月曜日。新しい部屋に引越しをして通勤距離が短くなったので、オフィスへ行くのが少し楽になった。今日もいつもと同じ様に中くらいのザンギエフが主体の午前研修が始まったのだが、研修の途中で僕だけマットに別の部屋に呼び出された。そしてマットはこう言った。「ショーン、申し訳ないんだけど、君はこれ以上この会社で働く事はできない。売り上げが少ないからね。君は他のネイティブのみんなと違って言葉の壁もあるし、それでも毎日一生懸命努力しているのは僕も十分わかっているんだけど、残念ながら会社のルールに従って、ノルマを達成していない社員は切り落とさなければならないんだ」

以前トニーの研修に関する記事でも書いたが、この会社の発展途上国支援のセールスチームのノルマは入社1週目が0~1件、2週目が1~2件、3週目が2~3件となっている。僕の場合は、1週目が0件、2週目が1件だったため、2週目まではノルマ違反にならずに残留できたが、3週目は5日間続けて0件であったため、この部分が引っかかってしまう。マネージャーたちは平の社員よりも1時間半~2時間ぐらい前に出勤し、毎朝ミーティングを行うのだが、恐らくこの日のミーティングで先週の僕の成績を見て僕を解雇するという決定に至ったのだろう。

クビを告げられて家に戻り、しばらく何もせずにまったりしていた。もう昼過ぎだ。今頃他のメンバーはいつものようにターフ中のドアをノックして歩き回っているんだろうな。するとオリビアから電話がかかってきた。彼女はまだ僕がクビになったことを知らなかったらしく、仕事内容に関する話をしだした。

僕:「あのね、実は俺既にクビになってるから、今ターフ内じゃなくて家にいるんだよ」

オリビア:「えーーっ??そんな~。もう一緒に働けないの?ホント寂しい」

そして翌日の火曜日。オリビアから僕の携帯にテキストメッセージが届いた。なんとこの日で会社を辞めてしまったらしいのだ。彼女曰く、本当はマネージャーになど昇格したくなかったのに半ば強引に決められて入社3週目からマネージャーとして働くことになり、労働時間が長くなって家と会社をただ往復するだけの毎日に疲れてしまい、やってられなくなり辞めたのだという。うーむ、もったいないなぁ。確かに労働時間は長いけど、基本給だけでも週1,000ドルと給与面では恵まれているんだから、せめてもう数週間だけでも我慢してある程度貯金でもしてから辞めればよかったのに~と個人的には思った。ちなみにその翌日の水曜日には、デックスまでも辞めてしまったらしい。

無職のままではいかん、早く次の仕事を見つけなければということで、この週の火曜日から初めて街に出てレジュメ(履歴書)配りをする事になった。(※オーストラリアのカジュアルジョブではアポなしでいきなり店に突撃して、履歴書を手渡しして回るのはけっこう普通である※)今日主に回ったのはCBD内の店。時間はたくさんあったはずなのに、この日は7~8枚ぐらいしか配れなかった。

ちなみに僕がオーストラリアのワーホリに関して度々参考にしているサイト、APLaCのレジュメ配りでの仕事探しにおけるアドバイスでは「数打て」「何枚ぐらい配ればいいか?それは仕事が見つかるまで」という事になっている。つまり当たりは最初の1件で来るかもしれないし、100件配っても来ないかもしれない。とにかくたくさんレジュメを用意し、何枚でも配る覚悟をしておくべきなのだと。さらにここでは「絨毯爆撃」という言葉も出てきていた。「このお店は何となく嫌かも」とか選り好みするのではなく、そのエリアの店は絨毯爆撃の如く無差別に全部当たれという事なのだ。

ところが、この日の僕はこの「絨毯爆撃」ができずにいた。「数の勝負」である訪問販売の世界に3週間も身を置いておきながら、何故かお店にレジュメを持って突撃するのは雰囲気が違うように感じられて踏ん切りがつかず、1件の店にレジュメを渡すのに相当時間がかかってしまっていたからだ。しかも「あ、この店なんか嫌かも」と「絨毯爆撃」においてはタブーな考えが何度も頭をよぎってしまい、そもそもレジュメを配らずにスルーしてしまったお店もたくさんあった。

なんというチキンなのだ、俺は。こんなので次の仕事を見つけられるのだろうか(涙目)