

 

滞在先に到着して一段落した所だし、ちょっとインターネットをしようかと思ったら、重大な事に気付いた。このホステルはネットが繋がっておらず、パソコンではネットができないのだ(幸いメルボルンで購入したVodafoneのスマホでならネット接続できたが)。マットに事情を聞くと、ネットをしたい場合はすぐ近くの図書館に行けば、無料のWiFiが使えるから、そこで使えるというのだ。だが、その図書館のオープンしている時間を調べてみると、土曜は午前中のみ、日曜祝日と月曜日は終日閉まっており、普段も夕方5時ぐらいには閉まる唯一それなりに遅くまでやっているのが水曜日だが、それでも確か夜8時台ぐらいまでしか開いていなかった。むむむむ、これはマズイ。

 

なぜ僕がこれほどまでにパソコンでのネット接続にこだわるのかというと、当時僕は大学のオンラインコースを受講していたからだCourseraという、無料で世界のいろんな大学の様々な科目から好きなコースを受講できるサイトがあり、僕はそのサイトに登録をして勉強をしていた。当時取っていたコースは2つで、1つはアメリカのカリフォルニア大学サンディエゴ校の“Leaning How To Learn(勉強の仕方を勉強する)”というコース、もう1つはスウェーデンのルンド大学の“European Business Law(ヨーロッパのビジネスにおける法律)”だ。どちらもビデオ講義とそれを基にした課題があり、ちゃんと提出期限を守って宿題を提出しないと点数がもらえない。

 

先ほどスマホでならインターネットが使えると書いたが、無限に使えるわけではなく、月々の払っている携帯料金に応じて使えるデータ量には限りがある。僕の使っていた携帯はプリペイド形式で、これまで使っていたのは月30ドルでインターネットは1.5G分まで使える。月々50ドルのプランに変更しても月3.5Gまでだったので、2つの授業でそれぞれビデオ講義を見まくっていたら、3.5Gという容量ではとても足りないだろう。

 

それにしてもこれは盲点だった。どこのホステルに行ってもネットが繋がるのは当たり前だと思い込んでいたがために確認を怠り、結果として「そんなの聞いてなかった!」状態になってしまったのだ。マットは良い人そうだし、このホステルもネットが繋がらない事以外は特に大きな不満は見当たらない。だが僕はこのオーストラリアのワーホリで働いてお金を稼いでいる間でも勉強を続けたくて、そして僕のやりたい勉強をするためにはネットが必要だった。

 

とにかく仕事ができて尚且つインターネットの時間制限を気にせずに勉強をできる環境を作らなければと思い、レンマークに来たばかりなのにも関わらず僕は他のワーキングホステルの検索をし始めた。元々マットには僕がまだメルボルンにいる時に電話をした時に「どのぐらいウチのホステルに滞在する予定?」と聞かれており、その時「とりあえず1週間はいるつもりですけど、仕事が見つかりそうかどうかとか、その時その時の状況を見て決めようと思います。場合によっては3~4か月いるかもしれません」と答えていたし、1週間で出て行っても別に問題なかろう。

 

情報検索でヒットしたのは、アデレードヒルズにあるワーキングホステル。ここのレントは今滞在しているレンマークのよりも少し高く、仕事の順番待ちリストがあって、新しく来た人は優先的に仕事をもらえないので最低でも1週間は待つことになるようだが、ネット環境が整っているならそれで一旦仕事を始められれば自分の思い描いていた環境で毎日を過ごせるのではないか、そう僕は思った。早速僕はそのホステルに問い合わせのメールを送ってみた。このメールの返事次第では、次の金曜日にはアデレードヒルズに直行するのもありかもしれない。ところが、この後事態は思わぬ展開を迎えるのだった。