12月のある日、大家さんのスターリンから連絡が入った。「もうしばらくするとこの部屋の入居を考えてる子がルームインスペクションに来るんだけど、ショーン時間空いてる?よかったらその子に軽く部屋を案内してもらってもいいかな?」と。

 

僕の住んでいるアパートの部屋は4人部屋で、リビングとバスルームが共用で、2人用のベッドルームが2つだ。1つは男子部屋でもう1つは女子部屋。最近女子のベッドルームに1人分空きができていたので、スターリンが「空き部屋あります」の広告を出していたのだ。やってきたのは、キャサリンというイングリッシュネームのベトナム人の女の子。当時ルームメイトだった日本人の女の子のMさんもいたので、彼女がベッドルームも含めて一通り部屋を案内した。キャサリンは部屋を気に入った様子で、後で大家に連絡すると言って部屋を後にした。

 

そこから30分ぐらいすると、またドアをノックする音が聞こえた。どうやらこの日はこの部屋にルームインスペクションの予約が2件入っていたらしく、部屋を探している女の子がもう1人、男の子の友達と一緒に訪ねてきたのだ。お互いに軽く自己紹介していた時に彼女がスウェーデン出身だという事がわかると、思わず僕はOj, är du från Sverige?(へぇ、スウェーデン出身なんですか?)と話しかけ、更に僕はスウェーデンに興味があるからスウェーデン語を勉強してるんです、もうかれこれ1年半ぐらいは独学でスウェーデン語を勉強してます、スウェーデン人との友達ともスウェーデン語でスカイプしてます、とスウェーデン語であれこれ付け加えた。

 

オーストラリアに住んでいる日本人がスウェーデン語を喋ったという事に相当ビックリしたらしく、彼女は喜んでいた。日本人のルームメイトのMさんが僕に気を利かせて、女の子のベッドルーム以外は僕がスウェーデン語で案内してあげたらと言ってくれたので、冷蔵庫やバスルーム、洗濯機を使う時の注意点(洗濯機の排水ホースは隣のバスルームのバスタブの所と繋がってるから洗濯機とシャワーは同時に使わない方がいいよとか)についてをスウェーデン語で一通り説明した。

 

部屋の説明を一通り終えた後も、僕は彼女からだけでなく一緒にいたスウェーデン人の男の子からも「何でスウェーデンに興味があるの?」「どうやってスウェーデン語勉強してきたの?」等といろいろ聞かれた。

 

すっかりこの部屋が気に入った様子のスウェーデン人の女の子は、自分より前に部屋を見にきた子がいるという事を聞くと、「じゃあ早く大家さんに連絡しないと先を越されちゃうよね!すぐに連絡してみるわ!」と言って部屋を後にした。そして実際に部屋を確保できたのはどちらなのかというと、先に部屋を見に来たベトナム人の女の子、キャサリンの方だった。どうやら彼女もルームインスペクション後、即大家に連絡を入れていたらしく、スウェーデンの子は間に合わなかったようだ。

 

スウェーデンのその子が入居できなかったのは残念だが、キャサリンも人柄がよかったのでこれはこれでいいかなと思った。ただ、30分やそこらの差で部屋が取れるか取れないかが決まるというのを実際に目の当りにして、いい物件を勝ち取る競争は熾烈なのだな~と実感したのだった。